第42話「イゴって呼ばないで」
「ふぁ〜あよく寝たなぁ。」
隣のベッドを見てみるとハルートはまだ寝息を立ている。
職業の柄、遅寝早起きが得意になってしまい未だに体に染み込んでいることを実感させられる。
そういえばアルス俺のスマホ今日の出発までには用意するって言ってたなぁ。
楽しみだ。
ボッサボサに爆発した髪をクシで梳かし歯を磨くと、まずはシャルを起こした。
「んぁ。もう朝かぁ。ふぁ〜よく寝たなぁ。」
さっき俺が伸びながら吐いたセリフと全く同じことを繰り返すシャルちゃん。
いやだ...俺ってば仲間たちに絆されてるのかしら...いや元から似たところがあったんだよね多分、などとひとりで考えているとハルートも起き上がった。
「...ふぁ〜よく眠れました。」
お前もか!わざと寄せてんのか!?なんなんだ!これ!
「ダイゴ、すみません。ちょっと気分が優れなくて解毒の魔法をかけて貰えますか?」
「あ!俺も眠気覚ますやつ!かけて。」
ったくこいつらは!ハルートはいいけど俺、ドラえもんじゃないんですけど。
「ルメイリス!ディスミン!」
しかし俺の同時詠唱でこいつらの願いはかなってしまう。
「ありがとう。体力が回復しきっていないようなのであとはポーション飲みますね。」
「せんきゅー!うんこしてくるわ!」
ったく!ハルートはいいけどシャルの奴!
下品すぎるぞ!
「ふぁ〜あ!俺だってねみーッつーの!フィール!ディスミン!」
仕方が無いので傷を癒す呪文で内蔵を少しいたわってやり眠気を覚まして頭をシャキッとさせた。
準備を終え下に行くとマカフィーとアベルが紅茶を飲みながらくすくす笑っている。
花園があります、ここに。
「あ!ダイゴおっはよー!僕ね、ベルとめっちゃ仲良くなったよ。」
「おはようございます。ダイゴさん。フィーにとても良くしてもらってます。」
可愛いあだ名で呼びあってぇ〜なにそれー俺もダイって呼んで〜イゴは辞めてね、語呂が最悪だから。
「おう、二人ともおはよう。」
アベルってマカフィーと居ると女の子らしさが増すなぁ。アルスといる時は逞しくて少し男の子にもみえるんだよなぁ。
不思議だ。
「ダイゴさん僕の顔になにかついてます?」
「あぁ、ごめん、君って多面的で可愛いなと思って。」
俺は何も考えず言ってからはっとした。
「あ、あ、ごめん!別に変な意味じゃないよ!」
「いえ、いいんです。照れますね。僕自分では男だと思ってるんですけどそこでフィーも前はそうだったって話で盛り上がったんです。でも今は自分らしく生きてるから男とか女とか関係ない自分なんだって言ってるの聞いてなんかいいなって思いました。」
「おう...そうかぁ。」
「ちょっぴり人と違う体をしてるのにフィーは別にベルはベルだよって言ってくれて。なんかスーッと楽になりました。」
人と違う体?というところが少し気になったけれどあえて突っ込むのをやめた。
「そっか。よかったよ。マカフィーお前もシャル以外に話しやすい友達ができてよかったなぁ。」
「もぉ!ダイゴやハルートだって話しやすい友達だよぉ!?」
「まぁ俺とハルートには理解したくても出来んこともあるかもしれんだろ?」
「んもぉ!なんかその言い方嫌だ!」
話をしているとハルートとシャルも降りてきた。
「おはよーーマカフィー、アベル。」
「マカフィー、アベルさんおはようございます。」
「おはよ!シャル!ハルート!」
「おはようございます。」
ていうかよく考えたらみんな緊張感無さすぎだけど大丈夫か?
「おっはよーさん!みんな!」
最後にいちばん緊張感の無さそうに見える男が降りてきた。
高そうなスーツを着て。
「おはようアルス。すげぇなそのスーツ。」
「まぁな...グレイスのおばちゃんはちょーーーっと厳しいお方なんよ。しゃーないからモーティのスーツも慌てて仕立てたったで。あ、それよりダイゴ!これ昨日のうち用意しといたスマホや。」
アルスはそう言って胸ポケットから水色が買ったスマホを取り出した。
「何かと便利な機能が着いてるんやけど、商会のアプリに関しては後でメールで使い方送るわ。
ただこれは覚えといてな。君しか使えへんようになってるアプリやそもそも君の魔力を意図的に流さへんと使えんような設定にしてるさかいロック解除の時は魔力を込めてつかうんやで。聞く話によれば向こうにもスマホはあったんやろ?多分一緒やと思う、知らんけど。
耐水、耐塵の魔加工施してるさかい丈夫やしとりあえずつこてみて。」
「うわぁ!アルスありがとぉ!」
「感謝の気持ちを込めてギューってしてくれてもええんやでダイゴセラピーや。」
うわっきも!かっこよかったのにほんと台無し気持ちわり...何が楽しくて男同士で抱き合うんだ?理解できん。
まぁ多分こいつの周りにはこいつに抱かれてでもどうにか仕事を取ろうとするやつは男でも女でも居そうだし逆も然り性別関係なく利用できるものは利用してそうだよな。
あ〜おっかね、そういうのに俺を巻き込まないで頂きたい。
「まぁとにかくさんきゅー!アルス!」
「あ、一個お願いしてええか?」
「なんですか?」
「すまん、ヘルペスできてもうた...しかもなちんちんに...すまん、直して。」
あー!こいつもかい!もう本当人をなんだと思ってるんだ!
