第27話「バラファルマリカ」
俺たちは船の受付があるフロアへと赴きアップグレード申請をした。
ちなみに渡航費は残りの距離も少しだけ減ったのにも関わらずきっちり取られるとこのこと。
もともとはカジュアルにしてもらうつもりだったが、
悔しかったのとエズルの依頼でそこそこ稼げたのもあって、カジュアル、ラグジュアリー、スイート、パレススイート、プレミアムスイートと続くコースのうちラグジュアリーを選ぶことにした。
その金額なんとびっくり120000J...。
四で割っても一人30000J。
ほぼ依頼で稼いだ分はここに落としてしまっている。
部屋の移動ができるのは準備があるからとの事で、船が出発する明後日からになるそうだ。
まぁ...いいけどなんとなく不服。
俺は風呂に入りエーテルサイダーをがぶ飲みして1時間だけ仮眠をとった。
その後シャルのスマホでこの辺の情報を頭に入れ評価の高いレストランを今夜で予約した。
お値段なんとびっくりの10000J...これで所持金は約18000Jになるが....このために金を残してきたので気にしないことにした。
「よしっ!完璧だ。」
俺はルカ事件の時に買ったスーツを魔法カバンから出すと魔法を応用しアイロンをかけた。
掌に衣の魔法をかけて、低級の氷魔法フリと炎の低級魔法ヴォルの威力を調節し風の低級魔法で照射しながら掌で圧縮する。
これがなかなかどうしてでアイロンを買う必要性がないほどピチッと決まる。
前にハルートが教えてくれた小技なのである。
ハルートは今は眠っているが起きたら街に楽譜を見に行くと言っていた。
みんなそれぞれ好きに過ごすことが出来てきちんとリフレッシュになりそうだ。
俺はレストランを予約した時間まで近くのエリアを散策することにし、フープルで近場まで飛んできた。
このエリアは大分、アラビアとかそっちみたいな雰囲気で妖艶な煙が漂っていた。
おそらくお香なのだろうが不思議な紫色の煙はなんだか甘く艶やかな香りがした。
ちかくにはムスクのようなものもありおそらくグレイスランド教とは別の宗教文化が成り立っているようだ。
夜市はこちらにもありまだ夕方だがチラホラとランタンが灯っている。
赤い絨毯を引いてその上で怪しげな雰囲気で営業をしているところもあれば出店のような形の場所もあり近代的なエリアとはかけ離れて異国感がある。
「オニサン...夜のお店イカガ?」
俺がぼーっと見て回っているとピンクの衣装に身を包んだ猫の獣人の女に声をかけられた。
なんというかベリーダンサー?みたいな
ピンクのスカートとマズルだけを覆う怪しげなピンクと黒のマスクベール。
胸は露出が激しすぎないようになっているが細い腰と腹回りはよく見えシャム猫らしい白くふわふわしたそれが顕になっている。
エッチデス。ハイ。
「オニサン?ヒトリデスカ?」
共通語が上手く喋れないところを見るとおそらく学がなく昔ながらのこの辺の言葉に引っ張られているのだろうか?
「あぁ、でもこれから待ち合わせなんだ。すまないね。」
「ソウデスカ...バリファルマリカ.....。」
おっとなにか知らない単語が飛び出した。
おそらくこの辺に元々あったエズル語由来のなまりかな?
分からないけどなんか楽しんでみたいな雰囲気のことを表情的に言っているような気がした。
「じゃあ俺は行くよ。良い夜を。」
俺は軽くそのお姉さんに会釈するとそろそろ予約の時間を迎えるレストランへと向かった。
夜市をぬけた先にある少し閑静な場所にあるレストラン近辺は白い石造りになっていて水の張られた美しい堀となにやら魔物の形をした物の口から水が出ている噴水なんかもあった。
「おほぉ...これはこれは。」
一歩一歩丁寧に、庭園のような美しい地面を歩くと誰かが歩いたあとに残ったであろう砂混じりの音がした。
水が流れる音とその音...遠くの方で聴こえる太鼓や特殊な楽器の音...。
なんだか落ち着くな。
旅行感があって異世界に来たというのに地球にいた頃と同じように少し浮かれていた。
広い敷地を進むと遠くに見えていたあかりはライトアップされていた建物だということが分かった。
スライムのような形をした屋根に四角い形の建物は全てがキンキラキンで黄金の国らしい見た目だった。
「おお...これはこれは..。」
同じセリフを二回言ってしまうほど俺はこの状況にワクワクしていた。
さらに奥へと進み続けエントランス手前の一本道は近くを通ると左右に拡がる池から水が噴出するようになっていた。
入口をノックすると扉は中へと開き美しい顔をした狼の獣人のギャルソンが俺を迎え入れた。
「ようこそいらっしゃいました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ダイゴ・マツカゼです。」
「お待ちしておりました。マツカゼ様。お席のご用意ができております。こちらへどうぞ。」
ボウアンドスクレープの歪みのない綺麗なお辞儀をした彼は俺を連れ大広間へと案内した。
案内されている途中の廊下も赤を基調としたカーペットや壁紙にはなっているけどやたらキンキラキン。
生前中学の頃見た金閣寺みたいなキンキラキン加減。
大広間への扉は...うんやっぱりキンキラ金。
目が疲れそうですね。
ただこれはただのおそらく金じゃない。
純度の高い金を限りなく多くその上扉に貼り付けるだけでなく扉そのものや引手すら本物の金だ。
こりゃ...よく予約だけで入れたな。
普通は紹介制になりそうだけど。
扉を開いた先にある大広間は薄暗くランタンと青い照明の光だけで照らされる怪しい空間。
右側に天井までの大きな水槽があり養殖の海の魔物たちが沢山泳いでいた。
中央にはステージがありおそらくここでなにか行われるのだろう。
今はただ怪しい煙が漂っている。
俺が案内された席は水槽側の席だ。
水槽が目の前あり左を見ればステージも見れないことはない丸いテーブル席に案内された。
「...それではお料理がくるまでしばらくお待ちください。こちらはお飲み物のメニューでございます。」
フレンチのルールとは若干違いそうで分からないがひとまず最低限失礼のないようにしておけば良いだろう。
俺はメニューを受け取るとそこに書かれていた見たことの無い酒を頼んでみることにした。
会場内には色んな国からの客が来ていそうな雰囲気だった。
ただひとつ言えるのはみんな上品そうで身なりもそれなりに女性の獣人は耳飾りやブレスレッドに赤、緑、青のどれかの色の宝石を身につけていた。
おそらくそれがドレスコードのひとつなのだろう。
逆に男性客は俺と同じような落ち着いた格好の客も多く、中には白装束の地球のアラビアっぽい...というか油田とか持ってそうな感じの見た目の服装の虎やライオン、わにやドラゴンなんかの派手な感じの獣種が多く落ち着いた雰囲気の中にギラつきを感じる風貌のものばかりだった。
大丈夫?俺だいぶちんちくりんだけど。
ボロが出ないようにしっかりとマナーだけは守らなくちゃなと強く思った。
あまりきょろ着くのは絶対に良くないので目線もなるべく動かさず食前酒が運ばれてくるまで水槽の方をシャキッとした表情を作りつつ眺めていた。
バラファルマリカってのはエズルの古語でクソッタレ!という意味です。
ダイゴくん!よかったね!




