第45話 「気分は外交潜入捜査官」
次の日の朝目を覚まし、念の為魔力探知でもう一度盗聴魔法の履歴を探ったが進展はそんなになかった。
その後、定刻に礼拝をし、室内にある水汲み場で顔を洗っているとマカフィーからメールが入った。
「ダイゴ、父上が帰ってきた。謁見の許可を貰ったからここまで来て。」
添付された画像を見ると昨日みた翡翠の転移石がある場所であることがわかった。
...あ〜やだな。責任重いしマジで行きたくない。
でもこれも仲間たちの為、頑張るしかない。
指定された場所へ三人で向かった。
現地にはシャルとマカフィーがもう来ていた。
「おはよ。二人とも。」
「おはよ、皆。それじゃあ...行くよ。」
マカフィーは指輪をはめなにか呪文を唱えた。
すると石は柔らかい緑の光を放ちそれが強くなる。
光が収まるとさっきのロイヤルブルーの絨毯のとは違う赤い絨毯の上にいた。
「おはよう。子供らよ。」
俺が声のするほうを向くとそこには赤と白のズケットを被り白いローブを身にまとったマカフィによく似た男がたっていた。
俺は咄嗟に跪くとハルートたちも後に続いた。
「おはようございます。法皇様。」
「話は聞いているよ。面を上げたまえ。」
「はっ。」
俺は言われた通り俯いた顔を上に向けた。
「マカフィルームからある程度は聞かされていたが...ダイゴと言ったかな?君の魔力は素晴らしいな。」
...なんのはなし?
「はぁ...。」
「おっとすまないね。君たちと謁見をする前にマカフィールームと話をした。
私は...この息子...もとい娘に随分な無理を強いていたようだと反省したよ。」
このおっさん話せばわかる系?
「ただね...そう簡単にこの子を中にする訳には行かない。それが私たちの掟だからね。
もし...どうしても教団を出たいというのなら通常の形を取るのであれば、君たち...マカフィルームも含めここからは永久に追放という形になる。それくらいの覚悟を持っているのであればこれ以上追求しても仕方の無いことだ。この子魔力が人々の役に立っていることには何ら変わりないと考えた。
だがね...それはあくまで私の父親としての意見だ。
教団というのはご存知の通り私の裁量だけでは測りかねるところがあるのだ。
...教団全体にそれを問うならばおそらく破門では済まされず処刑なんてことにもなり兼ねんと思うのだ。」
緊張と圧といきなり色んな情報を与えられたことでかなり混乱していたが少し話が見えてきた。
「それで...だ。君たちも知っての通りこの教団の一部の物が良くない働きをしている。私も前から知ってはいたが....迂闊に動けば組織全体に混乱が及ぶ。そうなれば救いを本当に求めている人にも当然悪影響が出ると考えていた。」
「おっしゃる通りだと思います。」
「聞けば君たちはマーシェット商会とも繋がりがあるそうだね。
そこをうまく使いたい。
しかし、ことが大きくなれば戦争や国が動くことにもなりかねない為、アルスどのとやらも慎重になっているのかと思う。
つまり君たちはマーシェット商会の使者だということにしたいのだ。
私の方で私の管理下にあるものには君たちのことを全て伝え君たちがもう少しこの教会内で動きやすいように手配するつもりだ。」
「俺たちに引き続き内部調査をしろと?」
「その通りだ。」
「何をどう調べれば良いのですか?」
「まずは聖騎士団のメンバーリストを渡そう。大体の目星は着いているのだが、この中で未だ悪事を働いているのか曖昧なものがいる。それを調べてもらいたい。」
「それならばもう既にアルスが手配し怪しいと思われる者にはマーカーがついた騎士団のリストを持っています。」
「おぉそれは準備が良いな。後で見せてもらおう。
すまん、本題からズレたな。
つまり...君たちが教団の悪事を暴き私は知らなかった体を貫く。
マカフィルームやシャルロッテはこの事実に酷く胸を痛め世界中の本当に困っている人らを自らの手で救いに赴く役割を見つけたということにする。
ここでは大衆に二人の救いの旅は一時的なものだと説明する。
