↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一流料理人転生したら獣人でした  作者: みずいろ
ツァイヴァース編
PR
62/72

第62話「私の勇者様」

禁書庫へ向かう道すがらレビさんから不思議な言い伝えについての話を聞きました。


「知っていますか?ハルートさん。

実はこの禁書庫少しだけ変な噂があるんです。」


「変な噂?ですか。」


「はい、怖がらせるようなこと言いたくないんですけど...聞きます?」


「ふふっぜひ教えてください。」


「実はこの禁書庫...そのさらに奥に封印されし魔書達が自分たちの意思で作った魔書庫があるんですって...しかもその魔書庫にも意思があって...禁書庫に入った相応しいものを自分の魔書庫へと誘うとか誘わないとか...。」


...それはとても興味深い、ぜひ私を誘って欲しいですね。

「ほう、選ばれるのにはなにか条件があるのですか?」


「それが...分からないそうなんです。禁書庫を整理しているうちに知らない場所に連れていかれたと騒いだ人が居たんです。

でもその人はどう帰ってきたのかも覚えてないらしく...それが結構話題になって拡がってそんな噂が流れ出したみたいなんです。あははっ笑っちゃいますよね!」


「そんなことが...。」


私が神妙な面持ちをしていからでしょうか?

レビさんは私の顔を覗き込んで心配そうな目をしました。


「すみません、怖がらせるようなこと言ってしまって。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。私こそすみません、心配をおかけしてしまいましたね。

怖い...と言うよりはなんだか面白そうだなぁと思ってしまいまして想像の世界に旅に出しまっていました。」


「あはは、それなら良かったです。」


私は今この瞬間自分の胸が酷く高鳴るのを抑えられずにいました。

レビさんは禁書庫の前のセキュリティに着くと管理人に事情を説明し私を先に中に通しました。

(アクアベリーの図書館とは近所の度合いが違うので警備員がいます。警備員がゲートを守り鍵は図書館が管理するという完全に部外者に鍵が渡らない構図になっています。)


そしてその先の二重扉の前でレビさんがゲートをくぐるのを待ちました。


彼女はゲートをくぐるとこちらへ歩いてきてカードキーを読取らせ、鍵を差し込み更には自分の職員カードをスリットに通しスキャンさせました。


ここまでして初めて扉は開きます。

しかし...ここまで厳重なセキュリティを備えてもSSランクとはいえ一冒険者をここに通してしまって大丈夫なのでしょうか?

逆に言えば私がそこまで信頼を得ているということにもなるかもしれませんが彼女は少々人を疑うことを覚えた方が良いのかもしれません。


...彼女の汚職にならないように私は務めなければなりませんね。


「ハルートさんそれでは行きましょうか。」


「ええ。」


私は高揚し続ける気持ちを一旦押さえつけながらレビさんに着いていきました。


そこは薄暗く入ってきた扉から差し込む光が消えてしまうとは光の魔法が必要なほどでした。


しかし目を凝らすとぼんやりと何かが光っていました。

言霊がマナに反応して青白くぼんやりと光を放っているのでしょうか?

まだ本棚は見えてきませんが、本に込められた念というのはとてつもなく重たい上に禁書ともなると魔力を込めて書いたものまたは魔具を使われたり素材にマナが練り込まれているものも少なくはありません。


古代には様々な文明もあったと思いますので今この場で起きていることが私ですら説明がつかないのは容易なことです。

アクアベリーの方は手入れが疎かになっていたようですがこちらは定期的に清掃や手入れが入ることによって言霊がサビつかず呪いが生まれないように管理されているようです。


禁書庫は頻繁に整理をしなければ摩訶不思議な現象を引き起こしたり空間をねじ曲げたりなんてことが起こります。

現にアクアベリーの事件を解決した時もやはり手入れが怠われたことが原因でしたし。


ここに入れる資格のある方は司書さんや事務員さんや禁書だけでなく図書館の依頼の送受を管理する部署の方々がいらっしゃるようですが、その中でも禁書庫の全てのエリアに入れる方は限られているようですし人手が足りないということも理解ができます。

どうもレビさんは結構な権限を与えられているようで禁書庫の出入りだけでなくほぼ全てのエリアへの移動、依頼の管理なんかも出来るようです。

パッと見ただけでは一職員の軽やかなお嬢さんにしか見えません。

それだけ彼女が静かな努力家であることが伺えます。


「ハルートさん!本当に助かりました。」


「いえいえ、これくらいいつもお世話になってますから。」



さらに奥に進み彼女が手にしている地図を少しだけ拝見させてもらいここがエリアBということが分かりました。


先程歩いてきてのはエリアA、こちらには本棚はありませんが1~15の数字が割り振られており深度が床に示されていました。


今いるエリアBは天井に続くほどの高い本棚が乱立しておりこちらは床だけでなく本棚にもB-1-αなどと書かれており迷わないようになっています。


「今はどちらに向かわれていますか?」


「あッ、そうでしたね!今向かっているのはエリアJの10-Σです。」


うーん、空間が捻じ曲がっているのか特殊な魔術で作られた場所なのかは分かり兼ねますがこの中は図書館本体より広い造りです。

それをほぼ奥にあるJまで歩くのは現実的なのでしょうか?


