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【完結】タイムスリップREstaurant  作者: しーなもん
第3章:ブレイクヒストリー
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第44話『襲撃』

 結斗さんの話を聞いて、中岡慎太郎と山田藤吉は、いつの間にか正座になっていた。

 ドローンと空気圧グローブ、そして三人にそっくりな人形を見せることで、私たちの存在を信じてくれたようだ。

 そして信さんに敬意を払い、中岡の態度はみるみる大人しくなっていった。


「──と、これが私たちが考えた、近江屋事件偽装作戦です」


 結斗さんは、私たちがここへ来た理由である近江屋事件偽装作戦を龍馬さんたち三人に伝えた。

 顔を見合わせる三人。

 しばらくして、中岡が言った。


「ワシは、他の時代で生きるなら、ここで死んでも構わんっち思うちょる」


 そう言う中岡に、龍馬さんは怒鳴った。


「中岡! おまん何言いよるが!」


 山田も中岡に言う。


「そうですよ、中岡さん。死ぬと分かっているのにここにいるなんて、そんなの犬死にじゃないですか」


 中岡は目を閉じ、少し間を空けてゆっくりと目を開けた。


「龍馬と峰やんは、他の時代に行ったらええ。ワシは、こん時代を良くする為に今まで働いてきたんじゃ。土佐勤王党として、命運を全うしたい」


「土佐勤って、まだおまんはそがあことうちょるんか!」


 怒鳴る龍馬さん。

 私はトワイライトで働くようになって、歴史を色々と調べることが多くなった。

 勿論、龍馬さんのことも多少なりに調べたつもりだ。


 土佐勤王党とは、かつて龍馬さんも所属していた土佐の下級武士を中心とした尊皇攘夷そんのうじょうい運動のグループだ。

 龍馬さんは幼なじみである党首の武市瑞山たけちずいざんと考えの違いから仲違いをして脱退。その後土佐藩内の尊皇攘夷運動弾圧によって武市瑞山は処刑され、土佐勤王党は崩壊した。

 そして今では、その土佐勤王党を弾圧した人たちと龍馬さんたちは手を組んでいた。

 龍馬さんからしたら、そんな過去のグループに敬意を込めてこだわる中岡に怒りが湧くのも無理はない。


「土佐勤王党はワシの全てじゃ。武市たけち先生が夢見た国が見とうて、これまでやってきたんじゃ。それが見れんなら、ワシに生きる価値はない」


 そう言って頑なに動こうとしない中岡に、龍馬さんは拳を上げた。

 私は咄嗟に龍馬さんの腕を掴み、拳を止めた。


「歩実さん!?」


 驚いて私を見る龍馬さん。

 私自身、こんな行動をするなんて思ってもみなかった。

 だけど、中岡の言うことが本心なら、ここで龍馬さんたちが喧嘩するのは、どう考えてもバカらしい。

 私は中岡に顔を向けて言った。


「中岡さん、あなたは土佐勤王党が夢見た国が見たくて活動してたんですよね? だったら、それこそ私たちと一緒に行くべきです。だって、私たちの時代は、土佐勤王党が夢見た先にあるんですよ!」


