24話 「乗る前に教えてよお」
すっきりして戻ってくるとシャルたちはお茶会をしてた。
雑居房のスペースを上手く使いハルートのティーセットで飲んでいる。
「ねぇ...俺うんこしてる間にさ思ったの。」
「なんですか?ダイゴ。」
「伝記にさ乗ってたメトロの記録だよ。
旅の途中で疲れすぎた時に魔力の痕跡をその地点に残して違う大陸の宿にフープルして一晩休む、次の日同じ地点に戻ってきて冒険再開って書いてあるんだ。
船に魔力の痕跡残せばもしかしたら...宿屋に行けるんじゃ?」
「ダイゴ...?無理です。それはメトロの膨大すぎる魔力があってこそです。
街や遺跡のようなイメージや魔素そのものを感じやすい場所とは訳が違います。
その場所の魔素の流れと軸を全て緻密に正確に魔力の中に刻み込まなければなりません
そしてもし叶ったとしてもこの人数を運ぶのは難しいでしょう。往復になれば魔力はその分消費します。あなたの今の魔力ですとおそらく難しいかと。本の中に入った時見てしまったんですよ。伝説の賢者と勇者の魔力量を...。あれはレオが書いたものですから...その当時のメトロそのものが出てきているはずです。」
「...そっかぁ。やっぱこのまましばらく我慢するしかないのねぇ。」
「あきらめろ!ダイゴ!二段ベッドの上使っていいから!」
「シャルちゃん...僕何歳に見えますか。」
「あっはっはっ...。」
マカフィ、ハルートお前ら笑いすぎな。
「おりょ?俺なら大喜びなんだけどなあ。」
うんそだろうね。
君なら大喜びだろうさ。
「あっ!じゃあ僕とシャルが一緒に寝るのはどう??そしたら体重の軽いハルートだけが上に登るだけ済むし!」
「ちょ!マカフィ何言ってんだおめぇ!」
「シャルは黙っててよ!」
「うーん。つまり俺がこの二段ベッドの上に登るのは危険と?」
「うん、君やシャルみたいな筋肉多い人が乗ったら多分これ1週間と持たないよ。」
「ふええ...ほかの冒険者はどうしてんのかな。」
「多分4人で泊まるのはレアケースで大体この部屋に二人づつが多いと思うよ!だってクチコミ見た?すごいよ。」
マカフィはスマホを取りだして俺に見せた。
あっ、そんなのも見れるの?急に近代的になってきた。
マカフィが見せてくれたクチコミには、スタンダートクラスは部屋が狭すぎる、4人では泊まらない方がいい、カビ臭い、高すぎるなどと悲痛な叫びが書かれていた。
「ねっ!?いまパーティのうち誰かはスマホを持つのが普通だし...多分みんな調べてるんじゃないかな?」
「乗る前に...。」
俺はマカフィのケロッとした言い草に俯いていしまう。
「???」
「乗る前に教えてよおおお。」
「だ、だって君がなるべく安くしてレストランに資金を回したいって言うからさ!」
「....っそうだったぁ。」
まぁここまで酷いと思わないじゃない?
この世界にいるうちに通貨日本円との差額が掴めるようになってきた。
この船の運賃は日本円で換算して一人頭約400万円。スゥイートやラグジュアリーはその5倍くらいから...らしい。
ダイヤモンドプリンセスや飛鳥IIもびっくりなお値段です。
ちなみに定期船も出ている。そっちは比較的お手頃で定期券などもあってさらに市民証明またはギルド証明で若干割引がある。
そちらはエズルドーラまでしか行かない上小型船なので揺れも半端なくて上級者向きらしい。
それにその場合エズルドーラに着いたとて、そこからロイズまでの乗り継ぎが1週間かそこら以上空いたりと全くもって現実的ではなくそちらの案はなしになった。
ちなみに余談だが、調べたところクレジットカードはSSSランク冒険者、料理人、トレジャーハンターにしか持てないようになってるらしい。
「あぁ。お金がないよぉ。」
この世界の通貨の名称はは共通でJ。
国によってコインや紙幣のデザインは全く異なるものの言語統一が行われた頃単位だけ揃えられたらしい。
僕ちゃんの現在の所持金?
聞きたい?
30000Jです。
日本円で言うと約1000円で1J。
つまり今の所持金は3000万円てこと。
お金持ちに見えるでしょ?
この世界を舐めちゃ行けませんよ。
俺たちが居たアクアベリーの宿は一晩あたり安いところでも100J、考えられますか?
品川あたりのビジネスホテル2万あれば贅沢できるでしょ?
その5倍ですって奥さん。
なんなら環境最悪のホームレス街にあるお宿ですら50Jよ!つまり5千円あれば泊まれちゃうような上野のカプセルホテル位の場所でも5万くらいはしまっせ。
港町だからなのか物価がべらぼうに高くてクラクラするぜ。
アクアベリーから出るまでは一桁間違えて認識してましたよええ。
ちなみにルカと行ったレストランもコース料金を調べたところ2000J...。
言いたいことわかると思うけどレストランを開くなんてなったらあの街なら辺鄙なところでも結構なお値段が必要なわけですよ。
ちなみに第一候補地のマルジニアでは物価は半分くらいらしいけど...せいぜい半分よ?
