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【完結】タイムスリップREstaurant  作者: しーなもん
第3章:ブレイクヒストリー
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第41話『テレポートの発明』

 耐刃服に着替えて下の階へ戻ると、みんな既に耐刃服に着替え終えていた。


「本当に、私も行くんですか?」


 そう聞くと、にこやかに結斗さんが言う。


「勿論です。戦力は一人でも多い方がいいですから」


 なぜ私を戦力に数える……。

 人なんて殴ったことないよ、私は。

 小学生の時に流行ってた、某妖怪ごっこをして百裂な肉球パンチでクラスの男子を泣かせたことならあるけど、あれはノーカンだし。


「大将、危なくなったら守ってください」


 そう言うと、大将は爽やかに笑って「オッケー」と承諾した。

 なんか返事軽いし、大将はイマイチ頼りにならないんだよなー……。


 ふとテーブル席のベンチ椅子を見ると、2メートルくらいある細長い木箱がそれぞれのベンチ椅子に1箱ずつ、計3箱置かれていた。


「この箱は何ですか?」


 そう聞くと、結斗さんは木箱を一つ開ける。

 私はその中身を見て、悲鳴をあげた。


「きゃあッ! 人!?」


 中に和服を着た人が入って、眠っている。


「ん!?」


 よく見ると、私はその人を知っていた。

 先日ドローン越しに見た、中岡慎太郎だ。

 肌の質感、顔つや、毛根など、細部の至る所まで精巧に作られて本物と見分けがつかない。


「これがこの前言っていた、そっくりな人形ですか?」


「はい。少し動かしてみましょう」


 そう言って結斗さんはスマホのような物をポケットから取り出して操作した。

 すると、眠っていた人形の目が開き、ゆっくりと起き上がった。

 人形に結斗さんが質問する。


「あなたの名前は何ですか?」


「わしゃあ中岡慎太郎っちゅう名じゃ。ここはどこじゃ?」


 そう言って人形は周りを見回す。


「えっ、喋った!?」


 驚いてそう言うと、信さんが当然のような顔をして言う。


「何を驚いておる。喋らんと偽装にならんじゃろ」


 いやいや、あんたは知らないだろうさ、この技術力の凄さが!

 動いて喋って質問に答えて質問を返したんだよ!?


「この人形にはAIが搭載されています」


 そう言って結斗さんは、再度スマホみたいな物を操作した。

 人形の動きが一瞬ピタリと止まり、ゆっくりと動いて箱の中で眠りにつく。


「もしかして、声も中岡慎太郎そっくりなんですか?」


 そう聞くと、結斗さんは苦笑いをした。


「あまり似てないのかもしれません。先日のドローン撮影の時、声のサンプルは録りましたが、なにぶんドローンの羽音がノイズでして、どこまで似せることができたのかイマイチ分からないのです」


 そうなんだ……。

 もっと近くで声を録ることができたら充分似せることができたんだろうな……。


「でも、こんな短期間でこんな凄い人形を作って、厳しい条件で録ったサンプルで声まで似せようとした結斗さんは、凄いです!」


 そう言うと、結斗さんは笑った。


「ホッホッ、未来の技術では、これくらい容易く作れるのですよ」


 凄いな未来……。

 私の中で、結斗さんの存在が猫型ロボットのようになりつつある。

 そんな結斗モンに、エッちゃんが言う。


「結斗さん、あの実験もやっておいた方がいいんじゃないですか?」


「おっと、そうですね」


 そう言って結斗さんは、段ボールからまた新たな道具を取り出した。

 まるでジッポライターのような、銀色の四角い箱だ。

 表面には人の目が描かれており、不気味さを醸し出している。

 それを私、大将、信さんに渡す。


「みなさん、箱にあるボタンを押して、髪を毛を中に入れてください」


 言われたとおり箱の側面にあるボタンを押す。

 するとカシャッという音とともに、まるでマッチの箱のようにスライドして箱が開いた。

 髪の毛を一本抜き、箱の中に入れた後スライドさせて閉じる。

 全員が終わったところで、結斗さんは言った。


「では、実験のためエッちゃんの時代に一旦行きましょう」


 エッちゃんが店のドアを開ける。


「エッちゃんの時代に?」


 思わず質問してしまう。

 ここまで何をやらされているのか、検討もつかない。


「行けば分かります」


 そう言って結斗さんはドアを出て行った。

 私と大将と信さんは顔を互いに合わせ、首を傾げながら店を出る。


「では皆さん、その箱の目を見てください」


 はあ?

 全く意味が分かんない。

 一体何の実験なの!?


