第26話 「オオモン討伐」
食事を終えた俺達は、港にいちばん近い出口から向かうのがいちばん近いということで今度は船のあるエリアまでフープルした。
目的地はサルルーの街の跡地らしい。
ここから半日くらい歩いたところにある滅んでしまった街の跡地だ。
「エチュートアリゲータードラゴンて聞いたことないけどどんな魔物?」
神に与えられた知識の中にはない魔物だったのでハルートに聞いてみた。
「...知りたいですか?」
....え?その反応ってまさか。
「....いい。やっぱりやめてお...「蜘蛛とサソリの体をしたドラゴンだよ。」
俺がやめておくといいかけたところマカフィが答えた。
「...ボクカエル。」
俺が引き返そうとするとシャルが俺の肩を掴んだ。
「ダイゴォ?どこへいくんだよぉ。」
「ムシサンコワイヨ...。」
「ぷっ...。」
俺の言葉に吹き出すハルートとマカフィ。
シャルは俺の言葉が聞こえていないかのように俺を引っ張って街の外まで連れ出した。
「大丈夫大丈夫!あいつ夜型の魔物だから着く頃に攻めれば余裕だからさ!たぶん。」
そういう問題では無いんです。
僕は虫が嫌なんです。しかも何?サソリ?
蜘蛛?キモいって!
蜘蛛ならもうホースデビルとも戦ったから!被ってるからァ!
「うぅ。」
諦めてしょんぼりしながら少し冷える砂漠の道を歩いていたらハルートは景気づけの歌を歌ってくれた。
どうやら即死を回避するような効果があるらしい。
夜の砂漠は厄介な状態異常を引き起こす魔物が沢山いるのでそういうものから守る加護らしい。
街から近いエリアはやはり冒険者が多いからなのか魔物は少なかったが確実になにかからの視線は感じていた。
船でほぼふて寝をして過ごしてきたので全く眠気は来ず現場まで到着することができた。
夜は更け始めていて空が白み始めていた。
「よし...。いくぜ!」
シャルの合図に続き廃墟の街の入口から静かに中へと入った。
瓦礫だけの街だった場所は辛うじてどこに建物があったのかわかる程度で正直文明があった軌跡すらうっすらと消えかけ、歴史という長い時間の中で風化しまうようなそんな場所のように感じた。
朝日に照らされる瓦礫はなんだかとても寂しく見えた。
静かだ。本当に魔物がいるのだろうか?
....あーんいましたねんねしてます。
奥に行くと外壁だけが残った建物がありやつはその日陰になる場所で眠りについていた。
ドラゴン...という名前だけにもう少し竜っぽいのを期待していたが...これはなんて言うんですか...蜘蛛の足と蜘蛛の複数ある目とワニの爪と薄気味の悪い虫ならではの透明な羽を兼ね備えた...そんな不気味な姿です。
帰りたい!
顔がひきつる俺に、
「大丈夫です...朝日が更に昇る頃には、より深く眠りに着きます。それまで音を立てずデバフやバフの重ねがけ魔法陣型の魔法の設置などを冷静に済ませて推しましょう。」
ハルートは囁き声でそう言った。
魔法を乗せて発したからなのかその声は魔物に届いていないようだった。
俺はありったけのバフの魔法を自分含め全員にデバフを敵にかけた。
シャルやマカフィも無詠唱で祈りのみで信仰魔法をつかい俺たちに加護やバフを添付した。
ハルートはその間にそこら中に魔法陣を描き俺が魔力を込めればいいだけにしてくれた。
道具の用意も同時に行い俺たちはそのときを待った。
やがて日は登り段々と蒸し暑いどころか今にも焦げてしまいそうな暑さになってきた。
「行くぞ!」
再びシャルの掛け声で俺たちは道中話していた作戦通りの動きを取る。
「ルクシス流闘気術...身体能力大幅向上...。」
シャルはさらに自分に最後のバフをかける。
シャルは獣人が身体能力が普通ではない。
普通だったら耐えられないようなバフのかけ方をしても耐えられる。
彼女にはありったけの身体能力向上バフ...具体的には腕力、瞬発力、耐久力などをあげるものをかけてある。
にもかかわらずさらに自分の加護を強化するのと同時に許容できるのか分からないほどのバフを自分にかける。
これは後で反動が来るみたいだけどこいつは回復力も普通じゃない。
普通なら1ヶ月くらいは体にダメージが行くらしい。
それを耐える体幹や体力や筋力などを持ち合わせてるのだ。
「主よ祈りを聞きたもう!シャルロッテに神なる光の力を!」
マカフィもベルを鳴らしさらにシャルに加護と信仰魔法を強化する祈りを捧げた。
ハルートは眠りの調べを奏で万が一にも魔物が騒音で目を覚まさないように静かに歌う。
