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一流料理人転生したら獣人でした  作者: みずいろ
マリジャナル編
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第71話「何しに来たん?」


次の日の昼前から俺たちはバーカウンターへと立った。


「あれ!にぃちゃん!昨日来てた子やろ?今日は店員さんかい!?できるんか?」


昨日のやな感じのおっさんが開店いちばんにやってきた。


「いらっしゃいませ。昨日はどうも、えぇ、少し込み入った事情で手伝うことになりまして。ホットワインをご所望ですか?」


「いんや〜!前はんまかったんやけど最近のは口に合わんから今日は違うんでええわ!なんかてけとーなの出して!」


「あの!」

とマルクが何が言いかけたが俺が遮った。


「かしこまりました。お好みのお酒はございますか?」


「ん〜強いて言うならわりと甘いんすっきやなぁ。」


「承知いたしました。当店オリジナルカクテルをお作りいたします。

ブルーベリーの粒を何粒か氷とともにステアし昨日のうちに教えついでに作ったサングリアと今絞りたてのオレンジの果汁をシェイカーで振りグラスに注ぎ入れ最後に少量のトニックウォーターを加え再びステアしたものをオヤジに出した。


「ロイズ名産のワインを使って作ったサングリアのカクテルになります。」


「ほえ〜兄ちゃんできおるのぉ!見た目は完璧やで!」


「恐れ入ります。」


ボウアンドスクレープを丁寧にして俺は一歩後ろに下がった。


オヤジはグラスを手に取ると香りを少し楽しみそれから一口分口に含む。


「んーー!んまい!こりゃうまいぞ!やるやんけ!」


「恐れ入ります。何かございましたらいつでもお声がけ下さいませ。」


うー...接客するのは久々だよ!ギャルソンなんていつ以来だ!?なんかの修行のタイミングでやったきりだ!

背中が痒いわ!


マルクもモーちゃんもこちらをキラキラした目で見てる。

うふ...悪い気分じゃないね。


「兄ちゃん!そっちの子ぉにも教えたってな!あんまし慣れてへんみたいやねん!」

オヤジはマルクの方を見てそう言った。


「昨日までは勉強不足ゆえに、お口に合わないものをお出ししてしまい、申し訳ございませんでした。私もまだまだ未熟ではございますが、僭越ながら昨日こちらのマルクに指導いたしましたので、昨日よりはお口に合うものをご提供できるかと存じます。」


「おお!さいか!んならそっちの子にホットワイン頼んでみてもええか?」


「もちろんでございます。スパイスの加減は如何程がお好みですか?」


「ん〜おもっきり効いてるほうがすっきや!甘渋いくて辛いのん頼むわ!」


「畏まりました。マルク...昨日教えた通りにやってみてください。」


「承りました。」


マルクはきちんと昨日教えた通りに丁寧に一つ一つの工程をこなす。

ワインは弱火で温め沸騰をさせない。

はちみつは甘いのが好きなようだから少し多めに。

シナモンは分量を測り多ければ切る。

カルダモンは鞘を軽く潰し鍋に入れる。

スパイス味が欲しいようだから八角も加える。

ドライフルーツを少々加える。

ドライフルーツ、スパイス類を適度なところで取り出し一度漉したら

耐熱グラスに移し果実を加えていく。

見た目、薫り、味全て完璧にできているはず。

俺が教えた通りにきちんとこなしていた。


「お待たせいたしました。」


「おぉ!昨日のんとは香りがだんちやで!」


オヤジは早速グラスを手に取ると香りを楽しみつつ恐る恐る啜った。


「ん〜〜〜!こりゃあ!美味いで!」


マルクはその一言に思わずガッツポーズを取ってしまう。


こら!と思ったけどオヤジも見てないからまぁいいか。


「いや〜!兄ちゃん!あんたがこんなにすごいとは思わんかったで〜!あない美味しないホットワイン飲んだのは初めやったさかい、1日でこんなに帰られるほど教えるん上手いんやなぁ。」


「恐れ入ります。私共はバーテンダーですからお客様がお飲みになりたいものを言っていただければこの後もなるべくご要望に添わせていただきます。」


「あは〜!なんや対応も一流やな。こないなところで働くんわ勿体ない〜!うちのホテルで働いてくれへんか?」


なぬ!この浮浪者みたいな格好をしたじじいがホテルのオーナーですって?怪し!


「大変恐れ入りますが...私、臨時のスタッフになりますので対応いたしかねます。

せっかくのお誘いを男割りする形になってしまい大変申し訳ございません。」


「お〜!ええよええよ!こっちもさすがに急に引き抜くんは感じ悪いしな!いつか俺んとこ来てもええ思たらいつでもオーナーのアルスさん通して働きに来てな!」


あ〜そことそこも繋がってんのかい!

どんだけ手びろいんだ!マーシェット商会!


