第22話 「あなたの痒みはどこから?私は...」
俺たちが乗り込むのは...アクアベリーからロイズまでを行き来する定期便。
途中エズルドーラで停泊をする予定だ。
かつてメトロとレオはアジーニャ大陸の中腹までフープルで来たあと、歩いて密林と砂漠を超えて大橋を渡りシュリ大陸のアクアベリーまでやってきたらしいが...。
正気の沙汰ではない。
というのもこれから乗る大型客船でもアジーニャ大陸の奥の方にある砂漠の国エズルドーラまでの道のりは、5日くらいかかるらしい。
伝記によると、どうもメトロはアジーニャの大陸への侵入を制限されていたようで歩いていくしか無かったようだ。
うんうん、勇者と賢者はやることが違うなぁ全く。
「ダイゴ〜遅くなってごめん!」
いつもより少しだけ女の子らしいローブを着たマカフィといつも通りゴツイ聖騎士の鎧に身を包んだシャルが船着場にやってきた。
「いんにゃ俺も今来たとこ。ハルートが一番乗りだったよ。」
「あははは。そうか!マカフィの服選んでたら遅くなっちまったんだよ!すまねぇな!ダイゴ!ハルート!」
「うんうんかわいいかわいい。似合ってるよマカフィ。」
「んな!まじでそれな!こいつは女らしくしてた方がかわいいよな!?」
「あははは...それは多分シャルもだよ。」
「いいんだよ!今の俺にとってはこれが俺らしい格好だからさ!」
俺たちは乗船の手続きを済ませて四人部屋へとやってきた。
「ん〜ほこりくせ。」
埃って言うかカビですよこれ。
大丈夫?ねえ船だよこれ...カビ臭いの大丈夫?
て、ていうか窓ないんですか!?
部屋は二段ベッドが左右にひとつずつのロッジタイプ。
ん〜!日本のフェリーのやっすい部屋みたい〜!
豪華客船を楽しむことは金持ちのためだけに許された遊び...貧乏人は所詮移動の手段でしかないということを思い出させてくれる素敵な仕様です。
勘弁してよぉ。フランス時代の寮よりひどいよぉ。
早くエズルドーラについてくれよぉ。
停泊は三日あるからその間だけでもホテルで寝ようかしら...。
いやいやいや...それじゃ節約にならん。
せっかく割4ならやすいよねという話でまとまったのに...。
デッキで寝てもいいですか?
こんな狭いところに四人で寝るの嫌なんです。
波にさらわれて貝になりたい。
「お、趣のあるお宿ですね。」
ハルートくん顔が引きつってます。
それにお宿って...お部屋の間違いだよ。頭働いてないのかい?めずらしいねぇ。
「そ、そうだねぇ。」
マカフィはのほほんとしているけど少し嫌そう。
「そういやマカフィ!行きはどうやってきたんだ?」
「あぁ、それね。転移魔法が使える旅の人が近くの街に居たからお願いしてアクアベリーに飛んでもらったんだよ。なんか遠いところにお願いします!って言ったらアクアベリーだったの。」
「なるほどぉ。たしかに地図で見たら最北と最南であげく最東から最西に移動してるもんな。そのフープル使いはすごいなぁ。」
「なんかね、今思い出したけど伝説の賢者の末裔で世界中を旅してるんだって。文献を漁ったりとかそういうののためにさ。」
「ほえ〜!そりゃすげぇな!」
「そうそう!それがなかなか賢者メトロに雰囲気が似てたよ。この前本の中に入った時びっくりしたよ!あ!あの人に似てるって!」
「...?妙じゃないか?賢者メトロは子孫を残せないはずだろ?」
「あぁレオと結婚したからそうなるよね...?となるとあの人は賢者メトロ本人...?まっさかね〜。」
....だとしたらどんだけ長生きしてんだよ。
いや?まさか禁断の時間移動の魔法を使って移動してきたとか?