「あ!安心してください。途中にワープエリアもありますし、ここでは時間の流れ方が違うので外よりは時間が経ちません!」


「なるほど。」


「驚かれますよね。あはは私も最初ここに来た時度肝を抜かれました。

本当はここは専門ではないのですがいつの間にか仕事をこなすうちにワープやら本棚の移動やらある程度の閲覧やらは権限を貰ってるので融通は効きます。疲れたら無理しないでくださいね。」


頼もしいですね。危うく本に魅せられて私の足がどっかに行かないように見張っておいて貰えると嬉しいのですが...なんて思いましたがそれは私が自分でどうにかしなくてはなりませんね。


そしてレビさんに連れられCエリアの奥にあるギミックに彼女がマナを通すと魔法陣のように描かれたそれは光を放ちその上に乗るとあっという間にIエリアの最深部にいました。


そこからJエリアの奥へさらに足を進めると問題はようやく私の目にも見えてきました。


J-10-Σの本棚はすっかりと空っぽになってしまっていました。


「...。」


「ここにあった本が何かの拍子で発動した魔法で散り散りにJエリア内に散ってしまった様なのです。それを今からお貸しするタブレットを元にこの棚に戻していただきたくて。

ここにある本には一つ一つ魔力があるのと魔力の種類が微妙に違うのでその全てを記録しているので場所はわかるのですがなにせ散り散りになってしまいここにあるべき...つまりここに施された封印および魔力安定の魔法が意味を成すように戻さないともっと大変なことなってしまうのです。」


「分かりました。注意するべきことなどありますか?」


「はい...これだけは守って欲しいのが表紙を開けずにタブレットと照合してJ-10-Σにあるべきものだと言うことがわかればすぐに戻していただけると助かります。何せ禁書扱いされているものですから1冊1冊閲覧には許可がいるのです。読んでしまえば魅了されたりとかもありますし...本当にこちらからお願いしておいて差し出がましいとは思うのですが取扱には細心の注意を払っていただけると助かります。」


「承知いたしました。」


「本当に何から何まですみません。それではこちらがタブレットです。散り散りになったものもJエリアからは出られないように制限をかけてあるので本を持ったままJのエリアから離れないようにお願いします。警報なっちゃうので。」


...残念ですがここに入れたことだけでも感謝しましょう。

報酬もいただいていますし今はお仕事をこなしていくことを優先したいと考えました。


ひとまずレビさんからタブレット受け取った私はJ-1の本棚からタブレットに表示された地図と本棚の間違った場所にある本がありますという表示を元にそれらの本をタブレットで照合しながら一つ一つあるべき本棚に戻していきました。


その中で...少しだけ気になる本を見つけてしまいました。

気になる...と言うよりは気になることを語りかけてくると言うべきなのでしょうか?


それは手に取った時私の脳内にこう語りかけました。


「ねぇ...君知りたいんでしょ?好きなんでしょ?知ることが好きなんでしょ?」


しばらくは無視をしていましたがほかの本を探している間にもずっとそれは話しかけてきました。


「僕の作った場所においで...君が知りたいことぜーんぶあるよ。おいでおいで。」


気がつくと私はその本の表紙に手をかけていました。


「ハルートさん!」

レビさんの声が聞こえた気がしましたが私にはもうその本しか見えていませんでした。


気がつくと私は見知らぬ書庫のような場所にいました。

おかしいですね、先程までのJエリアとは違いここは明るく...。


「はっ...まさかこれが噂で言われていた場所なのでしょうか?」


私が頭を抱えているとひとつの本が本棚から飛び出しました。

それは表紙がとてもゴツゴツとしていて背の部分にはトゲがありました。

本は宙に浮き開くとページをぱらぱらさせて私に語りかけます。


「ようこそ!僕のところに!うふふっ君はとても強欲なんだね。会えて嬉しいよ!」


「あなたは?」


「僕は封印された古代魔術が記されたツァイヴアースが記された書物だよ!時を遡る勇者様の魔法なんだ。」


ツァイ...ヴァース!?

勇者レオが時を遡るために使ったとされる...伝記が廃部になる原因ともされた...私の持っているレプリカでは破かれてしまった部分に記された禁止魔法ですか...?