後継者に関しては正直...マカフィルームが逃げ出した時点で私の中で次の目星はつけてある。
それに私はまだこの先長く生きるだろう。
曖昧にしておいて私が死ねば一時的な後継者がいるという形にしておけば時が流れていくうちその一時的な後継者が本物の後継者になっていくであろうと思う人物を私は見つけたのだ。」
厳しい雰囲気なのに優しく笑っている彼はいつの間にか父親の顔になっていた。
「すみません、ひとつよろしいですか?」
「あぁ良いぞ。」
「あなたはシャルやマカフィーを使者を使って連れ戻そうとしていたと聞きました。それはなぜですか?」
「あっはっはっ...いきなりここで会ったお前たちには信じられんだろうが私は普段こんなにも穏やかに喋るようなタイプではないのだ。団員たちの前では教団が全てだと厳しい姿勢を見せている。
それに着いてくるもの達もやはりそれなりに厳しいものたちばかりなのだ。
彼らの前では私もそう接するしかないのだ。つまりは父親としての今の私と法王としての私は別にいるということさ。」
「...出過ぎたことを言ってすみません。」
「良い。実はマカフィルームに対してもこの今のような態度を取るのは初めてなのだ。小さな頃から恐ろしい私を演じて押さえつけてきたからな。
もう十分だろうと思ったのだ。」
「父上...。」
「本当は娘として可愛がりたくて時々それが出てしまうこともあってな。すまなかったなマカフィルーム。」
「....。」
「君たちが最初に出会ったシスター達には君たちの事は伝えておいた。教会に留まるために私がそう言いなさいと言うように伝えたということにしておいた。
あの子らは私の手の及ぶ範囲の者たちだ。安心して良いぞ。」
「....法皇様、ひとつお伝えしたいことがあって。俺たちが泊まらせていただいてる部屋あそこには盗聴の魔法が仕掛けられています。それにはなにか意図があるのでしょうか?対策をしたので盗耳されることはないのですがあまり気分の良いものではありません。」
「...そうか、それに関しては私も分からぬ、すまん。」
「...魔法の履歴を調べれば人物は特定できるはずですが昨日の時点で使用者の履歴が権限付きで隠されていていました。
もしかすると俺やここいるハルートが盗聴できないようにしたというのも相手は察している可能性もあります。
今朝再度掴めるものがないのか見直した時に感じたのは最初に教会いた方々の魔力の気配ではなかったので恐らくシスター様が俺たちを部屋に案内するまでの間にやったものと思われます。
そうすると俺たちが教会に入ったところから部屋に行くまでのやり取りをどこかで監視していたと考えるのが普通だと思いました。」
「ふうむ。」
事態はよりめんどくせーことになり心から巻き込まれたくないという気持ちでいっぱいなのにもう既に事件の渦の中心に俺たちも入り込んでいるため抜けようがないという事実で胃がキリキリする。
「そんなわけでそれも含めた上で教えていただきたいのですが、法王様、これから俺たちは具体的に調査していくのがよろしいでしょうか?」
「少し待って欲しい。
こちらが動けることも今考えている。
そうだな...恐らくだが...騎士団の反乱分子...交錯の魔法が得意なことを考えるにお前たちの部屋の盗聴の犯人はその中にいそうだな...。
布教チームに関しては全体的に一旦動きを止める方向で行く。
今後の動きや徹底した金銭の流れを作る体制を結びつけ国とも連携し法律を帰る動きをしていく。
各地教会に私の直接の管理下にあるもの達を配置し救いを求める者は教会へ行くという流れを作り出し不正がないかを炙り出そう。
問題は騎士の方...聖騎士として有るまじきことをしている連中は吊るさねばならぬ...。
お、そうだ、すまぬがお前たち新人騎士見習いとして王国から派遣されている邸で先入をしてくれるか?それならば今怪しんでお前たちを見ている連中も準備期間だったのかと納得するかもしれん。
アルスどのが書き出したリスト一人一人と接触を測ってみて欲しい。
シャルロッテではその...私情が入りそうなのでな...。」