お店を開くには莫大な資金がいるのは変わりはない。
アクアベリーのAランク以上の依頼はね単価が高いんですよ。
それでもこの有様なんだよね。
黄金の国エズルドーラの依頼に期待をするしかありませんよ。 宝くじでも当たんねぇかな。
まぁそもそもこの世界にあんのかわかんねーけど。
「ダイゴ...地道に頑張りましょう。大丈夫です。四人もいるのですから。」
「そうだよねぇ...なぁ、エズルドーラって物価高い??」
「...えぇ、世界最高の物価高はルコニアかエズルドーラかですからおそらくアクアベリーよりもさらに高いと思います。」
もう...神様?ねぇ?僕の所持金増やしてよおおおお!
運命操作してよおおおおお。
「えぇ!?まじ?」
「逆に言えば依頼も報酬が期待できるということですよ、それにダイゴこの前ようやくAランクに上がったじゃないですか。」
「俺一人なら大いに意味はあるけどさ、同時にSSになったシャルやマカフィが居ればその上も受けられるしなんの意味もないよぉ。」
「ダイゴ!?ロイズの街は物価が安いです。ちかくのキノコの村メリッサはもっともっと物価安であちらに着いてからならレストランも数件回れますよきっと。」
落ち込む俺を宥めるハルートはなんだか父さんみたいだった。
俺のが年上なんだけどなぁ。
な、情けねぇ。男らしくカッコつけたい!
でも...金がねぇんだよマジで。
まぁ頑張るっきゃないか!
俺の思考回路はいつもこうなのである。
基本的に格好つけたいのでカッコつかなくなるとシャキッとし出す...そんなおちゃめさんなのだ。
「頑張るかねぇ。
ところで話は戻るがこの日まで不愉快な長い船旅をどうこなす?」
「まずは!大浴場に行ってみるのはどうだ?」
「お!シャルいいね!大浴場はたしか利用料そんなでもなかったよな?」
「ああ!10Jだ!」
うんうん、1万円ね。ってたっか!なんじゃそりゃ。
「うーん、安いとはいえないけどまぁ払えなくはないな!
他には何があるんだっけ?食堂以外の設備って。」
「あー...たしかカジノがあったような。」
カジノ!?それだそれだそれだぁ!
「あーでもスタンダートの獣人は低倍率のところしか入れないってサイトに書いてあるな。」
「いい!それ!めっちゃいい!」
狙おう!一攫千金!4人全員の全財産を賭けよう!
賭ケグルイましょう?
「ダイゴ...私タロットが得意なのですが...あなたは賭け事をしない方が良いと出ています。やめましょう。」
ハルートくぅん!タロットってのは所詮78枚の戯言なのだよ。
と思いつつもハルートの信用を壊したくないので...辞めるか...くぅうう!
絶対勝つ自信あるのにぃ。
「はぁい。」
ハルートは頷きマカフィは笑う。
ハイハイ笑いたきゃ笑えよ!
「この退屈な時間...を過ごす方法は見つからない...か。」
「...それならさ、ダイゴ僕ひとつ提案があるんだ。」
「んあ?」
「お互いのことをきちんと知りたいんだ。もちろん嫌だなとか話したくないとかなら別だけど僕はハルートにも僕のことを知って欲しいし...ハルートのことを僕も知りたい。それから...ダイゴ?君は君の話をハルートにちゃんとした方がいいよ。夢を手伝ってもらうのなら尚更ね。」
....ごもっともすぎる。
でも...ベラベラ喋んのはさ...なんか違うんだよな。
必要な時が来たら必要な話はするし...それでいいんじゃね?とも思ってしまう。
ましてや俺とハルートは男同士だ。
背中で語り合いたいという...黙って着いてきて欲しいし困った時とは黙って助けたいという...気持ちがあるんだよな。
「ダイゴ...無理にとは言いません。あなたのこと少し聞かせてくれませんか?」
「...わかった。」
それから俺たちは情報を共有しあった。
生まれた時から今までの事を。
出会ったばかりだけど正直こんなにも深い付き合いをできる相手は今までであったことがなかったからなのか自然に言葉が出てきた。
父さんへの思いとかそういったものまで包み隠さずとはいかなかったけど転生してきたこと...転生前の人生についてはしっかりと話せた。
必要なことはちゃんと伝えたつもりだ。
みんなは黙って聞いてくれたしハルートもシャルやマカフィもお互いの話をし合う時もそれぞれ黙って聞いていた。
前の世界や神の世界のこととかもっと聞かれると思ったけどそこは深く踏み込まない線引きができるやはり信頼の出来るやつらだ。
話終わる頃に気がつくと夜が更けていた...。
俺は何故か眠れなくてみんなが眠ったあともデッキでぼーっとしたりしていた。
俺...世界の異物のはずなのに...みんなは関係ないと態度で示してくれた。
...ぼんやりとそれを実感して俺は少し涙した。うっすら不安に思っていたんだろうか?
俺って...だせぇな!
転生してからというもの全くもって忙しすぎる日々。
自分の夢を追いながらも仲間たちやまわりに支えられ振り回され...。
思えば前の人生を振り返る時間すらなかったな。
きちんと言葉にして話したからなのか、前の世界が少しだけ恋しくなっていた。
...本当は父さんに会いたいだけなのかもしれないけれど。
それは前の世界に戻ったところで叶わない。
俺は前の世界での父との記憶がものすごく大切なんだろうな。
あ〜うじうじしてらしくねぇ!
クソッ!父さん!見ててくれよな!
俺こいつらと夢を叶えてみせっからよ!
父さんが叶えられなかった世界一のフレンチシェフになってみせるぜ!
よし、らしくねぇのはここまでさ!
松風大護第二章新たにスタートだ!
がんばるぜっ!!




