秋雨 異世界旅行記4
車掌室
ガラガラ…
完全に大破している車掌室
「ふぅ…」
車掌と男を掴み、どうにか列車にぶら下がっている状態の秋雨
その下は地面も見えない崖
「…何て事をするんですか」
「車掌室が滅茶苦茶ですよ」
「離せ!!」
「えぇ!?」
ガタン!ガタン!!
暴れ出す男
「殺せ!今すぐ!俺を!!」
「ど、どうしてですか!?」
「早くしないと!あの人の実験台に…!!」
「ならないさ」
パァン!!
「!!」
ブラ-ン…
無様に垂れ下がる男
「ひぃ…!!」
「落ち着いてください!車掌さん!!」
「このまま…、君の頭を打ち抜くのも良いかもしれないな」
「…アナタですね」
「先刻の人と、この人を撃ったのは」
「文句が有るか?」
「俺の部下だ」
「俺がどの様にしようとも、関係はない」
「アナタの部下でも、アナタの駒じゃない」
「そうでしょう?」
「…手の上に羽を千切られたハエが居る」
「?」
「そのハエをね…、握り潰すんだ」
「プチッ…、と」
ガチャッ
男の銃口が秋雨に頭に向けられる
「今、その握りつぶす瞬間のようだよ」
「ッ…!!」
「水斬脚光」
ガラララ!!
「ッ----!」
男の銃が蹴り飛ばされる
「何をしている?秋雨」
「シャ-クさん!!」
「チィ…」
「貴様…、部下を易々と殺すのか」
「ハエを握りつぶす貴様がハエと同じ立ち位置に居るのは…」
(マズイ…!!)
「どんな気分だ?」
ガァアアアン!!
「貴様が立てなくなる程…、とは言わん」
「貴様の脳に、体に、血に、肉に、心臓に…」
「弱者の恐怖を刻み込んでやろう…!!」
「クソッ…!!」
バッ!!
列車から飛び降りる男
「逃げるか」
「取り違えるな!撤退だ!!」
「貴様の顔!忘れはせんぞ!!」
「名は?」
「バムだ!!」
ガタン、ガタン…
「…逃げたか」
「秋雨、立てるか?」
秋雨と車掌を引き上げるシャ-ク
「ありがとうございます…」
「お前、殺ろうと思えば殺れただろう?あの男…、バムを」
「いえ…、無駄な殺生はしたくなかったので…」
「…トンだ甘ちゃんだな」
ため息をつくシャ-ク
「その甘さが後悔を招くぞ」
「僕は後悔しません」
「後悔しないように生きます」
「…そういう覚悟は嫌いじゃない」
「秋雨!!」
「モミジ!」
走ってくるモミジ
「良かった…、無事か」
「うん、どうにか」
「シャ-クさんのおかげで…」
ギャギャギャギャ!!!
「!!」
激しい摩擦音を上げ、列車が急に速度を落とす
「何だ!?」
「解りません!!」
「ただ、急に速度が…」
ガタァアアアン!!
激しく振動する列車
「え?」
ヒュ-…
「モミジ!!」
列車から放り出されるモミジ
モミジの下には崖
「あ…」
ガッ!!
「離さないで…!!」
「秋雨!!」
モミジの腕を掴む秋雨
「秋雨!このままじゃ…!!」
ガキッ…
秋雨の足場が砕ける
「秋雨!モミジ!!」
「兄さん…!!」
スルッ…
「しまっ…!!」
秋雨の腕がシャ-クの腕から擦り落ちる
「モミジ!!」
ブンッ!!
「え?」
モミジを放り投げる秋雨
「秋雨ッ…!?」
「GLを頼んだ!!」
「秋雨----!!」
「掴まれ!モミジ!!」
「ッ!!」
腕を伸ばすシャ-ク
パァ-…ン
鋭く、小さな銃声が響く
「ッ…!!」
ズルッ…
「モミ…ジィ…!!」
スル…
「兄さん…!!」
シャ-クの腕を一発の銃弾が貫き、その手からの出血でモミジの手を掴み損ねるシャ-ク
ヒュ----…
「モミジィイイイイイイ!!」
「…借りは返した」
「だが、貴様は殺すぞ!シャ-ク…!!」
「バム…!!」
「貴様ァ…!!」
「クックック…!!」
「フハハハハハッハッハ!!」
「ザマァ見やがれ!!」
「フハハッハッハハッハハッハハハ!!」
峡谷にはバムの甲高き笑い声が響き渡っていた
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