第66話「行ってきます」
「はい、ファタリテドゥデステン様。正式な依頼としてロイズ図書館様より専用依頼としてお預かりしてます。こちらを正式受理する形で宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします。」
俺は受付の女の人に食い気味に返事をした。
ギルドーカードを返してもらうと俺たちはすぐに図書館に戻った。
「ダイゴさん!お戻りになられましたか!直ぐに出発しましょう。」
「はい!お願いします。」
「あっ、申し遅れました!私、レビと申します。よろしくお願いいたします。」
「はい、お願いします。」
正直、俺は同じ言葉しか出てこないほど焦っていた。
「ダイゴくん...落ち着き。大丈夫やハルート君は助けられるで。俺がついとる。」
アルスが俺を落かせるようにそういったようだったが正直入ってこない。
「ダイゴ!大丈夫だよ!あたしもモーティも居るし!君は強いんだ!大丈夫それに...皆でマリジャナル行く約束したもんね。絶対大丈夫だよ。」
今度はマカフィーが手を握ってくれた。
暖かくて柔らかくて肉球と肉球が触れるとマカフィーの手汗も伝わってきた。
怖いのは俺だけじゃない。
落ち着かなくては...。
禁書庫に入るまでは随分と厳重なシステムで守られておりアクアベリーの時とは比べ物にならないほどセキュリティが強固だった。
禁書庫の中も恐ろしく広く転移用のゲートがあったりしてこんな時でも俺は少しそこに驚いていた。
ハルートが失踪したとされるエリアへとたどり着くとレビさんはタブレットでなにか調べ物を始めた。
しばらく色々な場所にタブレットをかざしたり写真を撮ったり本棚の本を取り出し写真に収めたりしてからレビさんはゆっくりと俺たちの方を見てこう言った。
「この場所と異空間を繋ぐマナのゲートの痕跡が微量残っています...恐らくこれなら解析をしていけばもしかすると彼を見つけられるかもしれません....が私の知識だけでは難しいかもしれません。
それに...恐らくゲートは途中で途切れているかもしれなくて絶対にたどり着ける保証がないです。」
....。
「ゲートの魔術式を解析して貰えますか?
...おれができる範囲でプログラムし直してみます。魔力の痕跡は消されてしまっているかもしれませんができる所までやらせてください。」
俺はレビさんの方を見返してそう言った。
「...わかりました。ハルートさんからいつもうちのリーダーは魔術がすごいと聞かされていました。
そんなあなたでしたらもしかしたらするかもしれませんね。」
「...自信はないですがやれることをやってみます。」
ハルート...待っていてくれよ。絶対助けてやるからな。
レビさんが書き出した魔術式を元にゲートを開く式を割り出すためにまずはフープルの術式を書き出して差異を探しそこから分岐する魔術の術式を書き出した。
その途中途中では前にハルートが貸してくれた古代魔術に関する本に断片的に乗っていた魔術式や文字も出てきた。
...お前が教えてくれたこと一つも無駄にしないからな、ありがとうなハルート。
「すごい...こんなの普通じゃない。」
レビさんは俺を見て口を開けていたが俺はそれに反応する余裕もない。
演算をひとつでも間違ってしまえば何が起こるか全く保証できないから。
そこから半日以上かけ禁書庫にある本も使わせてもらう許可を得てマカフィーやモーティにも手伝ってもらい図書館のスタッフにも手伝ってもらい総出で資料を集め魔素紙に演算を書きまくり鼻血を吹き出しながらも手を止めなかった。
床にデカイ魔素紙を敷いてその上に魔光ペンで魔法陣を描き空中にも魔法陣やプログラムした術式を書きまくって繰り返しまくった演算の幾つもの魔術が重なるように調節した。
できた...のか?
