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一流料理人転生したら獣人でした  作者: みずいろ
マリジャナル編
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第59話 「業がありまっせ」

そんなことをしているうちに料理が運ばれてきた。

「お待たせいたしました。まずはこちら今朝採りのリーフとトマトをつかったサラダでございます。ドレッシングはこちらに二種類ございますのでお好きな方をお使いください。」


シルバーのミルクジャグに入ったドレッシングは色や香り的におそらくレモン系と焦がしニンニクベースの二種類だ。


アベルが一緒に運ばれてきた取り皿にサラダを三人分に分けて綺麗に盛り付けてくれた。


俺は両方の味が知りたったので片方づつほんの少しの量をかけてはかかった所を食べて混ざらないよう最新の注意を払いながら食べてみることにした。


サニーレタス、リーフレタス、ロメインレタス、水菜、ミニトマトとパプリカの入ったサラダは彩りが美しい。

まずはレモンの方をかけてることにした。

緑がかった濁りのある黄色のそれは爽やか且つ気品のある香りをかける前から放つ。

それは、一度野菜の上にかけるとカラフルな野菜たちをより輝かせるキラメキを放っているようにも見える。

満遍なく野菜をフォークで取り口へと運ぶ。

まず1番初めにやってきたのは強いレモンピールと果肉の香り、それから強い酸味と苦味。

それらと野菜の瑞々しさや歯ごたえが合わさり口のなかいっぱい拡がり洪水を巻き起こす。

邪魔にならない程度のオリーブオイルの上品な香りも合わさり口の奥がギュッとなる美味さ。


めいっぱいレモンドレッシングを楽しんだあとは焦がしニンニクの方をかけてみる。

こちらは油分感強め。

深く赤黒い茶色はサラダを一気にガッツリ系の料理のように見せてくる。

こちらも満遍なく野菜をフォークで取り口へと運ぶ。

マー油ならではの焦がした香味野菜たちのぎゅっと凝縮された旨みとつよい香りに合わさる容赦のない醤油ベースの塩味と芳醇な大豆由来の香り。

濃厚かつクリーミーなのに油っぽすぎない味付け...フライドガーリックも入っていて野菜を噛み締めるとマー油の旨みだけでなくそれに漬けられたカリッとしたフライドガーリックがさらに強いニンニクの香りを漂わせ噛めば噛むほど米が食いたくなる味わい。


「美味い!」

俺が思わず口にするとアルスの奴はガッツポーズをとった。

なんか腹立つなぁ。


一緒に運ばれてきたウィスキーのレモネード割もここで口にしてみる。


先程同様レモンの爽やか且つ爛々とした弾ける酸味におそらく若干のはちみつがほんと少しの重厚感を出しウィスキーのスモーキーかつキレや深みのある味わいにコントラストを与えてくる。

ウィスキー自体はおそらくスコッチに近い味わいで熟成感強めの味わい。


「くっ!すげえ美味い。」


アルスは俺が美味い美味い言うのがよほど面白いようでにんまりした顔でこちらを眺めている。

腹立つから突っ込まないけど。


「ルースープでございます。」

次に運ばれてきたスープはシトル...カボチャのスープだ。

こちらは見た目も味も船のレストラン食べたものに近い。

...なるほどみんなが言っていたのはこういうことだったのね。

比較的庶民的なレストランでもこんなに美味いものが食えるのならあの船でみんなが微妙な顔をしていたのにもだいぶ納得だ。


やがてメインディッシュが俺たちのテーブルへと運ばれた。


こちらも以前船で食べたものによく似た海鮮とアルフォンバードのアヒージョ。

それからもう一品、こちらは芽キャベツを使ったアンチョビソースか?のソテーと豚系魔物のポルケッタがひとつの皿に美しく盛り付けられている。

アヒージョはどうもシェア前提らしくデカめのスキレットに入ってキラキラ宝石みたいに輝いてて付け合せのバゲットからほかほかの煙が上がっている。


アヒージョ...これは船で食ったのほぼ同じ味...つまりすげー美味いってこと。

ますますあの時のみんなの言葉の意味が俺に突き刺さる。

芽キャベツは楽しくなるような食感と花のような香り甘さの後にアンチョビのしょっぱさや濃厚な磯の香り...それから僅かな苦味がやってきてたまらなく酒が進む。

鷹の爪のエキスが染み込み辛さもちょうどよく米も欲しくなってくる。

同じさらに乗っているポルケッタはこれまた甘い油にローズマリーの香り、適度な塩味と噛めば噛むほど強くなる旨みが魅力的でこちらも大変酒泥棒である。


そしてウィスキーのレモネード割...これがまたこれらの料理に合う合う。

爽やかすぎないのにクドくないこの絶妙なバランスと喉越しが次をもっと欲してしまう。


かぁ〜こりゃもしかしてデザートはジェラートってんじゃないでしょうね?

