第47話「そんなことするくらいなら皆殺しにするわ」
立食パーティは食堂で行われる。
割とラフな格好でいいとの事で...アベルはショーパンに大きめのTシャツ...割と攻めてるな。
胸とかは分からないようにしてるみたいだけど見る人が見たら女の子にも見える...。
おそらくバレないところギリギリを攻めているのだろうけど心配だ。
ハルートは切ってもなお長い髪を後ろで大きく縛りワイシャツと黒いロングパンツ。
俺はいつものみすぼらしい服を着て会場へと赴いた。
俺もちんこくらい舐める覚悟を決める必要があるかもと思ったが死んでも嫌なのでそんなことをするくらいなら皆殺しにしようと心に決めた。
「アベルめっちゃいいの匂いする。」
「えぇ、今日はユリとネロリ、イランイランの甘美なやつをつけました。しかもくどくならないように髪に塗ったり少し汗をかいて体温で調節してます。」
...あーこわいよ〜。さらっとこういうことするのこわいこわい。
「ダイゴさんはその格好になにか意味が?」
「あぁ俺の場合舐められやすい格好をしてきた。心の隙間に入りやすいからな。」
「なるほど...。」
ハルートは紳士的で笑顔を振りまきさり気ない会話をしていくことでその知識量を生かし嘘があるかどうかを見抜く作戦らしい。
最初に副団長の挨拶があり乾杯をみんなでするとパーティは始まった。
仮面舞踏会さながらの身分を隠したパーティ。
本当は料理を食って味を知りたいがそれどころでは無いので今日は抑えることにした。
ちなみに怪しくない人ともさりげなく会話をし談笑し上手いことやったあと怪しいヤツをつついたりふたりで話せるような環境に持ってったりした。
ここで生きてくるのが獣種による食べ物の好み。
これだけで生まれが何となくどんな地域であるのか特定出来る。
そうなった時事前に持っている情報と照らし合わせ整合性のないことや敢えて吐かれた嘘なんかも軽く見抜ける。
クロージングのテクニックってのは商談なんかも少しだけやってたし割と見についてる。
まさかこんなことで役に立つとは1ミクロンも考えたこと無かったけど。
ハルートとアベルはバラバラに動いてくれていたが中間報告ということで一度真ん中に集まった。
「僕たち今のところは怪しまれてないみたいです。今夜1人の部屋で飲み直すことを約束したのでピロートークで何か聞き出せるかやってみます。それからもう1人少し抜ける約束をしたのでこっちは恐らくすぐ済みますのでその場で何か聞き出せるかやってみます。」
「私の方は今ところ何も掴めていませんが、盗聴やハッキングの魔法を得意としていると思われる人物は特定しました。その人物を突き詰めていきます。」
「俺の方は生まれを偽ってた。突き詰めてみる。」
怪しいヤツは残り四人...。
どいつもシロの可能性もあるが逆も然り。
まどちらにしてもハルートが攻めているやつはおそらく黒。
「このじゃがいも近くの村で取れたものらしいよ。マリーっていう品種なんだって。君ってすごく食べ物に詳しいけどマリーについては知ってる?」
俺が再び話しているリスト入りの男とはとりあえず食べ物のことで話題を繋いでる。
ちなみにマリーはキタアカリのような甘みの強い味わいで、今出てきているローストビーフの付け合せのマッシュポテトのことを指している。
「あぁ、甘みが強くてでんぷんが多いから粘り気もあってなおかつクリーミーな味わいのじゃがいもですね。」
「おーそうそう!俺趣味で料理をするんだ。」
お、それは違う意味で興味深い。
イカンイカン...。
「おー。それは良いですね。専門はあるんですか?」
「んー、もっぱらメルディアンにはまってるなぁ〜。ほらさっきも言ったすけ俺東大陸出身だし馴染み深いものと言ったらメルディアンかマリジャナンだべ?」
仲良くなったら急に新潟なまりみたいになった。しかもわざとらし!
「ですよね〜。俺もマルジニア近辺出身なのでわかりますよ。」
「あんれ!マルジニアと言ったらマルジニアの料理らて〜。おら割とマルジニアに遊びに行っとるが!最高だっけ。」
何を偽って新潟弁を喋ってる?
確か...新潟なまりっぽいのはこの世界だと...グレイスの北地だったような。
確かに東大陸エリアではあるが...。
「ですよねー!マル酒最高ッス!」
「ほんほんだ〜。あっ...最高だら〜。」
言い直したな...。
「...先輩もしかしてタッカンブル生まれだったりしますか?俺大好きなんすよ温泉。」
「あ〜親があっちの方なんだわ〜。俺はグレイスの北の方の生まれだすけ。」
...何目的の嘘なの?
今のところ掴めない。
「じゃあタッカンブルには行くこともあるんですか?」
俺のさり気ない質問に先輩は慌てた様子で強い言葉で返す。
「ね!けしてあんなとこいかね!」
おや...違和感があるな。何故タッカンブルを嫌う?
ちなみにこの人ドラゴン獣人...つまりルコニア周辺に多いと言われている獣種。
もちろんそれ以外にも沢山いるのだけどあくまで傾向の話。
そしてこの人の食べ物の好みはじゃがいもや白菜...それから人参それからヴァルドブルのローストビーフ。
どれもあっち側で多く取れたり食べられてるものだ。
そこから約二時間、こういう人は酔わせるのが正しいと思った俺はひたすら飲ませてみた。
しかしザルすぎて中々酔わない。
さすが西大陸出身...。
ちなみに西大陸北部生まれの奴らはやたら酒に強いらしい。
これでほぼQEDのはずなのだが本人からわけを聞かないと話にならない。
でも...ひとつ思ったのはこんなにも嘘をつくのが下手くそな人...はたして悪い人なのか?
