第60話「ドールー教」
「って...調子に乗ったな。」
解毒の魔法をかけるのも忘れて騒いだ夜の次の日俺は頭痛を魔法で緩和させながら水を飲んだ。
「ダイゴ、おはようございます。」
「あぁ、ハルートおはよ。よく寝れたかい?」
「ええ。ダイゴよかったらこれマナを調律するエーテルです。飲んでくださいね。」
俺が表情を歪めていたからなのかハルートは紫色をした瓶を俺に手渡した。
「せんきゅ!ハルートは今日も図書館に行くの?」
「はい、面白い文献を見つけてしまいましてね。」
「おぉ〜後で聞かせてくれ。」
「ぜひに!図書館では司書の方にとても良くしていただいて話も弾んでとても仲良くさせていただいてます。
上手く行けば禁書庫にも入れてもらえたりするかもしれませんねっフフッ。」
ハルートは整いすぎた顔面を少し緩めて上品に笑うと髪の毛をかきあげた。
「あははまた踏み込みすぎてとんでもないことにならんような〜。」
「ええ、それに関しては痛いほど身に染みてますのであはは。」
下に降りるとシャルとモーティが床で寝ていた。
ソファーの方ではルカとマカフィーが丸くなってる。
「うわっ酒くせ!つーかひでえ散らかり様だな。」
飲み散らかした酒やら食べカスやらゴミなんかが床やらテーブルやらに散らばっている。
「アルスがみたらめんどくさいこと言われそうだから片しておくか。すまん!ハルート手伝って。」
「ええ、いいですよ。」
俺とハルートでゴミを片しテーブルをふきあげ徹底的に辺りを綺麗にした後酔っぱらい共を叩き起した。
「うっ!きもちわり。」
「シャルートイレで吐けよー。ハルート手伝ってやって。」
顔を真っ青にするシャルをハルートに解放してもらい、寝起きで抱えている酒瓶を再び飲み始めるモーティから酒をとりあげ手をグーにして顔をゴシゴシ毛繕いのような動きをするマカフィーに癒された。
「ダイゴ!あたし二日酔いみたい。ごめんね、回復魔法かけて。信仰魔法はお酒入ってると上手く扱えないんだ。」
マカフィーは申し訳なさそうにそう言った。
「ったく!しかたねーな。ルカがもし二日酔いならお前が治してやれよ。あと便所からシャルが戻ってきたらそっちもな。」
「うん、わかったよ。」
未だに気持ちよさそうにして眠るルカを他所に俺はマカフィーに解毒の魔法を施してやった。
「ん〜すっきり!冷蔵庫のエーテル貰ったら魔法は問題なさそう!ありがとねっ!ダイゴ。」
ん〜かわいい、くるしゅうない。
「おう。」
「みんな〜おはよーさん!」
俺らがそんなことをしているとアルスも降りてきた。
「なんや昨日は盛り上がっとったみたいやな。あはは。おっ!よう片付いとる!ダイゴ君か?ありがとうな!」
「お前が大事にしてるもん汚しちまったらわりぃからな。こいつらは俺のツレだし。」
「あはは〜かっちょええなぁ!俺のことも守ってな!勇者様。」
「あ〜茶化すな!つーかなんなんだその勇者様ってんは。」
「あはは〜そこ聞く?まぁ〜!後で話したるよ。そうや今日マカフィーちゃんとシャルちゃんに手伝ってもらいたいことがあんねん。いけるか?」
「うん!あたしは大丈夫だよ!シャルはもう少しかかると思うけど。」
「ん〜それならダイゴ君でもええわ。」
「ちょい!ダイゴ君でええわってなんだ!」
「あははは!ちょ〜っぴり厄介な場所に行くさかい着いてきて欲しいんよ。」
「...はぁ。」
もうなんかいろいろ突っ込むのにも疲れた。
でええわとか以前に休みが全然休みじゃない...まぁ言っても仕方ないからいいけど。
「で今回は何?」
「ん〜とな、あっモーティ!君も来て欲しい。」
「ん!いいですよ!ダイゴ!スマンが俺の酒を抜いてくれるか?酒くせぇんじゃアルスさんの仕事の邪魔になるし。」
「あぁ。」
そしてアルスの転移札でやってきた先は洞窟の入口!?
