依頼≠嬉しい
次の日、私は仕事の為、文京区音羽にある出版社に赴いた。
出版社の前にタクシーを停めて降りるとマネージャーさんがサッとよって来て私を館内へと促した。
そして二人して慣れた感じでJ&J編集部へと足を運んだ。
編集部の雰囲気は閑散としていた。
それもそのはず雑誌の編集は終わったばかりで印刷工場への入稿は済ませてある。あとは刷り上がって店頭に並ぶのを待つだけだ。
デスクに座っていた久我山編集長が私達の存在に気付くと例の笑顔で出迎えてくれた。
私とマネージャーさんは挨拶をすると、久我山編集長は編集部の隅にある応接セットへと私達を案内しすると私達に座るように促した。
三人して席に着くとコーヒーの香りが鼻をくすぐった。手の空いた編集の方がコーヒーを持って来てくれたのだ。三人の前にカップに入ったコーヒーが並ぶ。
久我山編集長はコーヒーに砂糖を多めに入れると一口啜って、落ち着いた口調で語り始めた。
「ねぇ、リタちゃん。ウチで連載始めない?」
突然の申し出に私は少し困った表情のままマネージャーさんの方を見た。
マネージャーさんは笑顔で諭すように私に優しく話した。
「悪い話しじゃないと思うよ」
どうやらこの件はあらかじめ聞いていたような感じで、最終的な判断を私の意思で決める所まで話しを煮詰めてから切り出した様子だ。
再び目線を久我山編集長に戻すと彼女も笑顔でこちらを見ている。
そして私の困惑した表情を読み取ると他社のファッション雑誌を取り出し付箋のあるページを開いて見せてくれた。
そこにはファッションモデル自身がデジカメで撮ったの日常生活の1ページが日記のように綴られいた。
「こんな感じでいいんだけどどうかな?」
久我山編集長は再び落ち着いた口調で私に話しかける。
中々、ウンと言わない私にマネージャーさんの方が痺れを切らして来た様子で、私の顔を心配そうに覗き込みながら
「どうしたの?いつものキミらしくないけど?」
そう話し掛けてきた。
私だって勿論この仕事を受けたいが、私の日常はガッツリ軍事マニアだ。普通のモデルさんのように華やかな生活を送っていない。
そうやって煮え切らずうつむいていると久我山編集長が優しい口調で話し始めた。
「確かにいきなり文章の仕事をふられたらビックリするよね。でもね難しく考える事は無いわ。リタちゃんは写真と一言、コメントを添えるだけでいいの。後はこちらで何とかするから。今しているリタちゃんのブログよりかは楽だと思うわ。それに…」
久我山編集長が話すのを一旦やめる。
釣られように私も
「それに?」
と、相槌を打つ。
「リタちゃんには本格的にJ&Jの顔になって欲しいの。それにはもっと読者の人達にリタちゃんの色んな一面をみてもらう必要があると思うわ。やっぱりモデルのお仕事だけだと、親しみは湧かないし、雑誌の顔になるには親近感はどうしても必要になるの」
と、私の目をじっと見て力説する久我山編集長。




