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秋雨 異世界旅行記6

南面利の家


「…」


「どうしたの?お茶、飲まないの?」


「毒を入れてる」


「入れてないよ-!失礼だね」

「昨日のの敵は今日の友でしょ?」


「…アンタはハジャに着いた」

「そして…、金田に殺された」


「うん、アレはヤバかったね」

「ド頭を撃ち抜くんだよ?金田」

「容赦ないよね-」


「…頭を撃ち抜かれて死なない人間が何処に居る?」

「アンタは死んだ!あの時!!西の城で!!」


「…死んでないって」

「現に目の前に居るでしょ?」


「それでも…!!」


「何を頑なに否定してるのかな?モミジ」


「モミジ…、確かに南面利さんは生きてる」

「幽霊じゃ有るまいし…」


「でも!あの時は確かに…!!」


「死んでないよ?俺」


「まさか…!ハジャに生き返らされて…!!」


「それも無い」

「ハジャに着いてたのは一時的な事だったし」


「「一時的」…!?」


「力が…、力が欲しかった」

「ハジャは俺の潜在能力以上の物を引き出してくれた」

「だけど…、その代わりにハジャの命令に従わなければならなかった」


「それで城を襲ったのか!?」

「フザけるな!!」


「…許しは乞わないよ」


「…ッ!!」


バタァン!!