「まあいいや。それより今はこの酷い部屋で一ヶ月近くどう過ごすかの方が大事じゃないか?」
「....そうだねぇ。ベッドのフレーム歪んでるし今にも崩れそうだしね。」
「次んとこで思い切り派手な依頼こなしてグレードアップってのはどうだ?」
「ま、まぁね...そうねぇ...でも差額払うだけでも最低でも三倍くらいちがうんだよねぇ。」
「俺の分を気にしなければみんな払えるかもしれないだろうに...ほんとすまねぇ。」
松風大護...現在皆様に多大なる大迷惑をおかけしています。
「いんや、流石に僕たちもこのクラスの船のスタンダート以上のクラスにしてたらお金は持たないよ!でもね、大丈夫だよ!ダイゴ!エズルドーラは黄金の国!依頼の単価は高いらしいし!ハイクラスのラグジュアリーやらスゥイートは無理でもカジュアルとかその辺くらいなら窓のあるまともな部屋に移動できるだろうから。」
マカフィちゃん僕と結婚しよう!今すぐにこの海の上で...。
「まじ!?雑居房生活からはおさらばできそうなのね。そうなったらし仕方ない...エズルドーラではレストランを諦めて依頼に専念しよう。フープルがあればいつでも来れるだろうしな。」
「おう!そうすっか!ダイゴ!今度こそ俺が暴れられる依頼にしてくれよな!体がなまっちまうぜ。」
君、本当に女の子だよね?あってるよね? あまりにもチンチンついてそうな血の気多さだけど大丈夫?生えてきてない?確認してみて。
「う、うん!そうしような!」
ていうかさぁ、それよりさぁ...船上のレストランにも行きたいのにさぁ...俺たちの部屋スタンダートコースの人間は食事が着いてない所かレストランにすら立ち入り禁止ってどういうこと?
入るのを許されているのは...食堂だけ。
しかも不味い飯に都度払い!やだやだ!
「ダイゴ...?もうすぐ船が出ますよ。みんなでデッキに出てみませんか?」
俺は終始不満気な顔をしていたんだろうね。
ハルートが気を使ってくれました。
ゴメンニ...。
「あぁ!行ってみようか。シャル、マカ行くぞ。」
「おー!」「はーい!」
シャルたちにも呼びかけ俺たちはデッキへと向かった。
海の風は気持ちいい。潮の香りと煙突から吹き出る煙から香る石油ストーブみたいな匂いが混ざって旅立ちますって感じの雰囲気満載だった。
ワン〇ースだったらル〇ィが大きな声で喜びそうだ。
「タバコ吸いてぇなこれ。」
シャルはタバコを吸う動作を手でしながらそう言った。
「こぉら!聖職者なんだからダメ!タバコ吸うホーリーナイトがどこにいんのさ!」
「...ちぇっ!マカフィはいつもそればっか!」
「シャル?タバコは体に悪いんだよ?」
「んな事はわかってんだよ!そうは言ってもこんなに気持ちいのいい旅立ちの瞬間...最高の一服を決めたいに決まってんだろ!?なぁ!ダイゴ。」
シャルは俺の方を見る。
「すまねぇ、俺は喫煙しないんだ。舌が鈍ったりしそうで。たまに水タバコの店には行ってたけどそれもフレーバー目当てだったし。」
水タバコ、つまりシーシャはこちらの世界でも普通にある。
のでこういう情報なら言っても問題ないかしらね。
「おめーも紙のタバコ吸わねーんかよ!ちっ...ハルートは?って吸うわけないか。」
「いえ、私はパイプのタバコをたまに嗜みますよ。あまり吸うと喉を痛めてしまうので本当にたまにですが。田舎の父が好きだったのでその影響なんです。
吸うとルコストの実家の香りを感じることができてなんだか懐かしい気分になれるんです。」
「あぁ...何それ。いいね。」
エモ...ハルート!エモすぎる!お前は今日からエモート!
