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【完結】タイムスリップREstaurant  作者: しーなもん
第3章:ブレイクヒストリー
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最終話『悠久の花嫁』

 6月初旬の日曜日、私たちは下京区山王町室町通りにある、結婚式場に訪れていた。

 今日は、結斗さんの結婚式だ。

 私、大将、峰やん、龍馬さん、中岡さんが、それぞれ結斗さんへ祝いの言葉を述べる。


 お父さんはあれから、家に帰ってお兄ちゃんに生存報告をした。

 葬式で喪主まで務めたお兄ちゃんは、それはもうビックリしただろう。


 そして歴史は改変され、私と大将、そして結斗さんの住む未来への扉は閉ざされてしまった。

 とは言っても、私と大将は2026年をやり直すだけで済んでいる。

 結斗さんも、2026年を楽しんで過ごしているようだった。

 デメリットを言えば、私と大将と結斗さんの3人は店の表のドアから店内に入れなくなったことくらいだろうか。

 まあ、裏口から入ればいいので大した問題じゃない。


「まさか、独りになってだいぶ経つのに、再婚で式まで挙げるとはね」


 新郎新婦を見ながら、大将が言う。


「素敵じゃないですか」


 そう言うと、大将は笑った。

 配偶者に先立たれ、年老いたとしても、やっぱり結婚は素敵だと思う。


「歩実さん、受け取ってね」


 そう言って、花嫁が後ろを向いてブーケを投げた。

 宙を舞うブーケが私に向かって飛んでくる。

 そしてブーケは私ではなく、隣にいる大将の手にストンと落ちた。


「あーっ! 私に向かって投げてくれたのにー!」


 文句を言うと、大将は困った顔をして苦笑いを浮かべた。

 龍馬さんが私に言う。


「歩実さんには、結婚はまだまだ早いっちゅうことじゃき」


 便乗して中岡さんが言う。


「ちっと色気が足りんちや」


 ノンデリの志士どもめっ!

 道場潰れてしまえっ!

 二人を睨んでいると、峰やんがフォローを入れる。


「大丈夫ですよ、歩実さんにはファンが沢山いますから」


 私のファン?


「例えば?」


 そう聞き返すと、峰やんは少し考えて言った。


「エッちゃんに、せいさんに、ふじさんに、あと信さんや健太君も」


「それ全部お菓子のファンじゃん!」


 そう突っ込むと、周りのみんなが爆笑した。




 結婚式が終わり、みんなでトワイライトの裏口から店の中へ入る。

 するとカウンター席で電気も点けず、薄暗い中で一人寂しく飲み物を飲む影があった。

 大将が電気を点けると、影が姿を現す。

 私は影に声をかけた。


「あれ、エッちゃん? 今日はお店休みだよ?」


「皆さんを待ってました。戻ってきたなら作戦会議です」


 そう言うエッちゃんに、みんなが首を傾げる。


「作戦会議って?」


 私がそう聞くと、エッちゃんは眉間にシワを寄せた。


「6月21日の作戦会議です!」


なんがあった?」


 龍馬さんがそう聞くと、エッちゃんはカウンターをバンッと叩いた。


「忘れたんですか! 今年は信さんの時代で本能寺の変が起きる年です!」


 ああ、そういやそうだった……。

 でも、ちょっと早くない?

 まだ6月に入ってすぐだけど。


 私たちが互いに顔を見合わせると、エッちゃんは続けた。


 「皆さん、酷いです……」


 そう言って、私たちを睨む。

 大将が頭を掻いて言う。


「そんなに酷いかな?」


 エッちゃんの声が、次第に涙声へ変わっていく。


「子供だからって私だけ除け者にして、みんなで結斗さんの結婚式に行くなんて、あんまりです」


 なるほど、本題はこっちだったか……。

 本能寺の変の作戦会議っていうのは、エッちゃんなりの建前なんだろう。


「エッちゃん、そりゃあな……」


 龍馬さんが言いかけて、やめる。

 言えないのだ。

 エッちゃんが結斗さんを好きなことぐらい、みんな知っている。

 だけどエッちゃんを結斗さんの結婚式に呼ぶわけにはいかない。

 だって、結斗さんの結婚相手は、80年後のエッちゃんなんだから。


「そうだ! エッちゃん、苺パフェ食べる?」


 唐突な私の提案に、エッちゃんは口角を下げた。


「歩実さんまで、子供扱いしないでください」


 私はジト目で聞き返す。


「食べないの?」


 暫く黙って、エッちゃんが呟く。


「……食べます」


「だよね!」


 私が笑顔でそう言うと、大将がカウンター奥から一升瓶を出して言った。


「今日は店の酒全部飲みましょう!」


 待ってましたとばかりに、騒ぐ幕末の人間たち。


「酔い潰れても、私とエッちゃんは知らないですからね」


 そう忠告すると、中岡さんが切なげな表情で言う。


「明治以降の女子おなごは愛想ないのう!」


 エッちゃんが睨む。


「封建時代の女子じょしと比較せんといて!」


 エッちゃんの突っ込みに、私は笑った。


 いつまでも、みんなでこうしていたい。

 この店で、みんなと笑い合っていたい。

 これからも、きっと沢山の不思議な出会いがあるんだろう。

 辛いこともあるかもしれない。

 だけど、きっと乗り越えていける。

 きっと変えていける。


 だってここは

 タイムスリップレストランなんだから──。



 ──おわり──




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