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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「マルハチ会結成」
24/41

イエス≠ノー

 私のような冴えない女に雑誌の顔になって欲しいなんて言われる事は光栄の至りだ。

 連合艦隊でいうところの「長門」になってくれと言われているのと同じ事だ。

 自分としても断わる理由なんてない事は解っている。しかし、不用意に自分の日常をさらす危険性のある事に手を出すのはどうだろうか?

 ちなみにブログの方は一日のスケジュールをなぞってる程度で自分のプライベートは一切語っていない。

 日記というよりかは日報に近い感覚で自分はつけている。

 しかし、J&Jの連載となればそうはいかない。

 私がモデルという仕事を離れたところで何をしているか読者の興味はそこに注がれる事になるだろう。

 ブログのように日報を付けるような内容では連載をする意味は無いのだ。

 Ritaというモデルが普段、何を食べ、どんな所に住んでいて、何に興味を持って生きているのかをさらして初めて意味を持つ連載なのだ。そこまでしないと久我山編集長の求める親近感は出てこないだろう。

 まぁ勿論、必要以上にプライバシーを晒す事も無いのだが、私の私生活の殆どが軍事マニア的なものしかないので偽った内容をでっち挙げても化けの皮はすぐ剥がれるだろう。

「リタちゃんが忙しいのは解ってるつもり。こっちもそれ相応のサポートは約束するわ」

 久我山編集長はグイグイ押してくる。

 私としては一晩じっくり考えたい所だが、そんな事をすれば痛くもない腹を探られそうで恐い。

 今、決断を迫られてるのは言うまでもない。

 まるでシンガポール攻略の際に降伏を迫られたイギリス軍のパーシヴァル中将のような気持ちだ。

 久我山編集長はさしずめ山下中将か?

「YESかNOか!」

 そう言われているような気がしてならない。

 勿論、私に選択の予知はない。

 その時私の脳裏にある考えがよぎった。

「いっその事ここで思いの丈をブチまけてみようか…」

 ある意味これはまたと無い機会かも知れない。

 ここで私という人間を知ってもらう。

 机の下で握っている拳に力が入る。マネージャーさんと久我山編集長の表情をチラリと伺うが二人共、悪い返事が来るとは思いもよらない感じだ。

 意を決して重い口を私は開く。

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