第61話 「ハルートinワンダーライブラリー」
ここからは少しだけハルート編です。
私は....今私自身にうんざりしています。
ハルート・アレテミリスの知識に対する激しい執着...それはもはや狂気と呼んで差し支えないでしょう。
私の人生ではそれが加減ができず後悔してきたことが何度ともなくありました。
何度となく呆れられ生まれた村からは追放されるような事態になってしまいました。
でも...私には今仲間がいます。
こんな私をそのまま受け入れてくれる大切な仲間たちが。
今はそんな仲間たちの役に立ちたい。
私のこの知識が知識への果てしない欲望が、
役に立つことがあるのであれば私はなんだってします。
今日もダイゴ達とは別行動で街の奥にある図書館にやって来ました。
最初は何気なく歴史や風土の勉強がより詳しくなれれば彼の役に立てるのでは?という気持ちで。
図書館の入口をくぐり冒険者カードを提示し、受付を済ませると私はいつも通り彼女が待つSランクエリアへと向かいました。
「おはようございます。レビさん。」
「ハルートさん!こんな朝早くから今日も来てくれたのですね。今日はどんな資料や学書...または物語をお探しなので?」
「ふふっ。そうですね。」
「あ!そうだ昨日読まれていた資料の続きが...実は禁書認定のものでして...お見せできるのがあそこまでになってしまうのですが...。」
「あらあらそうでしたか、大丈夫ですよ。」
「本当にすみません確認してからお渡しするべきでした。」
「本当に気にしないでください。気になれば断片的な情報でもほかの資料からも合わせて読取予想出来ると思うので。」
レビさんはコロコロして可愛らしい人です。
ブロンドの美しい髪をポニーテールに縛っていつでも笑顔で私を迎えてくれるライオン獣人の女性です。
...彼女からは私への好意を感じています。
それは...とても私にとって都合の良いこと...。
情報を得るためには多少手段を強引にせざるおえない時があるからです。
彼女が傷つかないよう細心の注意をはらいながら私は...情報を得るために少しづつ打ち解けています。
こんな騙すようなことをして傷つけたくないなどと宙ぶらりんな気持ちを持つ私は罰を受けるべき獣人かもしれませんね。
「ハルートさんはお優しいですね。あっ!これ良かったら今日のお昼にでも召し上がってください。お弁当作りすぎてしまったので...。」
レビさんが差し出したそれは丁寧に美しいハンカチーフで包まれたお弁当箱でした。
まだ暖かい...私のために私が来る時間に合わせて作ってくれたのですね。
「うわぁ...とても嬉しいです。女性からの手料理なんて私には無縁ですからねあはは。」
照れた感じを装って同時に彼女の料理スキルへの興味が着きません。
なぜならダイゴの役に立つかもしれないから。
「ふふっあんまり自信ないんですけど。
よかったら私もお昼に中庭のスペースでお弁当食べるので一緒に食べてくれませんか??あっ...ご迷惑だったら全然大丈夫ですよ。」
「ええぜひそうしましょうか。今日はお天気もいいですし暖かくて気持ちよさそうですね。」
「あっ、ありがとうございます!あっあっそれより!すみません長いことお呼び止めしてしまって何か御用があったらいつでも声掛けてくださいね。」
「助かります。それではまたお昼か分からないことがあったらお声掛けしますね。」
「お待ちしてます。」
私は昨日読んでいた資料の続きを知るために図書館の閲覧できる書物で関係ありそうなものを片っ端から集め読み漁り断片的な情報を繋ぎ合わせて禁書認定されてしまって読めなくなってしまったところを予測していきました。
思ったより難しいことではないのですが著者や出版している地域のさなのでしょうか若干相違があり事実関係の因果が結びつけにくいように思えます。
そんなことをしているうちにお昼を知らせる町の時計台の鐘が鳴りました。
私はレビさんの所へ戻り彼女と共に中庭へとやって来ました。
「んー!風邪が気持ちいい!」
無邪気な笑顔で風になびく髪をさらりと掻き上げる彼女。
彼女はシトラスとイチジクのような甘く爽やかでどこか寂しい乙女の香りを纏っていました。
ふわりと鼻腔をくすぐるそれらはダイゴ辺りにはとても刺さりそうですね。ふふっ。
「レビさん、今日はお誘いいただいてありがとうございます。」
「いえいえいえいえ!そんなんそんな!むしろお邪魔してしまってませんか?毎日なにか熱心にとても勉強されてますのに。」
「いえ、こういう気分転換とても励みになりますよ。」
「そ、それなら良かった。あっ、いまお弁当暖め直しますね。」
レビさんは持ち運び式の魔法陣を取り出し4つ折りに畳まれたそれを開き魔法陣の中心に二つのお弁当箱を置きました。
ダイゴが見たらわーわーと喜びそうなこれは魔法が普及しているこの世界では当たり前のものです。
熱を伝える魔法陣を描かれていてその中に自動で熱を調節するプログラが組まれているので食べ物を温めるために作られた魔具。
初歩的なものですが基本的なマナが不足しているものでもいつでも魔法に触れることができる素晴らしい品です。
ダイゴ...今は何をしている頃でしょうか?