「あ〜今日は気分ええわ!」


「何よりです。グラスが空いておられますがなにかご用意致しますか?」


「いんや!今日はこれでええわ!マリジャナル戻ったら思いっきり飲もう思てるねん。着くまではチビチビいかせてもらうわ!また夜来るわ!じゃ!会計は部屋につけといてな。」


「承知いたしました。ルームナンバーはいただいておりますのでこちらで結構でございます。またのお越しをお待ちしております。」


この後は結構忙しかった。

モーちゃんも俺を真似してダンディな接客をこなし、マルクもなかなか凛々しく接客をしていた。


そんなこんなでクローズまで働き店閉めをしているとアルスがやってきた。


「やあやあやあ調子はどうや?」


「...はぁ。」


「評判ええみたいやなぁ。もうずっと働いて欲しいわあはは!売上は過去最高をたたき出すどころかさらに登っとるわぁ〜あはは!明日も頼んだでぇ。」


「はぁ....。」


返事をするのも嫌だったのでため息をずっと着いているとアルスはそのうち帰って行った。

何しに来たん。


次の日から結局マリジャナルに着くまでは大忙しでマルクを一人にするのはあまりにも可哀想だったので結局最後まで手伝ってしまった。


最終日の夜の業務を終えた俺たちは自分たちのバーでお疲れ会をした。

アルスには内緒で勝手にアルス付にして好き勝手さ家を飲もうということにした。


「ダイゴさん!本当に本当にありがとうございました!勉強になる事ばかりで僕!僕...アニキが居なくなるの寂しいですよぉおお。」


マルクはどうも泣き上戸らしい。


「あはは!まあまあお前ならもう一人でやれるよ。」


「あーん!そんな事言わないで下さぁい!もうこんなとこ辞めてアニキたちの度について行きたいですよぉ。」


おいおい!それじゃ俺が苦労した意味が無くなるだろうが。

と言いたかったがこいつは多分素直で少しおバカさんなので黙って胸で泣かせてやることにした。


「次の出発からお二人がいなくなると思うと憂鬱です!停泊の間、僕アルスさんにお願いしてアニキ達と同じホテルにしてもらいました!だからその間一緒にいてもいいですかぁ?」


「あぁ。構わんけど討伐依頼とかも行くかもよ?」


「あ!僕!少しは戦えるので役に立つと思います!スクロールとか証人ならではの道具を使ってにはなりますが。」


「おぉ!それは頼もしいな。」


「もぉ!アニキ達サイコーすぎますって!商人は嘘つきばっかりで!僕も商人やってる時は嘘つきですけど...。」


「あはははは!そりゃあそうだろ!騙しと信頼のバランスを取る仕事じゃないか!」


「そうなんですけどぉ。冒険者とかになってたこんな汚ったない世界に足を突っ込まず済んだのかなぁって!」


「まあまあそれぞれ色んな大変さがあるもんだぜ。」


「そ、そうですよね。」


「あっはっはっ!マルク!お前かあいいなぁ!」

モーちゃんは陽気さに拍車がかかっている。

兄貴肌な所があるので生粋の弟肌のマルクは可愛くて仕方がないようだ。

頭をわしゃわしゃされてる。


「あ〜!ダイゴ君!それ高いバーボンやん!どうせ俺につけてるんやろ!?」


俺たちの飲み会は邪魔者が乱入しここからカオスになっていく。


「ったりめーだろ!ざけんなよ!お前マジで!」


「あはは...怒っとるなぁ。」


「ったりめーだろ!ざけんなよ!お前マジで!」


思わず二回同じセリフを吐くほど俺は不満が溜まっていたようだ。


そのあとシャルやマカフィー、アベルやルカもやってきてぼぼ宴会と化した。


苦情が来たらやばいので貸切の札をきちんと立て騒ぎすぎない程度に朝方まで飲み会が続いた。


「だーかーら!ベルの方が大きいって!」


「ちがうよー!フィーの方がおおきい!」


酔っ払ったマカフィーとアベルは...なんというかその父を揉みあっていた。

見なかったことにしよう。


「シャル!こら!脱ぐな!脱ぐなら部屋にフープルするか?」


「やだぁ!俺はここで全裸になるの!」

はぁ...めん...どくせ!

ハルートが居たらなぁ!


「ダイゴくぅん!ほらこっちきぃ〜口移ししたるわぁ。」


きもちわり、無視しよう。


ったく...こいつらといるとどうしていつもこんなに騒がしいのかなぁ。


「アニキィ!こっちに来てくださいよぉ!モーティのアニキがめちゃ飲ませてくるんですよぉ。」


...うん、がんばれ。


俺はシャルを止めないと色々やばい気がしたのでシャルを全力で抑えている。


「わかった!わかったよぉ!タンクトップになるだけだからァ。」


「あぁ...それならいいぞ!脱いだ服はその辺に置くなよ。お前鎧の時もぽいぽい脱ぎ散らかすんだから。」


「わぁったよ!」


ったく!俺が酔っ払う間もねぇよ!バカどもめ!


「ふっ...。楽しいなお前らって。」


あれ?考えてることと言ってることが逆になっちまったよ。

俺も酔っ払ってきたのかもしれんな。


きっと朝になったらみんなの二日酔いの治療をさせられるのだろう。

そう思ったら自分も定期的に魔法で酔いを覚ましておかないといけないし、本当にまったく手のかかる奴らだなぁ。



それでも俺はこいつらが大好きだ。

ハルート、お前の居場所はここのはずだろ?

早く戻ってこいよな。


俺はひとしきり落ち着いたあとバーのグラスを眺めながらバーボンを流し込んでいた。

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