第41話「五人目!」
次の日、商会の料理研究ができるほどの色々器具が揃ったキッチンへ各面々が集まった。
まずはアルスがみんなに俺を上手い具合に紹介してくれて、俺は口が出しやすくなった。
食材も一通り用意してもらいまずはそのままのやり方をシェフにその場でやってもらった。
そして出来上がったものを試食したところ焼きたなので冷凍もしてない分昨日のものより若っ干...生地はマシだったが、どこを突き詰めるべきか全ての工程を見て覚えたので出来ていないところを指摘しながら出来ているところはここをもっとこうしたらとOJT方式で伝えていった。
また食材の方にも少しこだわりが薄い部分が感じられた為卸元の業者にも指導をさせてもらった。
結局その日は納得のいく物にならず卸元のやそれ以前の野菜農家やらモンスター農場やらとも打ち合わせや現地調査が必要ということになり全て吟味した上で一旦プロジェクトは白紙になった。
で...今は今後の予定の会議が行われている。
「勘違いしないで欲しいのだけど完璧なものを作るって考えは捨てて欲しいんだ。
もちろん完璧を作り出せたらそれはすごくいいことなのだけど欲が無くなったらなにも生み出せなくなってしまう。
その為にここはもっとこうしたいを常に出せることが全ての工場に繋がるということを料理においては覚えて欲しい。」
「ビジネスも同じやダイゴ...しかもそこに人が絡んでくるから食べ物みたいに素直やのうておもしろいんよな。でも今回は本当に勉強になった、ありがとうな。」
「いや謝らせて欲しい。ビジネスのことはわからんのにちゃぶ台返しするような形になってしまってプロジェクトメンバーや卸元にも損失が出る形になっただろうし。」
「ええんよ。そこは皆納得して次また声をかけてくれ言うてたやろ?それは君をホンモンやと思ったからだと思うねん。ただなこの社長...モーティはな今よう聞いたら事業を売却してこのピザのシェフとしてシェフ道を再始動させるつもりやったみたいやねん。そこだけ俺がどうにかしてやりたいと思ってるねん。」
「グレイスの件が終わったら再始動するのはどうなんだ?」
「いや白紙に戻って、一からやることになったやろ?俺今日までモーティが自分の事業全部売ったん知らんかってん。というのもそれを決意して決済組んでもうたのが近々のことらしゅうてな俺の耳に届く前に会社の権利のーなってしまった。事業売却した金も借金に当ててしもたらしくどうも一文無しとまではいかんけどカツカツらしいねんな。
売る前に一言相談して欲しかったなぁ。」
「すみません...自分の事業は元からもう売るつもりでした。
もともとマリジャナルの店を手放したのもこのロイズで店をやりたかったからで...。
夢だったピザだけの店をロイズ出来ると思い開発の為に使った経費やら居抜き工事やら結構自己資金を使ってしまったので、このままでは他予算にまで手を出しかねなくて、従業員たちを守るために、二人三脚のように手を取りあってきた幼なじみのが運営している会社に買い取ってもらいました。
すべて自分の裁量でやってしまいました。」
「いやいやいや!こっちがやろう言うてやめるわ!いうたんやし会社は君のもんやさかい君は悪ないんよ。」
「仕方ない。モーティさん良かったら俺たちと旅しない?俺はそのうち自分のレストランをやるんだ。そこで一緒に働いてみないか?
あんたの夢は100%直ぐには叶わなくなってしまうが何より俺がアンタを直接見れるしそもそも料理以前のこだわりをもっと教えてあげられると思うんだ。将来もし俺の店から独立して俺の屋号を貸してやれるくらいになれば自信もつくし夢も形になる。アルスが居るからそう遠くないうちに形に出来ると思うんだけどどうかな?」
「....。」
「いやいきなりこんなこと言われたら戸惑うよな。でも...もっと戸惑うことを言うぜ。正直な気持ちで話してぇんだ。
あんたの料理に対する熱意や夢を受け取ったからこそ話さしてくれ。
信じられなかったらそれでもいいよ。
俺はさ転生してきて実はこの世界の人間じゃないんだ。元の世界では世界で1、2を争うレベルの店でシェフになれるってところで死んじまったんだ。それで訳あって転生したこの世界で今度こそ天下を取ろうって算段なんだよ。だから俺のところに居れば世界で1番のピザを作るための下地になるかもしんねーぜ!悪い話じゃないだろ!?どうせこのままじゃアルスに仕事を斡旋されてそこで地道にやって夢を叶えてくしかないんだ。俺といることが近道になるとは全くもって保証できないけどよかったらできる所までやってみないかい?」
「ダイゴさん...。
わかりました。こんな俺でよければあなたについて行きます。
モーティ・シャンガフと言います。」
「ありがとう!ダイゴマツカゼだ!
