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一流料理人転生したら獣人でした  作者: みずいろ
マリジャナル編
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第58話「俺、アルス今君の後ろにおんねん」

「いや〜!こんなに遊んでもまだ昼!向こうは夜だったけどこっちならまだ店もやってて最高だな〜!」


モーティは陽気にそう言った。


「シャルはこの後どうする?よかったらジムに行かないか?」


「おぉ!いいね!ジム終わったらまた飲みに行こうぜ!」


二人は意気投合していた。


「ハルートお前は?」

俺がハルートに聞く。


「そうですね、街の図書館で調べたいことがあるので行こうかなと思います。」


「ん〜今日は読書の気分じゃないな。アベルは?」


「僕は特に何もないのでお仕事に戻ろうかと思います。」


「そうかぁ!ルカはマカフィと買い物に出かけたし俺ってばもしかして暇人?」


「ダイゴ!おめーも俺たちと来いよ!」

シャルは笑顔で俺を誘うが汗を流したばかりなのに汗をかきに行くのは嫌だ。


「すまねー!ジムはまた今度な!今温泉入ってきたんに汗かきたくねーよ!」


「んーそうかぁ!モーティ行こうぜ。」


「おう!じゃあダイゴ!また後でな!」


「おう!じゃあな!!」

そんな感じでみんなを見送りひとりぼっちになった俺。

せっかくなら街に買い物に出かけてみるか。


ロイズの街はアクアベリーほどでは無いが観光客も多い。

レンガ造りの可愛らしいオレンジや白の街並みを歩いていてると街の広場の噴水が目に入る。

結構大きくて周りを黒い柵で囲われ三時間くらいに一回ショーのような水の出方をするらしい。


せっかくなら時間を合わせて後で見てみるか。


「ふぁ〜あ!」

伸びながら欠伸をすると暖かい日差しが心地よくて目に付いたベンチに座りたい気分になった。

近くの露店でコーヒーを買って噴水とその奥に見える空や建物をぼ〜っと見ていた。


うわ!こんなにぼーっとしたの久しぶりな気がする。

船ではやること無くてずーっとぼーっとしてたけど人間時代の28年プラスこの新しい人生の中で相対的に見れば雀の涙ほどの時間しか許されてこなかった時間だ。


「ふぇ〜きもちいいねぇ。」

などとため息を着くと俺のスマホが鳴った。

...やな予感、アルスじゃありませんように。


恐る恐る見るとディスプレイにはアルスの名前が表示されていた。

ズコーッ!うざすぎ!俺の事どっかで見てますか?


しょうがないのでいやいや出るとアルスの胡散臭い声が聞こえた。


「やぁやぁやぁ!ダイゴくん。」


「はい、なんですか。要件だけ早く教えろ。」


「ご機嫌ななめやなぁ!あははは!いやなお昼一緒にどうか思て電話したねん。アベちゃん戻ってきたおかげで早めに午前の仕事終わったさかい!」


「あ、そう。で?どこに行けばいいわけ?」


「それがな!今君の後ろにおんねん!」


思わず振り返るとニヤニヤしたアルスがこっちを見ていた!

コワッ!メリーさんかお前は!


「わっ!クソびっくりした!」


「あひゃひゃ!バッチリぼーっとした姿も見とったで!」


やっぱり見てたのか!つーかいるんなら声かけろよ!わざわざ電話してくるところがうざったいわ。


「奢りだろうな?」

溜息をつきながら電話を切り、睨みつけるとアルスはますます爆笑した。


「アハハハハ!もちろんや!さあ!何食いたい?」


「...んーそうだな。せっかくならこの街の郷土料理が食える場所に行こう。」


「おぉ!ええで!アベちゃん!電話しといてぇ〜。」

よく見たらアベルもアルスの後ろにいた。

アベルはアルスに言われた通り店に電話をかけ始めた。


はぁ...苦労するなぁ。

つーか俺もなんかアルスのペースにどんどん乗せられてる感じすげぇ嫌。


「ダイゴ君もあんな気の抜けた顔をするんやなぁ!あははは!」


「それ以上言うと手が出そうだからやめた方がいいよ。」


「あはは!それはすまんすまん。おっ!アベちゃん予約できたか?」


「はい、今から30分後に来てくださいとの事でした。」


「ありがとう!アベル!」


「いえ、お易い御用ですよ。ダイゴさんにロイズを好きになってもらいたいですし!」


アベルは可愛いねぇ〜!