別の部屋に入っていくモミジ


「…ゴメンね、騒がしくて」


「南面利さんは…、力を求めてハジャに着いたんですか?」


「ああ、そうだよ」

「いや、それだけじゃない」


「え?」


「俺とハジャは…、俺が幼い頃に会ってるんだ」

「髭の叔父さんでね」

「その時は普通だったよ」

「何処にでも居る…、普通の…」

「だけど、それから数百年後に会った時には…、豹変してた」


「「豹変」?」


「覇気…、じゃない」

「憎悪?って言うのかな」

「それに包まれてた…」


「「憎悪」…」


「あの人は…、大戦で何か有ったのかな?」

「大戦を挟んで変わった…」


ため息をつく南面利


「で、俺はハジャに言われたんだ」

「「力が欲しくないか」…と」

「俺は要らなかった」

「力なんて無くても暮らせていけるし、幸せになれる」

「でも…、その時の選択が間違ってた」

「その後、俺とモミジで王宮にいたらモミジが攫われてね」

「俺は何も出来なかった…」

「モミジが目の前で泣いているのに…、目の前で攫われていくのに…」

「何も…、出来なかったんだ」


「南面利さん…」


「…まぁ、その後でモミジは簡単に見つかったんだ」

「俺は自分の無力さを悔いていた」

「そんな時…、またハジャが来た」

「「力が欲しくないか」ってね」

「全く同じ質問だったけど…、俺には別物に聞こえたよ」

「俺は即答したね、「当たり前だ」って」

「後々、解ったんだけど、あのモミジの事件はハジャが仕組んだらしい」

「俺には、どうでも良かったけど」


「でも…、もしモミジに何か有ったら…!!」


「そしたら…」


ゾクッ…


秋雨の背筋に寒気が走る


「俺がハジャを殺すね」


「…ッ!!」


「…まぁ、何事も無かったから良いけど」


「南面利さん!!」


「ん?何?」


「力を得たのは…、モミジの為ですか?」

「ハジャに着いたのは…、モミジの為ですか?」


「…それをモミジの前で言わないでね」

「怒るから」


苦笑する南面利


「俺はね…、もう見たくないんだ」

「彼女が泣く所を…」


「…そうですね」


「君、名前は?」


「秋雨です」

「秋雨 紅葉」


「…良い名前だね」


「ありがとうございます」


「…銃は使う?」


「昔は使ってたんですけど…」

「今は…、あまり…」


「…そう」

「金田は?知ってるかな?」


「はい、知ってますよ」


「彼は強いからね」

「怒らせない方が良い」


「アハハ…、確かに」


「しかも守銭奴…」

「一円の音でさえ、即座に反応するからね」


「確かにお金に対しては貪欲ですよね…」


「…でも、俺は彼に殺された」


「え?」

「「殺された」…?」

「生きてるんじゃ…」


「…このベレ-ム谷の深さは、この世界で一番だ」

「だから…、魂が籠もる」


「どういう…?」


「深すぎて死者の魂が天国にも地獄にも行けない」

「この深すぎる谷から出られないから」


「それじゃぁ…!!」


「どうも、幽霊です」


「…ッ!!」

「じょ、冗談…」


「じゃ、ないよ」

「本当に死んでる」


「でも…!先刻は「生きてる」って…!!」


「言ったでしょ?モミジが泣く所を見たくない、ってね」


「嘘…!?」


「うん」


「…ちょっと待ってください」

「頭が混乱して…」


「深く考えなくて良いよ」

「君は「幽霊に会った」程度で考えればいい」


「でも…、それじゃモミジに説明の仕様が…」


「だからぁ-、しなくて良いんだって」

「いや、しない方が良い」


「それじゃ…」


「モミジの記憶は消すよ」

「コレで、ね」


「能力記石…!!」


「この石はベレ-ム谷が原産でね」

「手に入れるのに苦労はしない」


「でも…!能力は何処から…!?」


「…コレも言っただろ?」

「「魂が籠もる」…、ってね」


「じゃぁ…!死んだ人の能力…!!」


「ご名答」

「あまり使いたくはないんだけどね…」


「…でも、記憶を消すべきでは無いんじゃ」


「彼女に記憶を残せ、と?」

「苦しみを残すだけだ」

「君の甘さで彼女を苦しめるな」


「…はい」


「俺は、この谷で暮らす」

「死んでるけど、死者を供養しなくちゃならない」


「…最後に」


「ん?」


「モミジに会ってあげてください」


「…それぐらいのワガママは聞くよ」

「じゃ」


バタン


「…南面利さんも、成仏できないのか」

「この谷から…」



隣の部屋


「…モミジ」


「来るな!!」


暗い部屋の隅に蹲っているモミジ


「来るんじゃない…」


「…先刻の話、聞いたんだろ?」


「…ッ」


「だったら…、説明の手間が省けるな」


「…確かに南面利を殺したのは金田だ!!」

「でも…!この谷に…!お前を捨てたのは…!!」


「…それは俺が頼んだ事だろ」


「お前は…!知っていたのか!?この谷で死ねば、こうなる事を…!!」


「…ああ」


「それを知っていて!私に頼んだのか!?」


「…ああ」


「私を…!悲しませない為に…!!」


「…ああ」


「どうし…て…!?」


「…言葉で表せ、と?」

「無茶を言う所は変わってないね」


「私は…、お前を忘れようと努力した…!!」

「だけど…!忘れられない…!!」

「誰かを好きになっても!必ず頭の何処かに南面利が居た…!!」

「だから…!!」


「だからこそ、忘れるんだ」


フゥン…


「え?」


「この石を見つめて…」


「な…に…?」


「そうだ、ゆっくり」


「うぅ…」


バタン


倒れるモミジ


「…お前に気持ちを伝えられて嬉しかったよ、俺は」

「だからこそ…、幸せになって欲しいんだ」


バタン…


「…南面利さん」


「終わったよ」

「君はモミジを連れて、この谷を出るんだ」


「…はい」


「川に沿って行けば、小さな村がある」

「そこしか出口は無いからね」


「解りました」


「ああ、鈴も付けていくんだよ」

「デバウラン避けになる」


ジャラン…


「どうも」

(…熊?)


「…それじゃ」


「はい、さようなら」


「気をつけてね」


「…はい」




ベレ-ム谷、出口


「ふぅ…、やっと着いた」


「秋雨!モミジ!!」


「シャ-クさん!!」


「無事か!?」


「はい…、どうにか」


「あの距離で助かるとは…、凄いな」


「奇跡ですよ」


「…だな」

「モミジは?」


「…寝てます」


「…そうか」

「向こうで汽車を待たせてある」


「どうも」


「で?ずっと川を流れてきたのか?」


「え?」


「この谷で生きて帰るなど…、有り得ないからな」

「ずっと川を流れて来たとしか…」


「いえ、途中で助けて貰って…」


「誰に?」


「…!」

「何でも…」


「…?」

「まぁ、良い」

「そろそろ北の国王殿が訪問なさるらしい」

「急いで城に戻るぞ」


「は、はい!」

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