気持ち悪いし見たくもないので服の上から魔法をかけることにした。
「はぁ...ルメイリス、フィーラル、ルフレ!」
解毒でひとまずヘルペス菌を抑制し上級回復魔法で肝機能やら免疫機能を回復し粘膜部に炎症が酷くならないように衣の魔法をかけた。
俺は医者か?金取るぞ?
「くだらない事で朝から疲れさせんなよな!次からは金取るぞ!いいか!」
俺はすごい剣幕でアルスを睨みつけた。
「そんな怒らんでもええやん。」
「いや〜申し訳ない。我々も朝イチダイゴに治してもらったんです。」
「おたくらもヘルペス!?お盛んやなぁ。」
「ちがうわ!俺は眠気取り!ハルートは解毒で吐き気を止めてもらったんだ!」
「お前らも気をつけろよ〜別に構わないけど。な〜んかモヤッとするんだよね。」
「おう、悪ぃな!ダイゴ!後で一杯おごるぜ!」
「私も甘えすぎだったかもしれません。すみません。」
「いいよ!仲間だからね。こっちこそ、強く言ってすまなかったな。ただアルスお前はもう少し反省してくれ!具合は治してやるけどもっと恥を知れ!ばかたれが。」
「えらいすんません。」
「はい、もうこの話は終了。つーことでみんな準備は終わってる?」
「おう!バッチリだぜ!」
ここ最近ずっと私服だったシャルが鎧を着ている。
やっぱりこっちのがしっくりくるね。
マカフィーも昨日までの可愛い私服からよく見たらローブ姿になっていた。
というかよく見たら俺だけボロッボロの私服で恥ずかしいこと極まりない。
「あのぉ...アルスさん...。」
「なにかね?冷たい男のダイゴ君。」
さっきまでシュンとしてたくせに腹立つなぁ〜お願いごとするの分かった瞬間掌返して来やがった。
「差し出がましいお願いだと存じてますが...すみません、服を恵んでいただけないでしょうか?」
「ふーん?服をね?タダで言うんちゃうやろなぁ〜。」
「只という訳には行きませんでしょうかぁ。」
「さっき自分随分俺に怒ってたなぁ...どうしよかなぁ。」
は〜ムカつく。
「いつでもヘルペスでもクラミジアでも治しますよぉ〜お願いしますって。」
「しゃないな〜。将来稼いで還元してくれるっちゅーんやったら考えんくもないで?」
「もちろんでございます。」
「ほんまやろな?契約書結ぶで!」
「ひぃ...ご勘弁を。」
「ぶっ!冗談や。まってり今倉庫から君くらいのサイズのやついくつか出すわ。」
ハルートとマカフィーは顔を真っ赤にして笑うのを堪えている。
「ぶっは....クラミジアって!!僕でも直せないよあははははははは。」
いや笑いどころそこなの!?
「ククククク...ダイゴ勘弁してください。」
あ〜もう笑ってくださいどうぞ。
はいはい僕はマヌケですはびょーーーん。
「ほれ、これなんてどうや。」
アルスがいつの間にかどこからか取り出したピエロの服を俺に差し出した。
「...。」
もう怒る気にもなれなくて呆れ返っていると準備できていつの間にか座っていたモーティですら吹き出して笑っている。
「お前ら覚えておけよ。」
「あはははは!冗談や。ほれ、こういうんが好きなんやろ?」
アルスはピエロを一瞬でどこかにしまうと今度は俺が好きそうなジーパンにワイシャツっぽい雰囲気の上着を差し出した。
「これこれ!こういうのだよ!それより今どこからどうやってものを出し入れした?」
「企業秘密...と言いたいところやけどストックの魔法を魔学アイテムで再現したものをつこてんねん。君ならストックの魔法くらい使えるやろ?」
「あー!!忘れてた!それ一番初めの頃欲しいと思って魔法だわ。落ち着いたら覚えるわ。思い出させてくれてサンキュ、服もサンキューな。」
手に取ってみるとかなりいい生地だということがすぐにわかった。
「それ氷耐性と防寒魔法かけてあんねん。それでも寒い思うから全員分のコートはもう用意してあんで。Gパンの方は剣で切りつけられても穴があかんほど丈夫に強化魔法をかけてあるさかい。もし物騒なことおこっても安心やろ?」
朝まで飲んでただろうにいつこんなもん用意したのだ?という疑問はさておき俺はさっさと用意してくれた着替えに着替えて元の服をサイナラした。
「よし、みんな用意はええか!それじゃこの人数はさすがに気だけでは散り散りになりかねんな。超高級な転移札で必要な場所までみんなをそれぞれ送り届けるで。それじゃ気術とちごうてチャージタイムあらへんからすぐ飛ぶで〜!さ用意したコート着ぃ〜。
おーしシャルちゃんは鎧やし着れんか!寒ない?お、平気なんやな!OKや!
それ以外は皆着れたな!ほんじゃ行くで!それ!」
アルスが掛け声とともに転移札を掲げた次の瞬間俺たちの視界は灰色になった。