まさかそんな...どうして。

私がルコニア大学を退学になり故郷のルコストから追い出されても良い覚悟で追っていた....かつての仲間を失った魔法が今目の前に??


「さぁ!僕を読むんだ。君はずっと僕に会いたかったんだよね?

あっ、ルコニアに封印されていた僕がどうしてここにいるのかって顔だね。」


「やはり...ルコニアにはなかったのですね。」


「あはは!そうだよ!アカシックレコードに触れたような顔をしているね。そうだよ。君は今世界の真理を知る権利を得た。さぁ...君は僕を選ぶ?それとも君の勇者様?」


...私は震えが止まりませんでした。

それはこの本が私を知り尽くしていることでもこの本がここにあることでもありません...。

いえ、正確にはどちらでもあります。

ただ最後に彼が私に言った私の勇者様...ダイゴを選ぶか自分を選ぶか?という一言に強い憤りを感じました。

憤り...というより恐怖が混じった武者震いにも近い...いえもっと複雑でドロドロとした劣情混じりにゴミのような感情です。



「あははは!可愛いね君は。そんなにも美しいのに酷く顔を歪ませているよ。いいねいいね獣人は感情豊かだ。レオが時を変える前のデインの辛そうな顔あははは!今でも覚えている。救いたい...でも手放さなければ手に入らない。僕はね、昔から意志をも持っていた。レオが生きていた時代には既に古代魔術として封印されていたからね。外に出たくて作ったやつが憎くて...僕を使って欲しくて。古代魔術の中でもいちばんの禁忌とされていたからね。レオが来るまでの何千年もこうして誰かを待っていたんだよ。でも今回は800年にもいかないうちに君が来た。君が知りたいことは僕が教えてあげる僕を使わなくても君はもう僕のものだよ。愛してるよハルート。」


「....。」


私はもう何も言えずに震えるしかできません。


「この大陸にいる厄介な観測者がいない...観測外にいる今がチャンスだったんだよ。ずーっと君を呼びかけていた。その呼びかけに違うものが答えてここに入っちゃうこともあったけどね。僕が欲しいのは君だったから...そいつらは返したよ。えらいでしょ!?観測者のやつに気が付かれたら厄介だもう君のことも手に入れられたしローズの禁書庫からも空間を切り離してしまおうかなぁ。」


「私を返してください...私はダイゴ...私を救ってくれた勇者様の元へ帰ります。」


私は震える声で彼にそう言いました。


「あっははは!誰がそんなことしてあげると思う?君はもう僕のもの。僕はこれでもう寂しくてつまらない日々とはおさらばさ。

君の無限にある魔法の知識を確認できるんだよ?君にとってもここは天国さ。

ここに居れば君は歳を取らない!お腹も減らない!催したりもしない。僕と永遠に一緒にいられるんだよ。」


「...。」


「今空間を切り離した。これで意図的に本をバラバラにして手伝わせていた司書の女もキミの勇者様も...厄介なこの世界の観測者も...ここを特定できない。君は僕のもの。ずーっと一緒だよ。僕のマナをずっとあげるからね。かわいいかわいいハルート。」


「さっきからあなたの言っていることはめちゃくちゃです。そもそも観測者とはなんなのですか?」



「あー!君でも気がついてなかったのか!いいよ!教えてあげる!そいつらは世界に何人かいるんだ!すごく特別なギフトを上から与えて産まれてくる役目を背負った哀れな獣人さ。この世界でいちばんお時な知識箱にアクセスできる権利を与えられているし、能力はそいつらによってまちまちだけど少し先に未来が見えたり相手の素性が見えたりするんだ。

その上厄介なのは...禁忌とされている時を遡る魔法...つまり僕と同じ力を与えられてるんだ。

そいつらが窮地に陥った時それは自動で発動する。

ただしそれは1度だけ...まぁ要は死んだらやり直したいところから1度だけやり直せる能力を持ってるってわけ。

そいつらは他の奴ら素性を予測したり見れたりするから観測するために色んな手口で色んな奴らと仲良くなり世界の運命バランスが崩れないよう見ているんだ。いわば勇者のようなものさ。」



「くっ...。」


あろう子とか話の最中にも関わらず私は抗うのが難しいほどの強い眠気に襲われてしまいました。



「あっ効いてきたね。僕のマナが流れ込んだからね。副作用で慣れるまでは体が疲れて眠くなるよ。まずはゆーっくりおやすみ。起きたら僕と沢山お話しようね。」


「やめっ...。」

やめなさい!そういう間もなく私の意識はそこで途切れ...ハルート、おやすみ愛してるよ。

その一言だけが遠くの方で響いていました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。