↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一流料理人転生したら獣人でした  作者: みずいろ
ツァイヴァース編
PR
63/72

第63話「仕組まれていた日常」

「ダイゴくん、ここからは俺の言う通りに動いてくれるか?」


いつになく真剣な顔でこちらを見つめるアルス。


「あぁ、わかった。」


「ほんま助かるわ。帰ったらちゃんと訳話すさかい堪忍な!」


不気味な形の建物が乱立しているなか一際目立って黄色と赤で塗られた石造りの気持ちの悪い色の建物目指してアルスは歩き出す。


俺は言われた通りやつに着いていく。


「....。」


外には誰もいないはずなのに建物の中から激しく視線を感じる。


建物の中に入ると...薄暗く松明の明かりでぼんやりと照らされたそこは甘ったるくむせ返るようなインセンスがモクモクと炊かれて目が染みるほどだった。


「アルスか。よく来たな。」


「はい。」


暗くてよく見えないが低くホーミーのようにびよびよとした声がした。


奥へと進むと不気味なお面を被った半裸の猿族の男がテーブルの上に座っていた。


「エルケアルアルモロドセエンリァサ。」


男は横にいたお付きの者に俺たちが理解できない言語で何か言った。


「アルハウミラフジガガベ。」

アルスは彼らの言葉がわかるのかシャーマンのような風貌の男に同じ言葉で何かを伝えた。


「そちらのものにも分かるよう共通語で話そう。見ての通りここは魔境と呼ばれ国交を断っている。そのため私以外は共通語を今も話せない。だから今私が君たちに話している言葉では横にいる魔術師共にも分からないだろう。

それはそうと君たちはここに連れてこられて随分戸惑っているようだがアルスからは何か聞いているのか?」


「いえ...。」


俺がぼそっと言うと男はアルスの方を見る。


「仕方ないんですわ...今回ばかりはこの子らにも協力してもらわなあかんと...判断したもので。」


「....ついに奴らが動き出したのか。」


「ええ...おそらく図書館で異空間に飲み込まれた報告を商会の方でも受けまして...。ウルドゥトさんにも協力をして頂かなくてはと思い...俺の仲間ん中でも特に信用のおける子らを連れてきたんです。」


「....チッ貴様...今私の名前を呼んだな?それがどういう意味がわかっているのか?」


「ええ...敢えて呼ばせてもらいました。全ては話せないですがある程度こちら側にいてもらわんことにはこの子らに危険がお呼びそうなんで。」


「....そうかそこまで考えてのことであれば良いだろう。ではわかっているな?それなりの覚悟はこの者らにもしてもらわんといかんぞ。」


「すんません...時間が無さそうでもしかするとヤツが先に手を出しかねないかなと考えとります。」


「....マーティンの差し金の奴らか...アイツらは賢者由来の高等な強烈な魔術や型破りな古代術式もあるからな。」


マーティン...?それってたしかメトロの苗字でメトロが名前を名乗りたくない時に名乗っていた名前だったような?

前にもマカフィーが言っていたがまさかこの時代に本当に賢者メトロが生きているというのか?