 私の言葉にきょとんとする中岡と龍馬さん。

 それを見て、山田が笑った。


「アハハ、中岡さん、こりゃ一本取られましたね!」


 龍馬さんも笑う。


「ワハハ、そうじゃ、歩実さんの言うとおりじゃ。中岡、おんしの負けじゃ!」


 笑いの中、静かに中岡が言う。


「まっこと、勤王党が……いや、ワシらが夢見た国がそこにあるんか?」


 結斗さんが答える。


「あなた方が夢見たより、さらに良い国になっていますよ」


 中岡は目を瞑り、呟いた。


「なら、見たいぜよ……」


 私は龍馬さんと顔を合わせ、ハイタッチを交わした。


 中岡が私たちの時代へ行く決心をして安堵するのも束の間、近江屋周辺を偵察していたドローンが帰って来て言った。


「みなさん、誰か来ます! 6人組の侍です」


「龍馬さんたちはここに居てください」


 そう言って結斗さんは耐刃頭巾を被る。

 私たちも頭巾を被り、グローブを手にはめた。

 まずは、相手全員を気絶させる。

 そして龍馬さんたちの死を人形で再現する。

 気絶から回復した相手は、それを見て自分たちがやったと思うだろう。

 後は、この場を重傷で生き残った中岡の証言さえあれば、歴史どおりというわけだ。


 一足早く用意を済ませた大将が、一階に降りていく。

 一階では近江屋店主の井口さん家族が、食卓を囲みご飯を食べていた。


「まもなく襲撃されます。みなさんはここを動かないでください!」


 井口さんにそう言ってから大将は玄関へ急いだ。


 ──ドンドンッ──

 玄関の扉がノックされる。

 玄関の外にいる相手に、大将が質問した。


「どちら様ですか?」

 

南大和みなみやまと国の十津川郷士とつかわごうしである。坂本殿に取り次ぎ願いたい」


 歴史どおりの口上だ。

 大将は引き戸を勢いよく開け、相手を急襲した。

 無防備に扉の前にいた相手を殴る。

 風船の破裂した音、そして吹き飛んでいく相手。

 私もすぐさま大将の隣から外へ出て、一人殴って吹っ飛ばす。


「き、気持ちいい……」


 そんな快感に浸って呆けていると、残り4人が刀を抜いた。

 こんな危険な戦闘の中、快感に酔いしれるなんて私はバカだった。

 4人が一斉に私に襲いかかり、その一本の刀が私の顔へ向かって振り下ろされた。

 体や頭は耐刃作用のある防具を身にまとっているけど、顔はむき出しで生身のままだ。

 一番の急所を突かれ、瞬時に私は悟った。

 あっ、死んだ……。

 咄嗟に目を瞑る。


「危ない!」


 大将の声がして目を開けると、私の目の前に大将の体があった。

 私の顔を目掛けて振り下ろされた刀は大将の肩で止まり、残り3本の刀も大将が全て体で受け止めてくれていた。


「イッ!」


 声にならない悲鳴を上げる大将。

 すぐさま信さんと結斗さんが、残り4人を殴って気絶させる。


「大将!」


 私がそう呼ぶと、大将は膝をついて体を震わせた。

 顔を覗くと、苦痛の表情に汗が吹き出ている。


「大将、大丈夫!?」


 そう呼びかけると、大将は苦痛の表情を一瞬緩め、笑った。


「歩実さんが無事で良かった……」


 その言葉を聞いて、私は泣きそうになった。

 戦闘を軽視した私の慢心が原因でこうなったのに、第一声が私の無事を言ってくれるなんて……。

 

「大将、ごめんなさい……」


「違うよ歩実さん。こういう時はお礼を言うんだ」


 そう言われ、私はドキッとした。

 大将は、私を非難しないんだ……。


「ありがとう、大将……」


 そう言って、私は泣いた。

 そんな私の隣で大将の左腕を上げる信さん。


「痛ッ!」


「ふむ、左腕が折れておるな」


 そう言って信さんは、結斗さんに顔を向けた。


「大将は帰還させた方が良いな」


 頷く結斗さん。


「そうですね。大将、瞬間移動の箱を使ってトワイライトに帰還してください」


「分かりました」


 そう答えて、大将は右手でズボンの後ろポケットから銀色の四角い箱を取り出した。


「帰ったら、すぐに病院へ行ってください」


「はい。それじゃあ皆さん、お先に」


 そう言って箱の表面に描かれた目を見た大将が、一瞬で消える。


「皆さん、土佐藩邸から誰か出てきます!」


 エッちゃんの言葉を聞いて、私たちは急いで倒した相手を近江屋の中へ引きずり込んだのだった。


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