 若干苛立ちつつ、箱の目を見る。

 その瞬間、私は今まで店の外にいたはずなのに、なぜか店の中にいた。


「お帰りなさい」


 そう言ってエッちゃんが笑っている。


「えっ、何、何が起こったの!?」


 頭を混乱させていると、隣に誰もいなかったのに、大将が一瞬で現れ、次の瞬間目の前に信さんが現れた。

 私の混乱が加速する。


「どうなってんだ!?」


「何じゃこれは!?」


 二人も混乱して周囲を見回している。


「ホッホッ、エッちゃん、成功ですな」


 そう言って店の中に入ってくる結斗さん。

 結斗さんはエッちゃんの頭を撫でながら言う。


「これはエッちゃんのアイデアを元に発明した、瞬間移動の道具です」


「瞬間移動!?」


 私たち三人がハモッたのは言うまでもない。

 結斗さんはカウンター席にゆっくりと座り、言った。


「歩実さん、覚えておいでですか。わたくしがあなたのお父さんの救出に失敗した時の話を」


 そんなの、忘れるはずがない。

 むしろそれを改めて成功させるのが目的で、この店で働きだしたんだ。


「勿論覚えています」


「では、私が大将の前から突然消えたという話は覚えておいでですか?」


「はい」


 バイク事故が起こる交差点にいた結斗さんと大将だったけど、結斗さんが突然消えてしまったという話だ。

 消えた結斗さんは、なぜかこの店内に戻っていたと言っていた。

 確か、タイムパラドックスが発生したとか何とか……。


「あの時(わたくし)は、幼い過去の自分の目を見ました。その瞬間、タイムパラドックスが発生して世界から弾き出されたわたくしは、この店に戻ったのです」


 結斗さんに続いて、エッちゃんが言う。


「その話を聞いて、私は思いました。故意にタイムパラドックスを発生させることができたら、瞬間移動として使えるんじゃないかって……。結斗さんは、クローンとかいう技術で私の手を作ってました。じゃあ、そのクローンで目も作れるんじゃないかって、目が作れるんなら、瞬間移動ができるんじゃないかって思ったんです」


「ホッホッ、まさに、エッちゃんの思惑どおりでしたな。皆さんに渡したその箱は、皆さんの目のクローンを作るための道具なのですよ」


 私は体が震えた。

 これが小学生の考えることなのかと。

 エッちゃんのアイデアってことは、結斗さんでも思い付かなかった道具っていうことだよね?

 私や大将より過去の時代を生きてきたエッちゃんが、結斗さんの未来の技術を元にアイデアを出すなんて、この子はどこまで天才少女なんだ!?


「なるほどのう。これがあれば、近江屋から縮れ毛たちを一瞬でこの店に送ることもできよう」


 信さんの言葉に、結斗さんが首を横に振る。


「それはできないのです。なぜなら龍馬さんたちは自分の時代にいますから、自分のクローンの目を見たところでタイムパラドックスとはならないのです」


 結斗さんの言葉を、鼻で笑う信さん。


「ふん、何を言うておる。誰かが縮れ毛を触って瞬間移動すればよいではないか。ワシらが瞬間移動した時、着ていた服やこの箱も一緒に瞬間移動したはずじゃ。つまり、触れておる物も一緒に瞬間移動するということじゃ」


 驚愕の顔で信さんを見る結斗さんとエッちゃん。

 私は思わず口を挟んだ。


「えっ、もしかして信さんの見解は、当たってるの……?」


 結斗さんが悔しそうに嘆く。


「そうです! なぜ気付かなかったのか! 信さん、あなたの仰るとおりです!」


 ま、マジか……。

 何百年も前の時代の人が、こんな話についていけるんだ……。

 さすが、日本で一番最初に地球が丸いことを理解した人物なだけある。

 どこまで柔軟なんだよ、その頭……。


「今回の作戦、わたくしには一つ懸念点がございました。それは、中岡慎太郎と山田藤吉が作戦に応じず、拒否するというものです。そうなった場合、多少荒いことをして無理矢理この店に運び込む必要がありました。しかし今、その懸念点が解消されました。なぜなら、触れて瞬間移動するだけで解決となるのですから」


 やる気に満ちた声色でそう告げる結斗さん。


「大将、うぬは話に付いて来れておるか?」


 しばらく無言の大将に、信さんが質問する。


「まあ、だいたいは……」


 そう答えた大将に「仕方がないのう」と肩を叩き、活を入れる。


「ほれ、作戦開始の掛け声じゃ。うぬがやれ」


 信さんにそう言われた大将は、顔を両手でパンッと叩いて自分でも活を入れ直し、言った。


「じゃあみんな、これから、近江屋事件偽装作戦を開始する!」


「オーッ!」


 みんなが拳を上げる。

 混乱が続く私は、大将を見習って顔を両手で叩き、活を入れるのだった。

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