アルスの憎らしさが際立つなぁ。


それから俺たちは歩いてロイジニアンレストランへと向かった。

アルスが街を歩けばキャーキャーと黄色い声援を向けられたり、色んな人から挨拶をされていたり。

...まったくこういう所がすげぇなと思うんだげと悔しいから絶対口にはしない。


30分ほど歩くと目的の店へと到着した。


少しだけ高台になっていて街が見下ろせる景色の良さそうなエリアだ。


「うんちょうどいい時間やね。それじゃ入ろか。」

アルスがノックをするとタヌキ獣人のギャルソンが出てきた。


「おぉ、アルスさんいらっしゃい。今日はお客さん連れですか?」


「まぁそんな所や!」


「それじゃせっかくなので窓側の席を用意しますね。」


そうして案内されたのがおそらくこの店で一番景色の良さそうな窓際の席。

ピンク色のテーブルクロスにテラコッタの可愛らしい木の椅子が大きな窓からの光に照らされている。

静かで落ち着いた感じだがカジュアル寄り雰囲気だ。


「適当にすわり。」

アルスは俺を一番初めに座らせ適当にと言いつつも上座へ座らせた。

四人がけの四角いテーブルで窓横の向かい合った席の上座側に俺、その向かいにアルス、その横にアベルという感じで座った。


「メニューでございます。」


「ありがとう。」

メニューを受け取り目を通すとコースではなく単品注文だということがわかる。

アペリティフとかも特に聞かれないしやはりだいぶカジュアルな店らしい。

ギャルソンはメニューを俺たちに渡すと近くにはおらず裏へと下がった。


「アルス。お前が決めてくれ。」

本来連れてきてもらっているなら自分で選ぶべきではあるのだがここはおそらくアルスの取引先の店だ。

それならアルスが自信があるもの推したいものを食べてみるのもありかもと思った。


「ええよん!アベちゃんはいつものんでええか?」


「はい!」


よく見たらテーブルには小さいハンドベルがある。

おぉ!呼ぶタイプなんだ。


アルスがそのハンドベルを手に取り小さく横に揺らすとシャラシャラと可愛い音が奏でられた。


「お待たせいたしました。」

直ぐにさっきのギャルソンが戻ってきた。


「ウィスキーのボトルあるやろ?あれを用意してもらえるか?割り物はここの名物のレモネードな、あとは俺とアベちゃんがいつものんで、ここにいるダイゴ君にも俺と同じんを持ってきて。」


「畏まりました。」


それだけ言い残すと彼は再び裏へと下がる。


「ここはな、主にレモン農家と俺がコネクションしたねん。まぁそれだけとちゃうねんけど。」

アルスは水を飲みながら俺の方を見て笑う。

俺も同じく水を口に含んでみる。

お!レモン水だな...レモングラスではなく輪切りのレモンでおそらく香りと味をつけている。レモングラスだとしすこし香りがくどいくらいになるはずだがこれはうっすらと遠くに感じる程度だしあのスースーする感じもなくて飲みやすい。

酸味も心地よい程度でえぐみや苦味もなく

水の甘みもきちんと感じられる。


「レモネードは売りなのか?」


「まぁそうやね!後はこの辺の伝統的な家庭料理を丁寧に作ってるんが売りなんよ。味は保証するで。」


「俺にそんなこと言っていいのか?」


「あははは!まあそう言わんと楽しんでみてや。」


今度は窓の外に注目すると遠すぎない距離で街を見渡せるということが分かった。

特に噴水のショータイムにはここから良く見えそうでそこも期待大だ。

街の奥の方には海も見えるし景観はまるで高級店並みだと思う。


「ところで今ってどう考えても昼時だけど他の客は?」


「あはは!一応この店、完全予約制なんよ。30分待ったんは俺らの他にいたお客さんが居て食べる途中かなんかやったんやろ?

そのお客さんが帰るまでの目安の時間が30分くらいやったんか思うで。ちなみに俺はここの予約システムも作ったさかい予約がある程度落ち着いてる日は把握しとるんやで。今日は午後のアフターヌーンティーに予約が集中してるみたいやったからアベちゃんに電話してもらってこの時間は貸しきれるように手配してもらったんやで。当日予約も空いてれば受けられるさかい満席にしてこの時間は受けられんようにしたんや。」


こいつのこの徹底ぶりが当たり前すぎて忘れてたけど俺を昼に誘う前からおそらく全てを計算に入れていくつか候補を考えていたのだろうけど一体どこまで先読みをして動いてんだろ。

もうめんどくさいから突っ込まないけど。

料理が来るまで俺は窓の外で小さくなった獣人たちが生活感漂わせているのを眺めていた。

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