おっといけない今はレビさんとお話して仲良くならなくてはなりませんね。
「レビさんはなぜ司書さんになられたんですか?」
「ふふっ、すごくありがちで笑っちゃうかも...でも私本が大好きなんです。」
「それはとても素晴らしい。」
「そうですかね??でも、本を読んでいると私は何にでもなれるんだって思うんです。学書を読んでいる時は生徒に物語を読んでいるときはその世界の住人に...主人公にってよりは...主人公を客観的に眺める第三者としてその世界に没入している感覚があるんです。うふふ...おかしいでしょ?」
「いえ!とても...とてもよくわかります。私も本を読んでいる時に同じことを思うんです。」
「えー!ほんとですか!ハルートさんみたいなものすごく賢い方にも分かってもらえるなんて嬉しいです。
あっ!温まったみたいですよ。」
そう言ってレビさんは弁当箱の蓋を開けました。
そこにはカラフルに彩りのある美しく繊細な一つ一つをきちんと無視せずに丁寧に作ったことがわかる料理たちが並べられていました。
「うわぁ...とても美しい。」
「うふふっ...。」
目を輝かせる私を見てレビさんは嬉しそうでした。
そこから味を確かめるように一つ一つ丁寧にいただきました。
そしてその一つ一つにきちんと感想を述べレビさんに感謝を伝えていきました。
味はそれなり...というか美味しいのですがやはりダイゴの作る理論の整ったものには及びません。
しかし私への思いが込められているのを深く感じました。
私はそこに感動と感謝と尊敬を込めてレビさんへ感謝を述べました。
「ご馳走様でした。」
「いいえ、こんなので良かったらいつでも作るのでいつでも来てくださいね。」
それから他愛もない話をしてレビさんのお昼休憩が終わるまでを過ごしました。
彼女の生い立ちも少しだけ聞くことが出来たので今後彼女の心をもっと開いてもらうのに役に立つかもしれません。
「それでは私は資料探しに戻りますね。」
「あっ、あの、ハルートさん....。
ほんと不躾なお願いになるのですが.....。
午後に禁書庫に少しだけ行く用事というか...片付けがあるのですが正式に依頼として私から手配するので一緒に入ってみませんか?」
....おっとこれは思わぬ展開です。
「本来でしたら部外者の方をお連れする訳には行かないのですが...ちょっと他部署で予想外のアクシデントがありまして人の手がそちらに行ってしまっているんです。ハルートさんなら冒険者としてのランクもありますしこちらからの依頼ということであればお連れすること自体は問題ないかと思うのですが...お勉強で忙しいのにこんなことをお願いしてしまってすみません。」
「....。いえ、構いませんよ、レビさんのお力になれるのであれば。」
「あぁー!助かります。本当にありがとうございます。どんな形でお返ししたら良いでしょうか...。」
「お返しだなんて...気になさらないでください。」
「あぁなんてお優しいんだろう...ほんと!ありがとうございます。ギルドカードだけお貸しいただければこちらで手続きしておくのでこちらでお待ちいただけますか??
手続きが住んだらすぐ戻るのですぐ向かう感じになると思うのですが...。」
「ええ、構いません。たまには体を動かしてみるのもアリかもしれませんしね。ふふっ。」
ロイズの図書館は魔学都ルコニアに負けないほどの本たちが収められています。
そこには...ルコニアが禁書として絶対封印を貫く古代魔術に関する魔法やそれに準ずる呪書なんかも...。
片付けの間もしチャンスがあれば...。
私は段々と自分が知識の悪魔に取り憑かれていくのを感じていました。
「それではカードお借りしますね。すぐ戻りますのでしばしお待ちください。」
レビさんはそう言うとどこかへ走って行きました。
私は高鳴る鼓動をなんとか押さえつけソワソワと浮き足立つ感情に蓋をしようとあまり興味のない類いの本を読み始めました。
ですが、全くもって内容は頭に入ってきません。
やがてレビさんが笑顔で戻ってきました。
「お待たせしました。ハルートさんそれではよろしくお願いします。」
レビさんは禁書庫に出入りするための魔学設備のカードキーと認証用の合わせ鍵を首からぶら下げて私にそう言いました。




