第46話『帰還』
近江屋事件偽装作戦が終了し、私たちはテレポートを使ってトワイライトへ帰還した。
信さんの予想どおり、テレポートをする者が龍馬さんたちに触れていると、龍馬さんたちも一緒にテレポートする仕組みだった。
そして私たち、トワイライトで龍馬さんたちの今後について語ったのだった。
「ワシは商売がしたいの」
龍馬さんがそう言うと、山田が頷く。
「はい、僕も商売がいいと思います」
中岡は首を横に振った。
「ワシには商売は向かんき。侍として仕官できる大名家があればええんじゃがの」
そう言う中岡に、結斗さんが言う。
「中岡さん、残念ですが、これから住む時代に侍はいません」
中岡は驚愕して結斗さんに顔を向けた。
「何じゃちッ!? じゃあ町の治安はどうなっちょるんじゃ!?」
「町には警察という治安を守る職業があります。しかしそれは侍とは別のものです。それに若い頃から専門の知識を学習する必要がありますので、中岡さんの歳で警察になることはできません」
「じゃあワシは、未来に行って何をやればええんじゃ……」
そう言って俯く中岡。
「大将もおらんし、ワシはそろそろ帰るぞ」
信さんはそう言って席を立ち、俯く中岡に言った。
「慎太郎とか言ったか。うぬが望むなら、ワシの家来にしてやろう。ワシの時代で侍をやればよい」
顔を上げる中岡。
「よろしいんですか?」
「構わぬ。じゃがしかし、うぬがワシの時代に来ても、活躍することは許さぬ。歴史が変わってしまうからな。であるから、今一度考えてから結論を出せ」
信さんにそう言われ、また俯く中岡。
「ではまたな」
そう言って店のドアを開け、自分の時代へ戻る信さん。
「あなたたち三人には、歩実さんの時代に至るまでの歴史を話さねばなりませんな。それを聞いた上で、実際に歩実さんの時代を見て回り、それから何をしたいか判断するべきです」
結斗さんはそう言って、明治維新から今日に至るまでの歴史を龍馬さんたちに話した。
それは龍馬さんたちにとって、自分たちが関わってきた活動がどうなったのか結果を聞くようなものだ。
三人とも、熱心に結斗さんの話を聞いた。
戦争の結果や経済の発展に一喜一憂し、まるで子供のように目を輝かせながら話し合う三人は、現代人が忘れた情熱を持っているような気がした。
「なるほどのう、ほんでこん国はアメリカと戦争して、負けたっちゅうことか。エッちゃんはそん頃の時代の子かや?」
龍馬さんにそう聞かれ、頷くエッちゃん。
「はい、戦争はもう終わりましたけど」
そう答えたエッちゃんの隣で、涙を流す中岡と山田。
「何でおまんら泣いちょるんじゃ?」
龍馬さんがそう聞くと、中岡が答える。
「アメリカやイギリスの列強国と戦争に突き進むなんて、無謀すぎじゃ。富国強兵を説いたワシのせいじゃ……」
責任を感じて泣いてるの?
私は驚いて中岡を見た。
「中岡、それはおまん、自意識過剰ぜよ」
そう一蹴する龍馬さん。
私もそう思う。
「んで、峰やんは何で泣いとるんじゃ?」
「僕は、もらい泣きです」
そう言って山田は涙を袖で拭いた。
柔和で温厚そうな性格の人だ。
「峰やんは優しいの」
そう言って笑う龍馬さん。
その時、急に店のドアが開いた。
外から大将が入ってくる。
大将は左腕にギブスを巻いていた。
「皆さん、作戦は上手くいったみたいですね」
そう言った大将に、私の体は自然と動いた。
「大将! 無事だったかや!」
そう言って大将に駆け寄ろうとする龍馬さん。
だけど私は、その龍馬さんよりも早く大将に近付いた。
そして、無意識の内に大将を抱きしめていた。
ずっと、大将の状態が気が気でなかった。
このギブスは、私のせいでできた怪我だ。
あの時大将が庇ってくれなかったら、私は死んでいた。
「大将ッ!」
大声で叫び、抱き付く私の頭にそっと手を置く大将。
「歩実さん、ただいま」
その言葉を聞いて、私は人目も憚らずワンワン泣いたのだった。