「わかりました。情報を探ればいいのですか?」
「いや、証拠や情報はある程度揃っている。私が知りたいのは情状酌量の余地があるのかということだ。騎士団は我が教団においても大事な戦力...もちろん基本的には追放または...場合によって死刑になるが、一部脅されたり流されてしまったものもおるかもしれん。その場合は罪を償い再び騎士団として尽くす気があるものは考えようと思う。」
「承知しました。まずは彼らと仲良くなり素性を知っていくということですね。明らかに黒い者はそのまま泳がせておくのですか?」
「ふぅむ。それに関してはもう少しづつは動いている。明らかに黒のものはアルスどのが作成したリストとこちらの情報を照らし合わせて精査した上で尋問を行う。」
「では尋問が始まってから潜入した方が良さそうですね。」
「うむ、その通りだ。それまでにそなたらには騎士のイロハをある程度学んでもらいたい。座学だけで構わぬのでいくつか講習を受けて欲しい。」
「わかりました。」
「色々とすまぬな。我々の事情に付き合わせてしまって。」
「いえ、二人のためですから。」
「ほっほっ...良いの仲間を持ったのう、娘よ。」
法王のその言葉にマカフィーは照れた顔をした。
「騎士団長...つまりシャルロッテの父...とその近辺の側近は今日あたり秘密裏に捉えていく。情報が漏れてしまえば色々ごちゃごちゃしてしまうので、間違いなく黒い者だけを同時に捕捉していく。これには教会の技術を使うのでそなたらの正体がバレることは無い。
ちなみに複雑だが、マーシェット商会の回し者の体を装いながら騎士団に潜入する王国騎士を演じてもらわねばならぬ...本当の正体は絶対に明かしてはならぬぞ。」
俺は、マーシェット商会の回し者の体を装って王国から派遣された新人騎士を演じる転生者の料理人ダイゴという自分でも頭がパンクしそうな肩書きを手に入れた。
「わかりました。」
「君たちの未来とこの教団の存続がかかっている。くれぐれも頼んだよ。」
プレッシャー与えてこないでよ!
今宿題やろうと思ったのに!って気持ちになるから!
俺、言われなくてもやるタイプなんで...。
とはいえ今回のことは相当考えることも気をつけること多い。
大丈夫なのだろうか。
その後、解散になり座学が始まるまでの間つかの間の自由時間を貰った。
マカフィーやシャルは自分たちでも調べられるだけ調べると寮に戻って行った。
「すまないな。こんな大変なことになって。特にアベル本当に巻き込んでごめん。」
「大丈夫ですよ。騎士の転がし方なら僕は心得てますので情報なら上手く掴めるかと。」
にっこりと不敵に笑って髪をかき上げるアベル。
何それ!ヤラシイ!
「ふふっ...必要あれば体も使います。でも安心してくださいね。虜にさえさせてしまえば僕の体のことバレても喋らないように操るのでふふっ...元娼年の腕の見せどころですね。」
...逞しっ!えろ!逞しい!てか、エロッ!
煩悩退散!
「あまり無理はするなよ?」
「はい。せっかく新人の騎士としてデビューするなら指導係は手玉にとりたいな〜。府ふっ。」
あーこわいこわい何も聞かなかったことにしよぉっと。
大人しくて生娘風なのかと思ったらとんでもないな。
ハルートは呑気に髪を梳かしてるけど大丈夫?状況わかってる?
「ハルート?」
「あぁ、すみません。騎士としてデビューするなら少し髪を短くしないといけないと思いまして...。」
ハルートの髪は今は背中位の長さで美しく銀色に輝いてる。
「吟遊詩人に必要な月の魔力を染み込ませているので切ってしまうと私はさらに弱くなりますが役にてると良いのですが...。」
「シャルだって長い髪してんだしそこまで切らなくても大丈夫だろ?」
「そうだと良いのですが...。」
明日から座学を二日ほど行いすぐに潜入ということになる。
いよいよスパイを通り越して外交潜入捜査官になった気分だ。
あーあ、神様俺ってこういうことするためにこの世界に生まれたのかい?
これで料理人として何も成せず死んだら今度こそ許さないからなー!




