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【完結】タイムスリップREstaurant  作者: しーなもん
第3章:ブレイクヒストリー
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第43話『幕末での再会』

「ごめんください!」


 結斗さんが、空気圧グローブを外して近江屋の扉をノックする。

 少しすると、引き戸の玄関がガラガラッと開いた。

 中から30歳くらいの痩せた男が出てくる。


「いらっしゃ──」


 男はそこまで言って、言葉を失った。

 私たちの格好を見て、客ではないと判断したのだろう。

 結斗さんが振り返りが、私たちに言う。


「彼は近江屋の店主、井口新助さんです」


 次に井口さんに顔を向け、続ける。


「井口さん、ここの2階にいる客人に、エッちゃんが会いに来たと伝えてください」


「ど、どちら様ですか?」


 警戒する井口さんに、結斗さんは言う。


わたくしはここの客人と飲み友達なのです。エッちゃんが会いに来たと言えば分かります」


「しょ、少々お待ちを!」


 慌てて店の奥へと向かう井口さん。

 少しすると、警戒しながら龍馬さんがこちらにやって来て、目を細めた。


「龍馬さん!」


 結斗さんはそう呼びかけ、耐刃頭巾を脱いだ。


「結斗さん!?」


 私たちもグローブを外して頭巾を脱ぐ。

 目を細めた龍馬さんの目が一気に開き、近付いて大声を出した。


「皆も! こがあ場所にどうやって来たんじゃ!?」


「龍馬さんがいなくても、この時代に来れる方法を見つけたのです」


 そう言う結斗さんの肩を両手でバンバン叩きながら、龍馬さんは笑った。


「さすが結斗さんじゃ! まっこと不思議な御仁ごじんじゃ!」


 喜ぶ龍馬さんに、ドローンが近付く。


「龍馬さん、悦子です」


 龍馬さんは肩を叩く手を止めて、周囲を見回した。

 そして、バサバサと音を立てて空中を飛ぶ異様な存在に気付く。


「何か飛んどるがよ!?」


 驚く龍馬さんに、ドローンが喋る。


「ここです、この機械を通して龍馬さんを見ています」


「喋った!? どういてエッちゃんの声がするがか?」


「私はトワイライトから遠隔操作でこの機械を操っています。それよりも龍馬さん、みんなの話を聞いてください」


「話? 話ってなんちゅう……」


 そう言いかけた龍馬さんに、信さんが近付いて言う。


「縮れ毛、よく聞け。今日がうぬの命日なんじゃ」


「はあ!?」


 龍馬さんは、怪訝に信さんを見た。

 まあ、そうだよね。

 いきなり今日が命日とか言われても信じられないよね。


「龍馬さん、本当です」


 結斗さんが言う。


「あなただけではありません。中岡慎太郎、山田藤吉の三名とも今日が命日なのです。この意味が分かりますか?」


 みるみる龍馬さんの目が大きくなる。


「ここが襲撃されるっちゅうことか!」


 結斗さんが頷く。


「ええ、そうです。そしてわたくしたちは、龍馬さんたちを救いに来たのです」


「救いにって……」


「まずは、中岡慎太郎と山田藤吉に会わせてください。話はそれからです」


 龍馬さんは少し考え、言った。


「まあ、上がっとおせ」


 そう言って店の奥へ案内され、階段を上がる。

 そうして私たちは、龍馬さんの隠れ家へ入ったのだった。


「中岡、それに峰やんにもちょっち話がある」


 そう言って部屋に入る龍馬さん。

 峰やんとは、きっと山田藤吉のあだ名だろう。


「そん人らは、どちらさんじゃ?」


 私たちの顔を見て、中岡慎太郎は部屋の隅にある刀掛けにジワジワと近付いた。

 その様子を見て、龍馬さんが言う。


「警戒するなち。こん人らはワシが世話になっちゅう食堂の友達やき」


「そん食堂の友が、何でこがあ場所に来るんじゃ?」


「まあ、まずはこん人らの話を聞いちょくれんか」


 そう言って龍馬さんは部屋の真ん中にある火鉢の隣に座り、私たちに顔を向けて言った。


「みんなも座っちょくれ」


 部屋には火鉢、屏風、掛け軸があり、畳八畳くらいの広さだ。


「縮れ毛、少し鼻声じゃな」


 そう言った信さんが、ドカッと音を立てて座る。


「ちょいと風邪引いたんじゃ」


 そう言って龍馬さんははなすすった。

 それを見て信さんが笑う。


「わっはっは。バカは風邪を引かんと言うぞ!」


 そんな信さんの言動に、中岡は鋭い目つきで睨んだ。


「何じゃおんしゃあ。なめちょんかえ?」


 刀掛けに手を伸ばす中岡を、龍馬さんがなだめる。


「待て待て中岡、こんお方は、本来ワシらのようなもんが目通りできるような人やないき」


「はあ? 薩長の重役か?」


 中岡の質問に、首を横に振る龍馬さん。


「元右大臣(うだいじん)右近衛大将(うこんえのだいしょう)じゃ」


「右近衛大将!? ということは将軍かッ!」


 そう言って刀掛けから刀を取った中岡。

 中岡の言葉を聞き、山田藤吉が怯えたように体を震わせた。

 そんな二人に、信さんは笑った。


「わっはっは。ワシが将軍なわけがなかろう。むしろ将軍や幕府なんてもんは、ワシが滅ぼしてやったわ」


「なん抜かしちゅうか! 幕府はまだ滅んどらん!」


 今にも刀を抜こうとする中岡を、龍馬さんが止める。


「待て中岡、ワシの友達っち言うたじゃろ。こんお方はな、なんと、織田信長公じゃ」


 暫くの沈黙。

 今まで怒りをあらわにしていた中岡は、冷静さを取り戻したかのように龍馬さんを見つめ、哀れむ顔を向けた。


「龍馬、おんし、どこか頭でもぶつけたんじゃな?」


 そう言って龍馬さんの頭をさする中岡。


「熱が出たかもしれませんね」


 そう言って龍馬さんのひたいに触れる山田藤吉。

 そんな二人の手を振り払って、龍馬さんは言った。


「違うっちゃ! げにまっこと、こんお方は信長公なんじゃち!」


 まるでじゃれるように龍馬さんの顔を触る二人の前に、結斗さんが正座する。


わたくしが説明しましょう。わたくしたちが何者なのか、なぜここへ来たのか、これから何が起こるのかということを」


 二人が龍馬さんの顔を触る手を止める。

 そして結斗さんは語ったのだった。

 時空を超えたトワイライトという店があること、私たちがこの時代の人間ではないこと、そして近江屋事件の全容を──。


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