「何がなにやら分からない...という顔だね。」


俺の顔を見たウルドゥトは面をずらし口元を綻ばせた。


「この子らにはホント何も言えてなくて...ただ自由にさせてもらってる分俺も決まりには縛られてるもんですから...俺からはなんも言えんくて。」


「そうだろうな。いいだろう私から話すとしよう。私にも段々見えてきたからな...この者らの素性が。」


「助かります。」


ウルドゥトは静かに呼吸を整えとんでもないことを話し始めた。


「...我々、つまりここにいるアルス、私は世界の修復人...運命バランスを崩さないように歴史を見守るために上から役割を与えられた観測者...なのだ。

観測者はアカシックレコードにアクセスし歴史における禁忌を覗き見ることができる権利を生まれながらに得ており特別なギフトを皆与えられてきている。

神が世界のバランスを取るために勇者なき現代に我々を作ったとされているが我々とて神には会ったことがない。

しかしなぜ自分の役割を知っているかといえば生まれた時からそこの知識が身についているからだ。

私が与えられたギフトはセンセーションテリングさ。簡単な未来視や特定の事柄を占いや水晶で見通す力がある。

それとは別にこの部族の族長の子として生まれ強い魔力やドールーマジックを扱うセンスを持っている。

そこいるアルスも同じで類まれなる商売のセンスや戦略...人を惹きつける頭脳や魅力をもち商会を継ぐべきために生まれた跡取りでもあるし...観測者としてオールビューを得て役割をこなす存在でもある。

どちらもこの世での役割を果たすために強力な家柄の生まれであり観測者としての力を存分に発揮するために整った環境で生まれてきているのだ。」


あまりにも突拍子のない話で俺は瞬きをするのもできないほど目が開きなんのおとぎ話なのだ?と思った。


「....君はこの世界に神から呼ばれてきたのだろう?ある意味観測者と同じさ。」


俺がビビりまくっているとウルドゥトはさらに衝撃的な話を続けた。

「この世界に呼ばれた...しかも強く魔術の資質がある。挙句古代術式にも理解があるとみたね。

私たちは君が敵にならない以上は君を生かしておくことはできるがもし君がこの世界の運命バランスを仇なす存在になるのであれば排除せざるおえないんだ。

つまり君が置かれている状況ははただ事実を告げられてるということではなく選択を迫られていることだと理解してくれるか?

そこにいるアルスという男には人と人を通して先の計算が見えるほどの頭脳やビューの能力で少しだけ先の人に関する未来が見えるんだ。

数珠繋ぎのように人と人が繋がって無限にイメージとして頭に入ってくるらしい。

おそらく誰かを見た時君のビジョンを見て全てを計算した上で君が港に来る計算だったので待ち構えていたのだろう。

君を敵にしたくないからね。」


「...?なんのことだか俺にはさっぱりと...俺はただシェフを目指してるだけの魔法が少し得意なお茶目な料理人のつもりなので。」


「はっはっはっ...神がなんの考えもなしに君にそんな魔力を与えるとでも?挙句君はアクアベリーに飛ばされそこで出会った青年に助けられここまで来ただろう。それが単なる偶然と思っているようだがその時点で仕組まれてきたことだと今認識を改め直すべきだな。」


頭が追いつかない。

どういうことだ。なぜウルドゥトは俺のことをこんなにも知っているのだ?

それもギフトの力なのか?

だとしたらいつからどこまでをどう認識できるんだ。

不気味にも程がある。


「そう怖がることはない。言ったろ?私にはセンセーションテリングがある。それにドールーマジックでも相手の深いところを見る魔術があるのだ。

入口で炊いておいたインセンス酷く甘く苦しく感じただろ?あれでも一応相手の素性を話しているうちに少しづつ吸い上げることができるような能力があるんだよ。

説明は難しいが一つ一つが君を知るための準備ということだ。」


「....。」


「はじめはアルスが君を連れてくる未来だけが見えていた。

それ以外は何も分からなかったので君を知るためにドールーマジックの準備をしておき話していく中でセンセーションテリングも使って少しづつ君のことを見て言ったのだよ。

正直神が転生者をこの世に落としたことは知っていたそれが君であると理解をしたのは君と話し始めてセンセーションテリングやドールーマジックが発動してからさ。話す理由は途中で見つけたと言ってもいい。

君にはとんでもない魔力が眠っている。

それだけじゃないストイックに物事を研究するその姿勢がとてつもなく魔術と相性がいいのだ。

我々ドールーのシャーマンですらも届かない領域へと行くことが叶ってしまうほど君はこの世界における重要人物さ。

アルスが仕切りにお前に勇者様と言ってるのが過去の映像として今入ってきたがそれは私たちの味方になれば私にとって君は敵対している観測者の賢者マーティンに対抗する最高の武器にもなるという意味で言っているのさ。」


...おいなんだよこれお気楽料理人の人生を選んだつもりだったのに...。


一体俺は何なんだ?何をさせられようとしている?何に巻き込まれている?