そうです、あなたがエモートです。
「あはは...ダイゴ。
あなたにもそういうのないですか?つい故郷を思い出すようなもの。」
...うーん?なんだろ。
「...。おれにはよく分からないけど料理をする時作ったものによって嫌な記憶だったり楽しい記憶だったり思い出すこともあるかなぁ。」
「いいじゃないですか!それも結構趣深いです。」
「ん〜そうかねぇ。アロゼしてる時とかはまだ子供の頃よく火傷して父親に手当してもらったこととかを思い出したり...考えれば出てくるもんだな。」
「おぉ!ダイゴ!俺にもあるぜ!」
「お?シャル。なになにいってみぃ?」
「この剣...師匠にもらったんだ。死んじまったけどな!この剣を見ると師匠を思い出すんだよ。」
「...そうか。お前にとってそれは世界に一つだけの師匠との繋がりなんだな。」
「おう...俺、だから教団を辞めても聖騎士は辞めないんだ。」
「あぁ...頑張れよ。お前がどんなふうに生きたって俺たちは仲間だぜ!」
っ...自分で言っておいてなにこれ!
はじーーーー!
海に飛び込みてえええええ。
恥ずかしさから広がる痒み。
あなたの痒みはどこから?
私は尻穴から...。
このままじゃ火を吹いてしまいますたすけてぇ。
「あっ...出航しますよ。」
ナイスハルート!
船は港から動き出しゆっくりと海の上を進み始めた。
「おお!ほんとだ!すげーすげー!」
シャルの視線は離れていく港に釘付けになった。
「あは...出航あはは...。」
あ〜よかった。このままじゃ俺本当に顔から火が出るところだった。
俺が恥ずかしさに悶えてる時マカフィの奴顔を真っ赤にして笑うの我慢してんだよ。
やな感じ〜。
僕にはあるんですよね...。
ふふ己の棒が...使っちゃうよエクスカリバー...。
「ダイゴ?船酔いですか?目を細めてどうしたんです?」
「あぁちょっと天誅が必要なおバカさんに狙いを定めてだけ。大丈夫!僕らは友達!」
「あっはははは...全く意味がわかりませんね。マカフィ...ダイゴはあなたを見てなにやらよからぬ事を企んでるようですよ。」
「ちょっ、ばっ、ハルート!余計なこと言うなよォ。」
「なになにぃ〜僕でえっちな妄想しちゃったのぉ?だめだよ!ダイゴ!僕はシャルの彼女になるんだから!」
...俺は不覚にも、自分がバカにされたことよりもシャルの彼女になると自然に言えるようになったマカフィに感動してしまった。
「マカフィ!?何言ってんだお前!俺もお前も女だろうが!?もう許嫁である必要はなくなるかも知んないんだぞ!?」
マカフィのトンデモ発言に慌てるシャル。
気にせず自信たっぷりで返すマカフィ。
「関係ないですね。僕はずっとずっとかわらずに君が好きだよ?これからは本気で彼女になる為に狙いに行くから!覚悟しておいてね。」
うっふ〜ん、天然の百合が発生してるわぁ〜ん。しかも美女二人よ〜!
間に挟まりたいわ〜ん。
「っ...。」
マカフィの言葉に珍しく照れた顔のシャル...。
尊い...こんなところに入る隙なんておじさんにはありません。
なんか生きててごめん。
生まれてきちゃってごめん。
「馬鹿なこと言ってんな...よ。」
照れながら絆されているシャルさん...。
あんたって人はなんて分かりやすいんですか?
はい、キース!キース!
と野次を投げたいの必死に抑えながらハルートの方を見るとうんうん頷いていた。
「...わかるよハルート、そうなるよな。」
「ダイゴ...なんですかその顔。ぷっは...。」
俺が渋い顔をしながら肩を叩いたらハルートはツボに入ってしまった。
俺たちってよそから見たらすごくバカっぽくない?大丈夫そ?




