第7話『好物が同じ二人』
アヒージョを食べ終えた私は、質問をした。
「大将、そういえばさっきの続きなんですけど」
店主のことを大将と呼んでみた。
みんなそう呼んでるからね。
私に大将と呼ばれたことには何も触れず、大将は言った。
「さっきのってのは、エッちゃんのことですか?」
「そうです」
「あー、あれはね……」
大将が言いにくそうに、和服改め、龍馬さんを見る。
それに気付いた龍馬さんが、大将に言った。
「かまんぜよ。おまんらの遠い未来にゃ興味ないき」
大将は龍馬さんの言葉に頷き、話を続けた。
「エッちゃんはね、戦時中の子なんですよ」
「戦時中?」
「はい。太平……大東亜戦争の時の」
大将は、太平洋戦争と言いかけて、エッちゃんの方をチラッと見てから、大東亜戦争と言い直した。
きっと、戦時中は太平洋戦争とは言っていなかったからエッちゃんに配慮したのだろう。
その配慮が歴史を変えてしまうことを防いでいるのかは知らないけど。
「ああ、やっぱり……」
そう呟いて、私はもう一つのテーブルを拭いているエッちゃんを見た。
エッちゃんが始めにあんな服装をしていたのは、やっぱり太平洋戦争の時代からやって来たからなんだ。
……って、待って!
私、さっきから、このドッキリの内容が本当であることを前提にして思案してないか!?
話を複雑化させて、だんだん信じ込ませようとしているのではないだろうか……。
どうにかして、相手のボロを誘発できないだろうか……。
「エッちゃんは何年生なの?」
「はい、4月から初等科6年になります」
元気にそう答えるエッちゃんに、私は頷く。
オーケー、オーケー。
そんな簡単にはボロを出さないよね。
初等科っていうのは、小学生の戦前の名称だ。
その辺のキャラ設定は基本だよね。
「そっか、その歳で働いてるなんて、偉いね」
私がそう言うと、エッちゃんは「あ、はい」と俯いてしまった。
あれ?
なんか、不味いことでも聞いちゃったのかな?
急に明るさが消えたような……。
そんなエッちゃんを気遣うように、大将が言う。
「エッちゃん、今日の賄いは、エッちゃんの好きなカレーだぜ?」
それを聞いたエッちゃんの表情が戻る。
「カレーですか!?」
目を輝かせる少女に、大将は頷いた。
「今のうちに食べて来なよ」
「はい!」
そんな二人の会話に龍馬さんが割って入る。
「賄いカレーかや!」
エッちゃんと同じように目を輝かせる龍馬さんに、大将は笑った。
「龍馬さんも食べますか?」
「ええがか!?」
大将が頷き、エッちゃんは龍馬さんの手を引っ張った。
「龍馬さん、食べに行こう!」
「おう!」
そう返事してから、龍馬さんは大将に言う。
「大将、ピザとカルパッチョ、また持って帰れるよう包みに詰めちょくれんかえ?」
「了解です」
大将がそう言うと、エッちゃんと龍馬さんは手を繋ぎながら店の奥へと消えていった。
「ほんっと仲良いなあ、あの二人……」
そう呟いてから、きょとんと座る私に大将が言う。
「あの二人、好物がほとんど一緒なんですよ。だからエッちゃんが喜ぶ味付けで作った賄い料理は、龍馬さんも大好きなんで、ああやってよく二人で奥に行って賄い料理を食べるんです」
そう言って大将は、龍馬さんが残したカルパッチョをタッパーに入れていく。
私は、大将にエッちゃんのことを質問した。
「エッちゃんはどうして、あんな歳で働いているんですか?」
カルパッチョをタッパーに詰め終わった大将はタッパーの蓋を閉じ、今度はジッパー付きポリ袋にピザを入れながら、話を続けた。
「俺は別に働く必要はないって言ってるんですけどね。本人がそれじゃあ納得してくれなくて……。俺たちの時代だと、あんな子を働かせるなんて完全にアウトですよね」
「ですね。私、あの子が働いてる姿を見てビックリしました」
「警察に言わないでくださいね」
そう言って大将は苦笑いを浮かべた。