改めて周りを見直すと本が散乱したり、
カバンから出したエーテルを何本も飲み干したゴミが床に散らかっている。
「散らかしてすみません。」
「いえ...ダイゴさんの気迫や知識値は驚きましたよ。図書館のことはこちらでどうにかするので気にしないでくださいね。」
「....。」
「ダイゴ...あたしも行くよ。」
覚悟を決めた顔をした俺にマカフィーがすかさず声をかけた。
「だめだ。帰って来れる保証がねぇここは...俺一人で行く。」
「...それでも行くよ。あたし達仲間だもん。」
「あぁ...わかってる。でもダメだ。行った先はたどり着くことは愚か戻るにしてもフープルでさえ上手く扱えるかも分からないんだ。もしお前らに何かあったら待っていてくれてるシャルやアベルやルカのところに帰れるやつが居なくなってしまう。」
「....。」
マカフィーの顔はより曇ってしまう。
「....ダイゴ。困らせるようなことは言いたくないでもね、約束して、シャルとあたしが自由に生きる先には君がいて欲しいよ。そこにはもちろんハルートだって....君がそういったんだもん。お願いだから帰ってきて。」
「...。」
俺の胸にマカフィーの言葉が深く刺さった。
...そうだ俺が言ったんだ。
「...わかった。必ずハルートを連れ帰る。でもお前たちは待っていくれ。異空間の中はマナ量も消費が激しいだろうし...生命エネルギーそのものを持って行かれかねん。俺一人ならなんとかエーテルを飲んだり結界を繰り返し貼る演算魔法陣を組んだりしてそれを崩れないように保てると思う。」
「...うん。必ずだよ。」
「ダイゴ...すまねぇ何も出来なくて本当に...。せめて一緒にいれたらいいんだがそれすら足手まといになっちまう。」
モーティは俺の手を取り俯く。
「...何言ってんだよ。ここまで黙って俺たちのおもてー事実を聞いてついて来て一緒に受け止めてくれてくれてきただろうが!俺はそれにすげー救われてるんだぜ。」
笑顔でそう返すとモーティは涙を流し笑い返した。
「なぁダイゴくん...役に立てるか分からんが...さっきバダバタしとった時、魔導契約書作ってきた。これで俺は君を裏切れん。今すぐ俺と契約を結んでくへんか?」
すると今度はアルスが俺の方をグズグズの顔で見てそう言った。
「...ちっ。お前ってとことんずりー男だな。」
俺はやつの涙と鼻水で濡れた顔を見て少し気が抜けた。
俺達は契約書に血を垂らし握手をしてマナを流し合い契りを交わした。
「俺は君が帰ってくることをちゃんと分かってる。今はなんも話せんし言えることが全然あらへんのやけど君の人生は君のもんや....俺は君が好きや。
それだけは信じてな。」
「けっ...。ばかやろう。おめーには何が見えてんだよ。掟ってのを破ってくれるんじゃねえの?」
「すまん...今はまだそのときでは無いんや。そんなんで信じてくれ言うて信じてもらえんのはわかってる。でも俺は君の味方やねん。最初は全部計算ずくやった...でも今はそれだけやないんよ。
ハルート君は君を待ってるで。」
「うさんくせ。まぁいいや今はお前を信じるよ。契約書の内容もしっかり確認したし裏切れないことはわかってる。お前ならその抜け道をみつけそうだがそん時はそん時だ!信じた俺がわりーってことでいい。
つーかそんなことより、男が人前で情けねー顔してんじゃねーぞ!
俺は泣かねぇ。ハルートを取り戻すまでは泣かねえんだ...。」
そう喋りながら俺は今にも泣きそうだったが歯を食いしばって魔法陣を起動する準備を始めた。
「...ダイゴ!」
「ダイゴくん。」
「ダイゴ。」
「ダイゴさん。」
魔法陣が起動し始め光が強くなるとみんなが俺の名前を呼んだ。
「....。みんな!行ってきます!」
赤黒い光と煙が怪しく立ち込めフープルの七色の光が俺を包み込んだ瞬間俺は一生懸命覚えた古代語を詠唱した。
俺を取り巻く光はさらに強くなり周りは見えなくなった。