「どこなんだ?ここは。」
「ん〜まぁ詳しくはあんま話されへんのやけどちょっと厄介な取引先が住んでんねん。」
「なんだぁ!もったいぶりやがって。」
「条約があってな。あんま話されへんのよ。君たち今日は俺のボディーガード件お供ってことになっとるからくれぐれもよろしゅうに。」
なんだそりゃ...なんも話して貰えないままことが進んですごく嫌な感じだ。
「洞窟を越えるんに魔物が沢山おるから頼むで俺も戦うけどあんまし泥んこやと怒られてまうからな。」
「この洞窟の先に取引先があるのならどうしてそこに直接転移しないんだ?」
「それも色々あるんよ。まぁこれ終わったら話せることはきちんと話すから堪忍な。」
「あ〜はいはい。」
「そや今回の前金渡しとくわ。」
アルスはそう言うと懐から大金の入った袋を俺たちそれぞれに渡した。
「すまんけど確認したらすぐしまって!そろそろ中入るで。」
中身は30万Jだった。
前金にしてはなかなかの金額ではある。
「しまったか?それじゃ行くで。」
俺たちはモーティを先頭にマカフィーとアルスを挟み俺を最後尾に隊列を組み狭い洞窟の入口を一列になって進んだ。
しばらく進むと少し広いホールに出た。
そこは魔物だらけでぶっ倒しながらさらに奥へと進む。
シャイマを球体にして明かりにしていたが途中からは至る所に松明が置かれており灯りは要らない程だった。
「....?」
壁には見たこともないような模様や文字が書かれていてそれがやたら不気味だった。
現れる敵もどこか不思議なマナを帯びたヤツらばかりで不気味なオーラを纏いこちらのマナを吸って伸びたり縮んだりしていた。
「う!物理攻撃は当たらない!ダイゴ!マカフィー!頼んだぜ。」
モーティの魔法と物理を合わせた攻撃は魔法の方は威力がそう強くなく相殺され物理の体術はすり抜けてしまい効果がなかった。
マカフィーは信仰魔法で光で出来た剣を何本も空中に作り出しそれで攻撃をしていた。
信仰魔法はかなり効くようでマカフィーの魔法が当たると敵は掻き消えた。
どうやら禍々しいものに近いらしいので俺もなるべく光の魔法を使い不気味なそれらを振り払うようにして倒して行った。
「なんなんだこいつらは。」
「エビルスピリッツだよ。主に東南エリアのドールー教の魔法を使う人達の文化圏にいる魔物!」
「ドールー?」
「あぁ!そうなんか古代魔術ともまたちがう独特の文化の魔法!呪いの類みたいな...?」
あー...インディアン的な?ブードゥーみたいな? こっちにもあるんだ。
「なんかおっかいないなぁ。」
「そう!そうなの!恨みを買うと昔から何されるかわからないと言い伝えられてるから誰ともかかわらないで独立した文化圏に住んでるんだよ。」
...おかしいな。神はそんな知識俺に与えてない。
...今考えるべきではないかもしれんがドールーという神が居て別圏内だったり?
まぁいいや今は進もう。
さらに奥に進むにつれ敵はさらに不気味になった。
元は獣人であったろうゾンビやそれらが溶けた塊のような敵だったりでかい目玉だったり...。
「はぁ...きんも!ルフリージャス!」
炎で燃やしたり氷で凍らせたりなるべく形が残らないように倒していく。
さらに奥に進んでいくとやがてようやく光が見えてきた。
洞窟を抜けた先には不思議な雰囲気の森があった。
「...?」
昼なのか夜のなのかも分からないほど薄暗くて不気味だ。
じっとりとした空気と生ぬるい風が俺の体毛をすり抜けて不愉快な気分になる。
「...ここは魔境って呼ばれてる森や。特殊な結界で集落見えんくなってるさかい...儀式するで。」
集落!?儀式!?なんじゃそりゃ。
いまいちピンと来ない俺を他所にアルスはその儀式の用意を進めていく。
ストックからカエルの魔物の干物や鹿の魔物の肉を取り出し見たことの無い魔法陣を描くとその上に細かく並べ、変な匂いのインセンスを焚きその上にカッターナイフで切りつけて出した自分の血を垂らす。
「シュトルケアルガオル...エンゲアルズドジアルヴァ...。」
古代魔術ともまた違うを不可思議な呪文を唱える始めるとそれらはは赤黒い光と緑の不気味な煙を出し始めた。
しばらくすると辺りが大きく歪み出し思わず不愉快すぎて目を強く瞑る。
...不愉快な感覚が収まったくらいのタイミングで恐る恐る目を開けるとそこにはさっきまでの鬱蒼としていた木々や草は横にはけ大きな沼を囲むようにして気持ちの悪い形の建物があった。
続く。




