第40話 「ピザ事変」
俺はアルスの目を真剣に見つめた。
「もっと聞かせてくれ。あしらったりしてすまない。シャルやマカフィーを救いんたいんだ。」
「あはは、そう焦らずに聞きぃ。教団のトップの方はなーんも関与してへんことみたいなんやけどな。とある部隊が腐っとるみたいでそこがバイ菌みたいに少しづつじわじわ侵食して教壇を汚してるみたいなんよね。」
「...。」
「俺もそこまで純白ではないからなぁ。強くは言われへんのやけど...世の中には鉄の掟やマナーっちゅうもんがあんねんやんか?そう言うの徹底してうちら商会が作り上げてきたさかいあまり目に余るとそういうのを目瞑る訳には行かんのよ。」
「あぁ。」
「騎士団長には気をつけ...それから布教チームの一部を率いるバービリオいうやつ...まだ全部がわかってる訳ちゃうくてな。
こっちでも調査が難航してるところがあるさかいにあまり情報はあげられへんのやけど腐った金の流れを作り上げてるヤツらへの献上先はだいたいわかっとるんや。俺はグレイスにおるおばちゃんと相談して必要ならシュリのアクアベリーにも行って三人の商会頭領で会議するさかい。潜入したら少しだけして欲しい調べもんがあるんやけどそこまでお願いするんは厚かましいか?」
「...いや結果的にシャルやマカフィーが場合によってはこれからも所属し続けるかもしれない教団の未来がかかっているなら手を貸したいとは思っている。」
「話が分かるのぉ。そんじゃま...すまんけど今聞いてくれるか?」
「あぁ。」
「まず教団のトップつまりマカフィーちゃんのお父ちゃんやな。この人がその事実を知っているのかを確認して欲しい。
もし知ってて放ってしまってるなら場合によっては教団ごと叩かなあかん。
次に騎士団メンバーの一人一人の情報が欲しい。こっちはシャルちゃんあたりに頼んだらリストなんかを用意して貰えそうやな。
俺から頼めへんし君からシャルちゃんに頼んで欲しいねん。
それから信者の中にも定期的に世界中からわざわざグレイスの聖地へ通ってる熱狂的な人達がおんねんけどそん中にもどうやら良くない金の流れを作り出してる輩がおんねん。そこでそれを出来ればリスト化したい...。これは結構難しいかもしれへんけどマカフィーちゃんにお願いしてその日祈りに来た信者たちのリストがあるはずやからそれを写真撮らせてもらってくれへんか?信者はグレイス教の強い信者であればあるほどそこに来た記録を残したがるさかいリストさえ手に入ればこっちのもんやねん。
あとはうちの紹介のネットを使って調査できるさかい。」
「わかった...できるかは分からんけどやってみる。」
「ありがとう。君スマホ持ってない言うたよな?俺プレゼントしたるからそれを使って色々やってみて欲しい。俺らしか使えん特殊な魔法のかかったアプリなんかもあるさかい少しは役に立つ思うねん。」
「まじ!?それはありがてぇ。」
「こんなとしかでけへんけど、俺があからさまに尋ねるんは教団の黒いやつからしたら怪しすぎるんや。頼んだで。」
「わかった。任された。」
「っしゃ!ありがとうな!」
アルスは抱きついてきた!
勘弁してくれよぉバックハグだよ?
風呂だよ?俺よりガタイ良いんだよ?
無理だアアアアアキモイイイイ!
こわいいいい!
