第43話「潜入捜査inグレイス教団」
ここはグレイス教団入口、天気は猛吹雪、大荒れだ。
「ルフレ!」
ひとまず、顔が痛いので全員に衣の魔法をかけた。
馬鹿でかい門を潜り敷地内へ足を進めるのとなんだかここからでも分かる重い雰囲気がある。
寺や神社で感じる厳かな雰囲気に近いものかもしれない。
重たい石の扉を開くとそこは教会になっていて祈っている人達が何人かと神父やシスターが何人かいた。
「シャルロッテ!?マカフィルーム!?」
そこに居た面々たちは彼女らの顔を見るなり驚いた顔をしていた。
「遅くなってすみません。ただいま戻りました。父上にお会いしたいのですが今はどちらに?」
「すみません。法皇様はただ今外出中でして、明日にはお戻りになるご予定です。騎士団の方へも挨拶に行かれますか?」
「えぇ...気は重いですが。捉えられたりしないでしょうか?」
「大丈夫ですよ。お戻りになられない場合は強制帰還させると言っていましたがお戻りになられたのですから。」
「はい...。」
「それより先程より一緒にいるそちらの方々は?」
話しかけてきたシスターは俺たちの方をじろりと見る。
「あぁ申し遅れました。私、マカフィルームさんとシャルロッテさんの所属するパーティのパーティーリーダーのダイゴマツカゼと申します。横にいるのは吟遊詩人のハルート、商人のアベルにございます。」
「まぁ礼儀正しい方。よかったですわ。今日までありがとうございました。そしてよく連れて戻ってくださりましたね。」
「シスターベル!折り入ってお願いがあるのですが彼らを僕達の部屋に泊めても良いですか?ほんの数日です。」
マカフィーは恐る恐る、黒い猫獣人の目を閉じたまま喋る優しげな雰囲気のように見えるへシスターへ話しかけた。
「なりません。教会への信仰がある方なら救いの手を差し伸べますが、そうでない方は危険な可能性もあります。
グレイス教の教えでは信じるものが救われるのです。
それにあなたは高位のビショップなのですよ。迂闊に眠るところを他人にみせてはいけません。
そうですね...もし、その方々がグレイス教を信仰しているという証があるのでしたらお祈りをして教会の二階にあるベッドを使いなさい。」
こちらにはなるべく円滑にアルスの依頼を進めるために嘘をつく必要があるな。
俺はすぐさま跪く。
「シスター...私たちはグレイス神様の教えに感銘を受けたものたちにございます。証拠になるものはございませんが、マカフィルームさんの素晴らしい教えに興味を持ちアクアベリーから遠路はるばるやって参りました。信じていただけないのは当然かと存じますがこれからは教会へ趣き神への祈りや感謝を捧げたいと願います。」
「...良いでしょう。信じる子供たちは救われます。ただしあなた達にもし不穏な動きがあった場合は永久にこのグレイス教団から追放します。良いですね?
とうぜんマカフィルームやシャルロッテへも二度と会えなくなると思っていただいて構いません。」
「わかりました。誓います。さ、お前らも跪いて。」
俺は返事した後に小声でアベルとハルートへ囁いた。
要領がいい二人は頷くとすぐに跪いて手を胸に当てた。
シャルはポカーンとしていたしマカフィーは心配そうに俺を見ていた。
大丈夫、きっと上手くいく。
そう言い聞かせるように心の中で呟いて祭壇の近くへ行くと祈りを捧げた。
その後すぐ、二階に上がり客間へと案内された。
緊張したが何とかやり過ごせた。
大部屋を提案されたが、マカフィーが上手く誤魔化してくれて四人部屋になった。
マカフィーとシャルとは一旦別れることになったがスマホで連絡取り合う約束をした。
俺とハルート男二人、女の子一人という形になってしまい、アベルには悪いけど。
しばらく我慢するか、ダメなら商会までフープルで送り時差はあるがグレイスが朝になったら迎えに行くと提案したがしばらくなら我慢してくれるとの事だった。
「...ダイゴさん、まずいんです。よく考えたら。」
魔法カバンから荷物を出し整理していると、アベルが困った表情をして俺たちに話しかけてくる。
「どうしたんだ?」
「ぼく...実は両性具有なんです。」
ん?なんて?
とハテナな顔をしているとハルートがやんわり解説してくれた。
「両性具有というのは...生殖機能がどちらも備わっている方です。そういう方はグレイス教では差別...というか間引きの...対象でしてそのなんというか...。」
アルスゥーーーー!?なんてこったい!
知っててアベルをここに連れていけって言ったの?ふざけんなよ。
となるとアベルをここに置くのは危険すぎる...。
え?待ってそれ以前に両方あるってどゆこと?ついてるってこと??え?え?
