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【完結】タイムスリップREstaurant  作者: しーなもん
第2章:タイムトラブル・パティシエ
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第16話『小学生の勤務体制』

 朝7時に目覚めた私は、シャワーを浴びてからネットカフェを出た。

 すぐにあのお店に行こうと思ったけど、ネットで調べてみたら、あのお店の営業時間は11時かららしい。

 私は四条河原町をぶらぶら歩いて時間を潰し、11時にあのお店を再訪した。


「こんにちは」


 店の扉を開け、挨拶をする。


「いらっしゃいませ!」


 元気な女の子の声が店内に響く。

 クラシカルなメイド服、エッちゃんの声だ。


「おっ、また来てくれたんですね。嬉しいです」


 大将はそう言って、ニコッと笑った。


「はい、今日は聞きたいことがあって」


「おや、何でしょう?」


 大将はそう言ってから、カウンター席へ手を添えて案内する。


「取り敢えず、こちらにどうぞ」


「はい」


 カウンター席に座って、サコッシュから手帳を取り出そうとしたが、止めた。


「まずはご飯が食べたいです」


 そう言うと、大将は笑ってメニュー表を差し出してくれた。

 だって、昼時なんだもん、お腹空くよね。

 

 メニュー表を開く。

 今日はさっぱりした物が食べたいかな。


「すみません、レモンクリームスパゲッティをください」


「はいよ!」


 大将がそう返事すると、エッちゃんがメニュー表を下げ、代わりに水の入った湯呑みをカウンターに置いた。


 ……あれ?

 そういや、エッちゃんってこの時間にもいるの?

 昨日は夕方にお店に来てたよね?


「ありがとう」


「はい!」


 礼を言い、ふと気になったことを聞いてみる。


「エッちゃんはこの時間にも働いてるの?」


 私がそう聞くと、エッちゃんの代わりに大将が答えた。


「エッちゃんは昨日から帰ってないんですよ」


「ええっ!?」


 私は驚愕の眼差しを大将に向けた。

 いやいや、いくら時代の違う子だからといっても、そんなこと許されないだろ。


「エッちゃんは夕方出勤して、閉店まで働いて、この店で寝泊まりして、次の日の昼時終われば帰って、さらに次の日の夕方にまた出勤するって感じの勤務体制なんです」


 う、うん?

 子供が働いているということは置いといて、それなら、労働時間的には問題ない……のか?


「なぜそんなややこしい勤務体制なんですか?」


「ウチの店は夜9時までなんですけど、エッちゃんの時代の夜9時って、外は真っ暗なんですよ。とても女の子一人が歩けるような状況じゃないみたいで」


 なるほど。

 夜道を女の子一人で帰らさない処置という訳か。


「でもそれなら、朝から夕方までの勤務とかにすればいいのでは?」


 そう言うと、エッちゃんは首を横に振った。


「それだけは駄目です。龍馬さんも、信長さんも、みんな夕方から来ます。私が夕方に帰っちゃったら、みんなに会えなくなっちゃいます」


 エッちゃんの言葉に、大将は苦笑いを浮かべて続けた。


「と、いう訳なんです」


 な、なるほど……。

 エッちゃんが強く希望しての勤務体制ということか……。

 どうやら、私が口出しできることではないらしい。


「まあ、全部結斗さんが考えてくれた勤務体制なんですけどね」


 そう言って大将は豪快に笑った。

 本当に大丈夫なのか、この人……。

 怪訝けげんに大将を見ていると、店のドアが開いた。


「こんにちは」


 そう言って入って来たのは、タキシードの好好爺こうこうや、結斗さんだ。


「お、噂をすれば。この時間に珍しいですね、結斗さん」


「ええ、まだエッちゃんがいる時間だと思いまして」


 そう言って結斗さんは、大きなリュックサックを床に置いた。


「エッちゃんにプレゼントです」


「これは?」


 質問するエッちゃんに、ニコッと笑って結斗さんは言う。


「開けてみなさい」


 言われるがまま、エッちゃんがリュックを開けると、中から青いウインドブレイカーのような服が出てきた。


「それは私の時代にある、強力な防火服です。エッちゃん家族三人分が入ってます」


 結斗さんの時代って、私の時代より未来の時代だよね?

 だとしたら、あれは未来の防火服ってこと!?


「そろそろ空襲が激化する頃でしょう。京都は空襲が少ない地域ではありますが、もし空襲があったら、それを着て逃げなさい」


「ちょ、結斗さん、それはさすがにマズいんじゃ」


 慌ててそう言う大将。

 そうだよね、あれをエッちゃんに渡すということは、エッちゃんの時代に無い物を渡すということだから、歴史が変わってしまうよね。


「大将、大丈夫です」


 そう言って結斗さんは口髭を擦って言った。


「考えてもごらんなさい。エッちゃんがこの店に来て、大将はエッちゃんにもエッちゃん家族にも多くの食料支援をしてきました。それはすなわち、エッちゃんたち家族の歴史が変わったということです。なのに、我々の歴史は変わらず、世界が消えるという現象は起きていません。ということは、後世に伝わるレベルでないことなら、多少歴史を変えても、我々の歴史は変わらず問題ないということです」


 呆然とした顔で結斗さんを見る大将。

 ああ、これは分かってない顔だな。

 大丈夫、私も結斗さんが何を言っているのか分からないよ、大将。


「後世に伝わらなければ、歴史は変えられる……」


 そう呟いたエッちゃんが、印象的だった。

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