最高なんて言葉ではお支払いしきれないほどの業がありまっせ。


俺の期待を裏切ることなく運ばれてきたのは洋梨のジェラート....!?

そこはレモンじゃないんだ!

薄い緑がかった美しいシャーベットが可愛らしい器に入って運ばれてきた。


目の前に置かれてからずっと気品のある香水をも思わせる爽やかなのに甘美な香り...。

あぁ幸せ。越に浸っていて忘れていたが、

そうか!レモネードウィスキーだから洋梨なのね。


スプーンにとった瞬間あぁこれは丁寧に作られているとわかる。

程よい粘度...鉄越しにすらわかるシャーベット感漂う胸をくすぐる香りと優しい色合い。


小さく掬ったそれを俺は口に運ぶ。

その瞬間、まるで電撃が走るような感覚に襲われた。


サッパリという言葉だけでそれを表すのは口惜しいほどの清涼感、それから華やかで踊るような強い洋梨の香りとどこか残る果肉感とザラっとした舌触り。

あまりにも洋梨そのものが強く主役だと主張してくるのにその中にもしっかり生クリームのコクやほんの少しだけのスパイスやバニラエッセンスの香り...それらが舌の上で複雑に絡み合ってなんとまぁ...美味い。


少し薄くなってしまったレモネードウィスキーも甘さを少し中和させるような味わいに変わってこのジェラートにぴったり合う。


悔しいけどアルスのセンスは間違いない。

舌自体じゃなくて俺にこれを食わせるという部分だ。

すっかりこのレストランには骨抜きにされて立ち上がるのも惜しいと窓の外にふと目をやった。


すると街の中心の噴水で幻想的なショーがタイミングよく始まった。

これ...俺が女なならまたウィーンだ。

よかったアルスと同じ性別で。


ため息が出るほど甘美な気分で見るそれは本当に美しくて水の一本一本がまるで踊っているかのように見える。

水に日差しが当たる位置から見てるからなのか小さな虹のようなプリズムめいた煌めきが噴水の近辺をキラキラ光らせている。


アベルは見慣れてるからなのか俺が夢中になっている窓の外を一瞬だけ見てあとはずっとアルスと俺を交互に見えていた。


アルスはニヤニヤしながらずっとこっちを見ていて気分が下がりそうだったので目を合わせないようにした。


食べ終わって戻ってもまだ昼過ぎだ次は何をしようかな。

ぼんやりと色んなところに感動や意識を置きながら俺はそんなことを考えていた。


食事を終え、噴水もショーを終え通常運転に戻った俺たちは店を出ると一旦商会に戻ることになった...俺のフープルで。


「いや〜助かったわぁ!送ってもろて。」


「お前も大陸ひとつくらい分は転移できんだろ?」


「君みたいに詠唱ひとつってわけに行かんしなぁ。そりゃ簡単にやってのけてしまう君に頼んだ方が早いっちゅーもんやろ!?」


「俺を便利な道具扱いすんなよ!」


「あははは!すまんすまん!まぁお昼美味かったやろ!?それの料金ちゅーことにでもしといてや。」


そう言われると全く何も返せないじゃないか、ずりー男だぜ。


そのあとどうせ暇だろと言われ仕方なく荷物の運び出しやら転移やら買い出しやら...付き合わされる羽目になった。


まぁ実際暇してたからいいんだけどどこか釈然としない。


夜になってみんながホールに集まってきたが俺は働き疲れて伸びていた。


「おぉ!ダイゴ!今日は楽しめたか?」


シャルがニコッと笑いながら俺に聞く。


「それがさぁ!聞いてくれよぉ!アルスの使いっ走りさせられて結局休めなかったんだぁ。」


「あはは!そりゃ災難だったなぁ。あれ?アベルとアルスは?」


「なんか商談があるからとどっか行ったよ。一日中ずっと働いてるけどやになんないのかね?」


「あははそういう性分なんだろ!好きにさせておけよ。」


「あ、シャル!悪いけど俺に一杯付き合えよ。ハルートが戻ってこねーから飲む相手いなくてつまんねーんだ、アルスの酒棚からパクってくる何がいい?」


「んー!今日はワインの気分。」


「おっけー!任せろ!どんな味がいい?」


「渋くて辛いのが欲しいな。ツマミにモーティがくれたカラスミがあるんだ。」


「おおおお!それを先に教えてくれ!そのカラスミモーティが作ったのか?」


「いやいやマリジャナルにいるレストラン仲間から送られてきたんだと!」


「うっひょ!羨ましい俺もカラスミ送ってくれる友達欲しい。」


「あははは!じゃあこれ、キッチンで適当にツマミにしてもらえないか?」


シャルは俺にカラスミが包まれた包装紙を手渡した。


「まかせろ!今夜はパーティーだぜ!」

俺たちの会話を聞いていたルカマカフィーも喜んでいる。


こうして俺たちのカラスミパーティーは幕を開いた。


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