The later story15
「どうしてですか!?」
「先刻、言ってたでしょ?」
「「和風さんに聞いた」って」
「和風さんが言ってたんですか!?」
「違うわ」
「あくまで私の予想」
「でも、確実だと思うわ」
「だから、思い残しのない様に先刻も三文芝居をしたのよ」
「…どうして「確実」だと?」
「和風さんから聞いたのは、彼の異常状態の原因よ」
「1つの体に2つの魂…、ね」
「…はい」
「例えで説明するわ」
「例えば1つの箱とボ-ルが有るとしましょう」
「その箱には1つしかボ-ルが入らない」
「でも2つ入れたら?」
「1つは入らなくなって…、落ちるわ」
「でも、それじゃ…」
「そう、すぐに死んでたはずよ」
「1つの体に2つの魂は入らない」
「1つの箱に2つのボ-ルが入らない様に」
「でも…」
「今は生きてるわ」
「何故か?簡単な話よ」
1つのコップと2つの容器を持ち出すAW
「このコップ、何も入ってないでしょ?」
「はい…」
「そこに…」
トクトクトク…
「この黒い水を入れるわ」
「?」
「そして…、この紅い水を入れる」
トクトクトク…
「どう?」
コップから黒い水と紅い水が溢れ落ちる
「溢れちゃいましたね…」
「そうよ」
「2つ分は入れないから、双方の量が減った」
「つまり、彼の体の中の魂は混ざり合った状態」
「ギリギリのバランスで成り立ってるわ」
「それなら…」
「でも、ね」
「その魂は…、この水は別々の存在なの」
「いつかは別れるわ」
「こんな風に」
コップの中の水は2つの色に別れている
「この状態を維持してしまったら…、拒絶反応が起こるわ」
「それこそ死ぬでしょうね」
「どうすれば…」
「コレは、あくまで仮説よ」
「でも…、私だったら」
バシャッ…
「この黒い水を捨てて、紅い水を残すわ」
「そうすれば…、水は一色になる」
「そうでしょう?」
「…その黒い水は?」
「黒い水はどうなるんですか?」
「解ってるでしょ?」
「…いえ、解ってるからこそ解りたくないのね」
「…どうして」
「天鹿和さんは…!!」
「悲しい人生よね」
「利用され続けて…、最後は惨めな死」
「私なら耐えられないわ」
「…」
「戻りましょう」
「彼の所へ」
「そろそろ整理が着いたでしょう」
「…はい」
ガチャッ
「天鹿和さん…」
「…何だよ」
「…どうするんですか?」
「…謝りゃ-、良いんだろうが」
「畜生めが…」
「素直じゃないわね」
「うるせぇ…」
「…どうした?」
「え?」
「秋雨、何か有ったのか?」
「妙にテンション低いじゃねぇか」
「いえ…、何でも」
「AWに搾り取られたか?」
「はい!?」
「ハッハッハ!ジョ-クだよ、ジョ-ク」
「天鹿和さんが言うとジョ-クに聞こえませんよ…」
「…話は終わりよ」
「さっさと木って子に謝りに行きましょ」
「チッ…」
旅館の入り口
「…で?」
「荷物を持ってる俺と秋雨だ」
「そこは解る」
「だが…」
「気をつけてね-!AW!!」
「手、出したら殺すわよ-!!」
「いってらっしゃ-い!!」
「…何故、AWまで荷物を持っている?」
「気になるからに決まってるでしょ」
「…着いてくんな」
「えぇ-、どうして?」
「うぜぇから」
「良いじゃない~」
「ねぇ、秋雨君?」
「え?」
「聞いてた?」
「え?あ…」
「…良いんじゃないですか?」
「よく聞いてねぇのに同意してんじゃねぇ---!!」
「?」
「コイツ…ッ!!」
「まぁ、そう言う事ね」
「行きましょ」
「糞共が…」
東の森
「やっぱり大きいわね」
「こんな所で生活できるの?」
「テメェには関係ねぇ」
「酷いわね-」
「秋雨君は?この子の住み処に行った事が有るんでしょ?」
「ええ、一応」
「どうだった?」
「結構、整備されてましたよ」
「木の根の中なんですけど、3階建てで1階は大きな居間」
「2階は木の部屋で3階は物置って感じでしたね」
「へぇ~」
「あれ?天鹿和君の部屋は?」
「…そう言えば」
「寝る時とか着替えの時とかは?」
「共同で使ってんだよ」
「え?」
「嘘…」
「あ?何か変な事、言ったか?」
「男女が共同の部屋…」
「寝る時は!?」
「ベットは1つしかねぇよ」
「一緒に…!?」
「寝てるけど?」
「着替えは!?」
「普段、居間は動物が居座ってるからな」
「部屋で着替えてる」
「木が着替えてる時は!?」
「部屋に居るけど?」
「…見えちゃうでしょ?」
「だから?」
「…」
「…秋雨君、ちょっと」
「はい…」
(どうなってんの!?)
ヒソヒソ
(僕にも解りませんよ…)
(天鹿和さんはアレな趣味のはずなんですけど…)
ヒソヒソ
(もしかして、そんなに木に魅力がないの!?)
ヒソヒソ
(そんな事は…)
ヒソヒソ
(まさか…)
「…ちょっと」
「何だよ」
「小さい女の子は好き?」
「刃影の野郎と一緒にすんじゃねぇよ」
「「刃影」?」
「天鹿和さんの元同級生です」
「あ-、その人はアレなのね」
「で、アナタは…」
「んな趣味ねぇよ」
「そう!そうなの!!」
(天鹿和君ってロリコンじゃないのね)
ヒソヒソ
(…たぶん)
「?」
「まぁ、それなら心配ないわ」
「可愛いの?木って子は」
「…可愛いんじゃねぇか」
「告白されたら?」
「断る義理はねぇよ」
「何だぁ~…♪」
「何でご機嫌なんだよ…」
(アレね?恥ずかしくて「着替えは見てないけどク-ルを気取ってる」状態なのね!)
ヒソヒソ
(…恋愛ドラマとか好きですか?AWさん)
ヒソヒソ
(大好きだけど?)
ヒソヒソ
(ですよね…)
読んでいただきありがとうございました