俺ばかりじゃなくマカフィーやモーティだってこの話を聞いて俯いてるんだぞ。


「さて、次はメガネの猫の少女よ君について話そうか。」


「....はい。」


「観測者ではないが君も役割を与えられ生まれてきたということが理解できているようだね。」


「....。」


「君には強い祝福のマナがあるね。信仰魔法を使う天才さ。だんだんと見えてきたがアルスが君たちをここに連れてきたことの理由が見えたきたよ。

信用がおけるなんて言っていたがそれは君たちに対する建前に過ぎないだろう。

こいつは君たちが思っている以上に冷酷で人を駒のように見ているからな。」


「ちょっ...ウルドゥトさん...勘弁してください。」


「ふん、腹を割って話さなければならない場面でお前を庇ってやれるほど私は親切ではないぞアルス。

話を続けようか。」


「はい...。」


「マカフィルーム君は...聖女の素質があるんだよ。分かっているだろう?かつて聖女の生まれ変わりと言われたマーシェット以上に聖女としてこの世に光が無くなった際導く役割を与えられている。違うかな?君もそれをよく理解していると思うが。」


「.....。」


マカフィーは俯いたまま何も答えない。


「そして最後にそこのサメのでかいの...モーティというのかそうか。

君にはアルスを助ける強い役割があるんだよ。

同時にダイゴに対しても鍵となり盾となり一生助けていくような関係になるだろう。まぁ...その他にも少しあるがこれは私の口から話せない決まりになっているのでここまでにしようか。」


誰もが言葉をつまらせているにも関わらずウルドゥトは話し続けた。


「君たちには君たちのロールを果たす役割がある。観測者である私たちはそれを導かなくてはならない。

しかし、アルス...なぜアベルを連れてこなかったんだ?アベルにはもっと話しておくべきことがあったはずだろう?」


「...アベちゃんは...アベルはその時が来るまで...どうか普通にしていてほしんです。俺の勝手なわがままかも知らんけど...俺がいるうちは俺が守ってやれるうちは俺があの子の人生を作ってあげたいんです。」


「はん!とことん二面性が強い男だな貴様は。まぁ私にとって必要な時に居てくれればそれでいい。それが世界のためなんだからな。」


...意味がわかんねーよ。

マカフィーにお前の人生はお前のものだと俺がそばにいてやると言ったのに。

こんな風にかき乱されて...役割を果たさなければ敵になるだって?

ふざけるな、ただでさえ志半ばで死に呼び戻された先では気楽に生きろと言われてここまでやってきたのにこんなのってあんまりじゃないか?


「...今はこの話を受け入れるのは難しいだろう。 少し脱線してしまったな。さて、本題に入ろうか。」


脱線!?今のが脱線だと?本題ってなんだよそんな気分じゃねーよ。


「さて先程言っていた奴らが動き出したというものについてだ。

賢者マーティン勢力となぜ敵対しているかに関しては今はあまり関係ないので説明は省かせてもらう。

動き出してしまった奴らというのは魔書の類のことだ。

ローズやルコニアには大量の禁書が貯蔵されておりその環境のせいで空間が歪んだりしていてその影響かそこに貯蔵や保管されていた危険な書物が魔書と化し悪さを働くことがあるのだが...今回動き出したのはおそらくツァイヴアースと呼ばれるレオの時代に使われた禁術に関する書物だろう。

本来ルコニアの禁書庫のさらに奥に封印される形で眠っていたはずだが...。

現在奴は自分とその仲間の書物たちの書庫を特別な空間に持っておりそれが現在はローズに繋がっているようなのだ。

そしておそらく君たちの仲間の一人の知識に取り憑かれてしまいやすい青年...ハルートというのかそいつが狙われており魔書に魅せられた彼を自分の手駒にしようと考えているのだろう。