「おーい、ダイゴー?戻ってきてくださいー。」
「あ、すまんすまん。ごめん今絶対聞くことじゃないけど両方あるって外見の話?」
「あ...はい。外もそうなのですが子宮や卵巣、精巣なんかもあるんです。大体の両性具有種はどっちが優勢になります。全く五分五分の方はかなり珍しいかも。
僕の場合は...認めたくないですが男性性はかなり弱くほぼ射精とかはできません。ほぼ女性機能が優勢してます。それでも普通の女性よりは生理の日数は期間が空きますし全くもって中途半端な体なんです。」
「なるほどね...。ていうか両性具有は敵視してんのにマカフィーには男性になることを強要したりシャルがそれに合わせてるのは黙認するなんて...めちゃくちゃだな。」
「そうまでして僕が着いてきたのには実はわけがあるんです。フィーと約束したことがあって...。ダイゴさんのそばにいてあげて欲しいと...必ず戻るからそれまでダイゴさんを支えてあげてと。アルスさんは何か考えがあるようでそもそも僕をここにいるように提案したようですし...。それなら僕も簡単に逃げる訳には行かないと思いました。すみません、すごく難しいお願いをします。ここにいる間は僕を男として扱ってください。
そうすれば...おそらくシスターたちの目はかいぐくれます。今、生理が来ちゃっててなんかドジ踏むかもしれないのですが精一杯頑張ります。足手まといにならないよう僕も最大限頑張るので協力させてくれませんか?」
...複雑な気持ちになっているところに複雑な提案がやってきた。
俺にとってアベルはかわいい女の子...でしかない。
両性具有ときいてもどうみても可憐な女の子なんだよ。
それに...風呂やトイレはどうすんだ?共用だよな...。
「ダイゴ、提案なのですが彼女...おっと、アベルがお風呂やトイレに行く時はダイゴがついて行きフープルで商会に戻るのはいかがですか?中に人がいる時は無理かもしれませんがトイレや風呂の中に入っているところさえ不特定多数の獣人に見せておけばそんなに怪しまれないかと。」
...なるほど、それは確かにいいかも。
つーか、アルス...お前何考えてんだ。
ハルートは切り替えが早くて羨ましい。
俺なんてまだどうするか以前にアルスへの怒りが収まらないフェーズにいるわ。
「まあ...仕方ない。やれるだけやってみるか。」
「ダイゴさん、僕嬉しいです。」
手を握ってくるアベル。
俺はパッと手を離してこう言った。
「男同士はこういうことしねーんだ。気をつけろ?」
あー何言ってんの最悪!絶対嫌われる!
「ご、ごめんなさい。」
シュンとするアベルを見て胸が痛んだが、今は癖づけるためにも誰かが見ていない時もアベルを男として扱わないと。
「アベル。トイレは遠慮するな。長丁場になるかもしれないから今行っとくか?今なら来たばかりだし直接商会に戻っても大丈夫だと思うぞ。」
「ええ、そうして頂けると助かります。」
アベルは立ち上がると俺のそばに再び来た。
あまくて女の子らしい香りがする。
ったく...頭がどうにかなりそうだぜ。
「いくぞ、フープル!」
戻るとハルートは本を読んでいた。
しかし、よく見るとただ読書をしている訳ではなく聖書を全て読み漁ってるらしい。
「だいたいこの教団の歴史と背景が掴めました。これなら信者ぶるのに十分な知識を得たと言えます。そういうことで困った時は私が前に出ますのでなるべく三人で行動するようにしましょう。」
こいつの頭のキレ方は普通じゃない。
俺には思いつきもしない詰めの甘かった部分を補填してくれる。
「さんきゅ。」
それから三人で馬鹿でかい教会内を一通り見て回った。
その中には孤児院もあり子供たちが沢山いた。
「...僕の育った孤児院と違ってここの子供たちは幸せそう。よかった。」
アベルはボソッとそう言ったあと子供たちと直ぐにうちとけ仲良くなり意外な情報網になるかもとハルートは感心していた。
俺?いまのところテレポートおじさんです。
「ダイゴ、あのオーブで騎士団の詰所や寮の方へ飛ぶことができるようです。」
廊下を歩いている時にハルートが指さしたのは廊下の奥にある玉座に置いてあるデカめの玉。
魔術で解析したところ、転移の魔法ができるように施されており特定の権限のあるものが特定の場所へ飛ぶことができるものらしい。
ここにあるものは緑色をした翡翠のような石で騎士団の詰所や寮、さらに強い権限の者はもっとやばそうな拷問室や訓練室なんかにも飛べるようになっているみたいだ。
...なるほどなこの教会だけでもでかいが施設はそれぞれに分かれていてるのだがそこは権限のあるものしか移動できないというセキュリティ付きってことね。
おそらく俺らが無許可であれに触れても詰所にすら飛べないかも。
...課題は多いなここにいる間に本当に事件が解決できるのか?
などと唸っていると祈りの時間を知らせる金が鳴ったので俺は二人を連れフープルで教会の祭壇があるエリアに戻り、捧げたくも無い祈りを捧げ終わると自分たちの客間へと戻った。