俺が顔をひきつらせてキモがっているとアルスはすぐに俺を離した。
「す、すまん!俺ボディランゲージ激しいねん!親しくしたい思たら止めらんくてな。もうせえへん!すまん!」
「...おう、もうしないでくれ頼むよ。」
俺の中で虫とアルス同じくらい苦手という意識がうっすら芽生え始めていた。
そのあとはアルスに再び一人にしてもらい風呂をめいっぱい楽しんだ後シャルと合流して今度は俺のフープルで商会まで戻った。
「ダイゴ君も瞬間移動できんのやなぁ!もしかしてその魔力量やし世界中どこでも行けるん?」
「あぁ多分。俺が一度行った所なら。」
「おぉ!すごいなぁ。
実は俺の気術では距離に制限があるねん。
東側の大陸つまり...こっち側ならわりとどこでも行けんねんけど西側の大陸に行くには転移札をつこてるんよ。」
「まじで!?」
「あぁそうよ。普通の獣人の魔力や気力量ではおそらくフープルつこてもそれくらいが限界やと思うで。一部賢者クラスとかなってきたら話別やろけど。」
そうなのか少し優越感、いひひ。
「あ、そうやみんなお夜食...食べるか?」
アルスはニヤニヤしながらそう言うと二階のキッチンへと登って行った。
「食べるか聞かれただけで答えてないんだけど。」
「まぁお前が食えなくても俺が食うから安心しろ!」
アルスの行動にポカーンとしているとシャルがヨダレを拭きながら嬉しそうにそう言った。
しばらく下の最初に打ち合わせしたガラステーブルで寛いでいるとアルスが戻ってきた。
運んできたのはピザ!?
大きな二枚のピザを大きな皿に1枚づつ乗せてにっこにこしながら戻ってきた。
一緒にアベルとマカフィーも降りてきてみんなでテーブルを囲んだ。
「待たせたな〜。ほおれピザ焼いてきたで。」
テーブルの中心にピザを置きカッターで綺麗に切り分けそれぞれが勝手に取り皿に取れる状態にした。
その瞬間シャルがすごい勢いで食べ始めた。
お行儀悪いわよ!シャルちゃん!
マカフィーとアベルは暖かいハーブティーだけ飲んであまり手をつけようとしなかった。
ハルートはマルゲリータを1ピースだけ食べ、
「もう十分頂きました。」
と手を止めた。
ちなみにこのピザ釜があるなら入るのか?と思わせるほど巨大で直径45cm程ある。
「どうしたんだこれ?」
俺はアルスに彼が貯蔵庫から出してきた
たっかいワインを楽しみながら聞くと、
「イヒヒー実はな新しいビジネスを始めたんやけどそこの社長がこれ作っててなぁ〜。もろたんよ。冷凍して送ってくれたんや、プロジェクトに関わっとった商会メンバー達は試食でアホほど食うとるしいらん言うんで、アベちゃん二人では食いきれんし今や!みんなに食べてもらおう思て焼いてきたねん。釜はないさかい気術で焼いたんやけど上手いこと釜焼きの味が再現できとるやろ?よかったらロイズに店出してるから食べにいってな。」
ここでちゃっかり宣伝をするところがとてもアルスだ。
「ちなみにな、この気術も開発ビジネスやら布教ビジネスをやっとってな。教室なんかも開いたんよ。ダイゴくんさえ良ければ魔術教室のバイトとか何時でもしに来てくれてええからな。バイト代弾むでぇ〜アベちゃんに教えてくれてもええしその場合は俺が大金出すで〜。新たなビジネスになりそうやからな!」
あ〜この人は常に頭の中が商売でいっぱいなんだなぁ。ほんとに生粋のあきんどである。
「ピザ冷めるぞ。」
シャルの一言で俺はハッとなりしらすのような何かとチーズとはちみつそれからパセリオレガノなんかで風味付けされたなんという名前なのか分からないピザを食べた。
ちなみに味は美味いのだが...これはピザか?
イタリアに連れて行ってもらった時に食べたピザとはまた違った味である。
本場のピザというよりかは日本で食う宅配ピザに少しだけ近い印象。
あんなにしょっぱくは無いのだけどなんだかどこか及ばない感じ。
口を出すとめんどくさい事になりそうなので言わないけど。
「なんやダイゴくん?うまなかったん?」
「....答えて欲しい?」
「いうてみ。我々開発側は参考にさせてもらうだけのバリューのある一言をな!」
少し食ってかかってくるアルスがめんどくさかったが俺は正直に答えてみることにした。
「上に乗ってる食材はともかくなによりまず生地ね。これは一度冷凍しているから仕方ないのかもしれないがおそらく店頭販売もしてるのだろ?だとしたらこれでは二流。スーパーでも買える味だ。」
「ほん...利益率は割とええ方だと見込んでねんけどスーパーでも買える味で勝負するんはちがうな...。
どこ直したらええ?価格はな割と強気でいってんねん。マモ大陸のマリジャナル国出身の本場のマリジャナンシェフがつくとるからな。」
マリジャナル...マモ大陸はたしかここより東にあるわりと小さい大陸でモナ大陸の上部だったよな...たしかマモのだいぶ海側にある貿易船が入る国だったっけ?