「先輩...俺酔っちまいましたよ。」
「ありま!そいだら大変だぐ...。オラッチの部屋にすげえ聖水ある...あっ。」
今のもタッカンブルなまり。
ていうかすげえ聖水ってなんだ?怪しいな。
「ほんろれすかぁ。それぜひもらいたいれす。」
うまいっしょ酔ったフリ。これババアにも有効だよ。
「おう、じゃあみんなに声掛けて俺の部屋で飲み直すか。」
おや。訛りが消えた。俺が酔っ払ったと思って誤魔化さなくていいと思ったんだな。 馬鹿なヤツめ。
ちなみに俺はそこまで酒に強い訳ではない。のでしばらくの間解毒魔法が延々かかるプログラムを発動するように来る前に仕掛けてきた。
なので酒自体は結構飲んでる。内蔵に謝りたい気分だ。
先輩の寮室は綺麗に整理されていて無駄なものがない。
開けっ放しで丸見えのリネン室になっているクローゼットの中も整頓されていてその下にある荷物類も整えられている。
机の上には教本の数々。真面目なのがよく分かるな。
一人部屋を与えてもらえるクラスにそもそもいる時点で上からの評価はあるらしい。
「ささ、ベッドの上でいいぞ。座れ。出してやるからな。」
そう言って小さな冷蔵庫から怪しげな瓶に入った水を取り出し封を切るとコルクを抜き俺に手渡した。
あ、直なんだね。
魔力探知したが割と普通の聖水でエーテルが少し混じってるくらい...おっ...とこれはポーションも混ざってるなしかも...医薬部外品どころかちょっぴり犯罪的な寮の回復薬入りだ。
まぁ毒ではないし飲むか。
俺がそれを飲み干してみると先輩は嬉しそうにした。
「すごいべ?楽になったろ?だすけ!これはすげえ聖水なんだっけ!」
酔いが冷めたと想定して口調を戻してきたな。
「先輩...これどこで手に入れましたか?」
「おぉ!聞いてくれるかあ!俺の村のな広報が作ったんだよ!すごいだろ!これを教団で売ればすげー人達が救われるはずなんだ。」
口調が標準語寄りになった。もう訳わかんなくなってるね?恐らく。
「おぉ、それは凄い。」
「お前も売るの手伝ってくれないか?まだ認可は降りてないけど必ずとるからって広報が言ってたから!しかもすごく安く売るんだよ!」
...これは法律的に若干アウトだな。
アルスが真っ先にツツきたがりそうだな。
確かに効能は凄そうだし万人に設けそうな味に調節されてる。
しかし...おそらく飲み続ければ蓄積され分解が追いつかいない量の回復薬...しかも劇薬よりのやつが入ってるな。
エリクサーみたいなもんだと思うけどエリクサーは認可が降りてて販売許可もあるし1日の使用量や販売できる本数が決められている。
つまり...これがマーシェット商会だけだなく他で流通し副作用が出た時...通ってきた流通先だけでなく販売元の先輩たちが叩かれる。
おそらくそこで販売協定を結びたいと言っている広報とやらは手を離して責任を押し付けるつもりがあるのかも。
「...よく聞いてください。先輩のことが俺気に入りました。だからこそ俺のことも正直に話します。
まず先輩、これが強く副作用が出るかもしれないというリスクが孕んでいるということは分かっていますか?」
「あぁ...。」
「俺はマーシェット商会から先入に来ました。先輩にはこんなことで捕まって欲しくありません。」
「...。捕まると決まったわけじゃないだろ?俺が作った訳じゃないんだ。」
少し慌てた様子でそう答える先輩に俺は続けて話した。
「いえ、これが流通すれば必ず健康被害が出ます。そしたら大元を辿って先輩や販売元の広報が叩かれます。そのとき広報が先輩を守ってくれますか?先輩が叩かれれば所属している騎士団はおろか教団ごと叩かれます。そうなった時教団は先輩をタダで済ませるとは思いません。今なら...全て正直に話せば間に合います。どうか...そうしましょう。」
「...だめなんだ。嘘ついてごめん。
俺...本当はお前の言う通り、タッカンブルの出身なんだよ。でもな...こっちに聖騎士になりたくて来た時...途中で生き倒れたんだよ。そんな時に救ってくれたのが今の広報がいる村...バルデントなんだ。広報は村の人間じゃなかったけど...俺よりあとから村に来たのに村のことをさも考えているかのようにみせてすっかり人気者になった。そこから村を大きくしたいからと広報になり...。今度は俺を揺さぶったんだ。
お前はこの村に救われただろ?この村で働かないで聖騎士になるなんて恩を仇で返すのか!?ってな。村の人間の怒りも一緒に煽ってみんなで俺を責めてきたんだ。それで...必ずこの村の役に立つことをなしてみせるから...一度聖騎士になって有名になってかえってそこで村の宣伝をするから...と無理やり出てきたんだよ。だから...俺は村に恩を返すためにここで一生懸命サーまで上り詰めた。それで村の人たちも広報も認めてくれて...この水を売って村を大きくする資金にしてこいと言われたんだ。
おそらく広報の目的は大儲け...その先にあるのは責任を押し付けられた俺や村の破滅...。
放っておけばじゃがいもしか特産のない村は滅んじまうかもしれないし...俺がやるしかないんだ。」
「よし、よく言ってくれた。聞いてたかい?アルス。」
俺は機転をきかせアルスに電話を繋いでおいた。
アルスの奴はいつもの調子いい声で男に対して話始めた。