俺はシールドと結界を全員に貼り付け防御のバフの効果時間が短くならないようにプログラムを書き換えた。
シャルは剣を胸の前で掲げる。
いよいよ始まるぞ。
「イオルド式...血剣術...狂華乱舞....!」
シャルは剣を舞のように振り回し光の力をまとった斬撃を敵に切り込んだ。
しかし、眠っているにもかかわらず敵はそれらを全て自前の爪で弾き飛ばす。
....聞いてはいたけどやべぇなこれ。
俺はハルートが準備していた魔法陣に魔力だけ込めた。
そして、その後最近開発した新たな魔術を準備した。
幾つもの魔法を組み合わせそれらが打ち消し合わないように上手いこと組み直したものだ。
プログラムを組んでおりそれらの発動条件は長めの呪文の詠唱の中にロジックを仕込みそれらが崩れないように魔力を一定に流し込むことだ。
メトロが使っていた古代魔術の模倣品を参考にさせてもらった。
「エルテ...オズドマ...アフィルドカル...。」
一言一句に意味があるためそれらを全て均一な声の音量と高さで詠唱しさらに緻密な魔力のコードを組み続ける。
慣れるまでは大変だが料理も1つズレれば全くもって違うものなりかねない為それに似ているこれはとてもやりやすい。
その間にもシャルは敵を攻め続け足の1本を切り落とすことに成功した。
だがその衝撃で敵は目を覚ましてしまった。
俺は構わず詠唱を続け最後の一言を口にしてより強く魔力を込める。
「ウィルトーブリザーディス!」
氷の嵐が吹き荒れ竜巻に変わるとそれは敵に向かって一直線に進む。
建物の外壁や瓦礫を巻き込みながら敵に命中したそれは敵を空まで巻き上げたたき落としさらには氷の刃が上下から突き刺さる。
身動きが取れなくなった敵はこちらを激しく睨みつけ呪いを飛ばしてきたがマカフィが加護で跳ね返した。
ハルートは俺たちの傷が癒える調べを奏でマカフィはその効果を大きくするようにベルで信仰魔法を使う。
俺とシャルは畳み掛けるようにそれぞれが即座に出せる最大の火力の技を放つ。
「ルフリージャス!」
「ルクシス流聖剣術クロスホーリーブライト!」
俺の氷の超級魔法とシャルの十字を切った光の斬撃は見事敵に命中し敵は粉々に砕け散ると魔素に帰っていった。
魔素に帰りきらなかった素材やキモめの毛むくじゃらの足だったものの破片...それから魔石を拾い集めると俺は残りの魔力をつかい全員をエズルドーラまでフープルさせた。
「....なんとかなったな。」
「...割と余裕だったかも?」
「それは俺たちがしっかり下ごしらえをして行ったし前知識があったからだろ。犠牲になったヤツらのおかげ...とも言えてしまうな。」
「...どうか安らかに。」
全員で犠牲になった冒険者に少しだけ黙祷を捧げたあとギルドのカウンターへと報告に行った。
日はすっかりと真上に来ていて結構な暑さだった。
「お疲れ様でした。それではこちら報酬になります。」
と受付の人がシャルに渡した金額はなんとびっくり125000J...。
四で割っても俺の全財産より多いです、ハイ。
金の取れる国は違うねぇ。っていうかそれだけ危険な依頼って事だよな。
「うおおお!ありがてぇ!」
俺は思わずガッツポーズを取り全員とハイタッチした。
「そんだけ大変な依頼だってことなんだねぇ。」
「あぁ、だな!まずはどうする?船に戻って風呂入る?それから...レストランとか?あ、船の部屋のアップグレードもしてぇな!」
「まずは...ねみーからアップグレードしたら寝ようぜ!俺結構無理しちまったからお前らに回復魔法かけてもらったけど万全じゃねぇし休みてぇな。」
シャルは俺の質問に大きな欠伸をしながら答えた。
「え〜寝るの!?ハルートはどうする?俺はもうレストランを調査したくて調査したくてたまらんのだが!」
「...そうですね。お付き合いしますよ。」
少し顔色が悪かったがハルートはにこやかに笑った。
「ハルート別に俺一人でも構わねーし無理はすんなよ?
つーか、シャルは寝るとしてマカフィはどうする?」
「僕はねー!ショッピングに行くよ!この街には宝石があしらわれた装備品が名産の地区があるみたいだし探しに行くんだ。」
「おぉいいな!俺は..どこのレストランに行こうか...。こういう時スマホがあればなぁ。」
「お!それなら俺が寝てる間俺のやつを持って行っていいぞ。どうせ俺大して使ってねーし。」
「シャル!まじか!助かるぜー!」
そんなこんなで次やることが決まった俺たちはフープルで船まで戻ってきた。