イタリアンぽいのをつくってるところってことね。
「すごく失礼だと承知して言うのだけど、そのシェフってのはほんとにシェフだったのか?
料理人ギルドに所属しているはずだと思うけどランクは?Sランクが店を出す条件だと思うが基礎がなってない。」
「...そうまで思われてしまうんか。一応SSランクやったと思うで。」
「なるほど....。もう店はやってんの?」
「まだや。オープンは来月を予定しとっていま店舗居抜き工事してんねん。」
「アルスはこれでいいと思って承認を?」
「せやね...実は言い訳はしたくないんやけど飲食の方は俺の専門外でグレイスのところのおばちゃんが取り仕切っとるんよ。でおばちゃんには店を出して会社連結する許可まではとってんけど実際に食べてもろてないんや。食品の味自体には結構自信あんねんけどあくまで流通で流れるもんには俺は強いねんけど美食家を唸らすようなもんはおばちゃんがほぼやっとるさかい今回初めての試みやねん。」
「...うーん。アルスさんはどちらかというと消耗品物流や遺物関係や宝石やら魔導書やらその他ちょっと重たげな仕事をしているイメージがあると思うんで今回ほんと新ビジネスだってなってトントン拍子に話が進んでしまって....。」
アベルもフォローに入る。
「...なるほどな。マルジニアであの食事を食べた時本物の舌を持っていると思ったが担当が別にいるんだな?」
「その通りや。あの店ももともとグレイスのおばちゃんが卸してた店でおばちゃんから引き継がれた通りに上手く立ち回っとるんや。あと欲しいもんとか欲しいコネクションとか相手がどういうことを求めてくるかは何となく商人の感でわかるさかいそこを上手く合わせて計算してやらせてもろてんねん。」
「確かにね、普通に食ってるだけなら結構美味いのよこれ。焼きたてを食ってないからなんとも言えないしこの世界の基準ではもしかしたらこれが最高のレベルなのかもわからん。ただ少なくともともシェフが作っているという飾り文句があるならこの味では俺の舌は納得しない。」
「どこを直したら?」
「まずやり方としては二つ。
一つ目はこのままの味でスーパーに店頭販売か冷凍で卸す。
それならおそらく庶民層の心は多く掴めるしそれくらいの味は間違いなく出せてるから売れはする。
2つ目は味と作り方をガラッと変える。
そして店頭販売と店内飲食のみに主機を置いて高級層も取り入れ、ケータリングも視野に入れた動きを見通す。
冷凍販売は制作コストも含めて一旦見直す。
冷凍が難しいなら瞬間移動が使えるアルバイトを雇って宅配注文に切り替える。というところだろうか?」
「いやそれくらいは俺にも思いつくねん。直すなら味の話をして欲しい。」
「あぁそりゃそうか。ごめん。
味の話はシェフを連れてきてからじゃないと改善案を提案しづらい。
なんなら一から俺が教えてもいいよ。ピザは正直専門外だけど味の科学はある程度心得てるからどう作ったらどうなるかは教えられる。」
「わかった!このプロジェクトは一回白紙にするわ。グレイスから帰ってきたらこの件一緒に手伝ってくれるか?」
「あぁ構わないよ。すまないな余計な口を出して。」
「ええんや。君が繊細な味へのこだわりを持っててくれるからこそ俺のビジネスへの転換も生きると思うねん。今日君にこれ食べてもろて良かったわ。」
「あ、それよりさ、今夜はもうダメなのか?ビジネスのことはよく分からんが動き出した金の流れが止まったらそれだけ損失出るだろ。そんなの勿体ないんだからもし大丈夫なら今指導するよ。」
「連絡してみるわ。開発チームも叩き起してくるわ。シェフが覚えればチーム全体が改善できるやろしちょっとまっててな。」
アルスはアベルにも手伝ってもらいピザ開発に関る従業員や食材の卸元に至るまでを呼び出そうとしたが軒並み断られてしまった。
しかしどの人達もアルスへの信頼があるので明日ならという話になった。
ということでグレイス行きは思わぬ足踏みだが、シャルマカもハルートも俺が決めたことならと承認してくれた。