ただ最初に言っておくごめんな。
確実に変なことにも巻き込むし、まだまだレストランを開けられる算段すらないからこのまましばらくは冒険者として金を貯めたりもっと世界中を回って文化や歴史をもっと知りたい。だからどっちにしても時間はかかると思うんだ。
俺が準備できるまでアルスに仕事を斡旋してもらうという手もあるし、そもそも俺との話は聞かなかったことにしたっていい。」
「色々吹っ切れてしまいましたので冒険して世界中を回ることで世界の食材や人々を勉強し直すことも近道になるかと考えました。それにあなたと居ればそれを学ぶ機会や盗める機会が沢山やってくると思っています。」
「その言葉嬉しいねぇ。
そうだ、アルス!この際だから、言っておくが俺は金を出されて店を出しても面白くねぇからな!自分の力で全部やりてぇ。その為に人を繋げてもらうことや紹介してもらうことはあっても金の面は自分で絶対工面するからな!そこは口出さんで欲しい。まぁそもそも俺まだ料理人ギルド所属してるだけみたいなもので以来にすら手が回ってないんだけど。」
ルカとの約束もあるし人の手は借りれない。
「あははははは!おもろい!気に入ったわ!わかった!金はびた一文手伝わん。」
「つーわけで、夢はかなり遠いがそれでも俺と一緒に来てくれるかい?一応アルスに出資してもらってやり直すこともできると思うがそれじゃちょっとちがうだろ?モーティ。」
「男に二言はないです!ダイゴさんと共に勉強しながらやり直させてください。」
「よし!それでこそ料理人だぜ。あ、俺にタメ口でいいからな。明らか俺の方が年下なんだからさ。」
「おう!じゃあ敬語はやめるぜ。すまねぇことビジネスの世界に足を突っ込んでたからな...敬語のが落ち着く時もあんだよ。本心を読み合わないのが鉄則だからなぁガハハハハ。」
突然、見た目のごつさ通りにとても豪快な笑い方をするモーティが面白くて俺は吹き出してしまった。
「話もまとまったみたいやな。俺が言い出したことや、俺に手伝えることは何でもやるで。おばちゃんには上手いこと説明して金積んどくわ。お前らは絶対金を生み出す才能があるさかい俺から逃げようたって離さへんからなぁ。」
こっっっわい笑いをこちらに向けるアルスを一旦スルーし俺はモーティと握手をした。
シャルやマカフィーやハルートは拍手をしてくれていた。
「そんなわけですまん!今日から一緒に行動させてもらうモーティだ。みんなヨロシクな!」
サメの獣人のモーティは大きなしっぽをブンと振り力こぶを作って挨拶した。
「海の男の挨拶だー!すごい初めて見たー!」
「嬢ちゃん物知りだなぁ〜。俺の親父は船乗りだったんだ。親父に憧れて船乗りを目指したこともあったんだよ。だからつい癖になっちまってた。ビジネスやってる間は腰低くしてたから封印してたのにダイゴのお陰で解放されちまったのかなぁ。あはははははは。」
「マカフィーは本当に色々知ってるな。」
俺が感心しているとマカフィーとアベルがモーティに片腕で持ち上げられキャッキャはしゃぎ始めた。
「よし!俺もやるぜ!」
シャルは力こぶを作りハルートを持ち上げている。
なーにやってんだか。
呆れているといきなりアルスが俺の股の下に頭を潜らせ肩車しようと構えた。
「んな!何すんだアルス!」
「なんや羨ましいんちゃうんか?君は重そうやから片腕で持ち上げるんは無理やし肩車したろ思たんやけどあかん、重ーて立ち上がれへん。」
アルスに蹴りをカマし振り払った。
「うごッ!何すんねん!」
その後少し落ち着いた後明日以降の作戦を話し合った。
「そんなわけで明日こそグレイスに飛ぶで。遅なってすまんのシャルちゃんマカフィーちゃん。」
「どうせ船で行くならもっと時間がかかってるはずだから。誤差だよ誤差!」
「そうそう、俺なんてむしろこの期間筋トレが沢山できて最高だったぜ。」
「そうかぁ!ええ子らやな。アベちゃん?マカフィーちゃんとシャルちゃんと仲良うしてもらうんやで。」
「はい。あ、すまんモーティは俺とグレイスのマーシェット商会に来てうちの強突くオババに一緒に謝罪して欲しいねんけどええ?」
「もちろんです。私の至らなさで起こってしまったことでもございますので丁寧に謝罪させていただきたいです。」
「律儀やねぇ。あのオババの喜びそうなもん俺が用意しておくから君から言うて渡し〜。」
「何から何まですみません。」
「いやいや俺の責任でもあるさかいもうこの話は終わりにしよ〜や。明日はよろしゅうに。」
俺たちはその後みんなでジュースやワインで乾杯しこれからの活躍を祈る会を開催した。
だいぶ夜遅くまで飲んでしまった俺は自分とハルートに解毒の魔法をかけて、ザルすぎるモーティとセクハラ大魔神と貸したアルスに先休むことを伝え酔いつぶれたシャルを何とか起こして寝室に戻った。
マカフィーとアベルは俺たちより随分早めに休んだようでいつの間にか居なくなっていた。
明日からはいよいよグレイスランド教団へ乗り込むのだと考えたら少し酔いが覚めそうだったので何も考えずに休むことにした。