どうやらハルートは過去に一度ツァイヴアースに触れようとしていたことも含め彼の圧倒的な知識欲と魔法への勉強熱心さ...それから心の弱さと自分の劣等感から来る激しい憂いそういうところがツァイヴァースに狙われる原因なのだろう。

詳しくは分からないが彼にも何かしらの役割があるようだ。」


「.....。」


「君たちは随分辛い顔をしているな。

さっきも言ったが私はその時が来たら役割を果たしてくれさえすればそれでいい。君たちには君たちの人生があるだろう?

もちろんこうして協力をして欲しい場面では協力を仰ぐがそれ以外では運命バランスを揺らがすほどのことをしない限りは自分の好きに生きるがいい。

ただし...役割が必要な時には果たしてもらうそれだけだ。

必要ならば報酬も払おう。アルスはそのために世界中から富を集めているのだから。」


....頭が追いつかない。そんなにポンポンと何でもハイそうですかと受け入れられるほど俺たちは器用な獣人じゃない。


「くそっ....ハルートが危ないのであればそもそも世界がどうとかは置いといて俺が助けねー理由はない。」


「ふん...君のそういう所潔くてとても良い。それでは続きを話すとしよう。

ツァイヴァースの狙いはおそらく死ぬこともできず長い間魔書として生きなければならないことから来る作り手への恨みや閉じ込められた寂しさ...獣人類への呪い...自分を知ろうとしてくれるものへの歪んだ愛情なんかもあるだろう。

こう言ったものが積み重なり世界中から魔書とかした書物を集め自分の空間に閉じ込め、知識を求めるものに与え自分のマナを流し込みいずれ自分と同化するほどの強い繋がりを植え付けることだと思う。

ハルートは最近図書館に通っているようだがあれは偶然ではない。

魔書に呼ばれていたのだ。おそらく近いうちに魔書の空間に閉じ込められてしまうだろうから戻ったらすぐにでも図書館に向かうべきだ。

もしもはや痕跡すら残っていないのならドールーマジックやセンセーションテリングを駆使し時間はかかるかもしれんが私が場所を探してみることにする。」


....皆でマリジャナルに行くんじゃなかったのかよ。

今は楽しい休日で今はちょっとした頼まれ事じゃなかったのかよ。

意味がわからない。


「...そうだひとつ伝えておくことがある。我々にはそれぞれ違う条件で守秘義務があり聞かれたことに全て答えられるわけではない...それはアカシックレコードにアクセス出来るものの制限とも言えるが特にアルスに関しては見えることも多い分かなり話せないことも多く守秘義務を守らなければばつが与えられる仕組みになっている。

罰が何なのかは私も詳しくは知らないが時間の概念すらない暗い虚無空間に一定時間閉じ込められるという。しかも現実では時間が経っていないことになるので本人にしか罰が与えられたかは分からないらしい。私でさえ禁忌に触れれば罰を受けるだろう。」


....そうですかもうどうでもいい。

俺の日常を返してくれよ。


「ダイゴくんごめんな....。」


アルス、なんでお前がそんな顔してんだよ。

今にも泣きそうじゃねぇかよ。

泣きてぇのは俺の方なんだよ。

モーティもマカフィーも俯いたまま顔が上がらないじゃん。


「今日はうちに泊まっていくがいい。ロイズに帰ったとて今は深夜...こちらでは昼間だが君たちも疲れているようだから少し休んでから帰りなさい。」


....とても魔法を使えそうな気分じゃなかったので仕方がなく俺達は不気味なドールーマジックハウスに泊まらせてもらうことにした。


体の疲れは大したこと無かったが酷く頭が重く気分が沈んでいて眠ってしまえば全て夢になりそうな気がした。


敷き詰められた藁の上に横たわるとすぐに眠気がやってきて俺は眠りの中に落ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。