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第5章  第2話  【 法務の亡霊、地獄の管理者。お前の魔法を、俺が経済の力学へ転換(トランスレート)】

「遺骨の権利」――死霊使い(ネクロマンサー)との交渉は、予想を遥かに超える難航を見せていた。

北の廃都、白骨が散乱する玉座の間。死霊使いの長、リッチ公が冷笑を浮かべて俺の提示した契約書を突き返す。


「権利だと? こいつら死体は俺の大事な労働力。お前のルールで、俺の軍団を無効化? いい加減にしろ、法務の亡霊め!」


俺は鼻で笑い、死霊使いの冷たい視線を正面から受け止める。


「労働力? 笑わせるな、それはただの腐肉の集積。衛生管理もできず、病魔を撒き散らす災厄の結晶。俺が求めるのは、死者の権利の再定義。遺族の同意なき使役、それは魔界法における明白な、不法な不作為の背信!」


リッチ公が杖を叩きつける。部屋中の骸骨が一斉に立ち上がり、俺を包囲する。


「不法だと? ここは魔界、倫理など無価値な概念! 俺の力こそが唯一の法であり、絶対の体験!」


俺は一歩も引かず、むしろ包囲の中心でリズムを刻み始めた。


「絶対だと? それがお前の傲慢の極致。腐敗する死体、それがお前の経営の死地。労働力の欠如、それは管理能力の欠如。死者の尊厳を無視したお前に、この地獄を統治する資格など皆無の余地!」


骸骨たちが一瞬、迷いを見せて動きを止める。俺の論理が、死霊使役の「呪術の回路」にバグを混入させたのだ。


「貴様……俺の回路に、何という言語の干渉プログラミング! 死者の意志、そんなものこの世に存在しない、ただの虚栄の心情!」


「意志がない? だからこそ、俺が契約という名の遺言を代行。お前の使役、俺が管理という枠で強制執行。遺骨を公有化、利益は公共へ再投資の還流。お前の独裁、これにて契約解除の完全な没収!」


リッチ公の杖から光が消え、骸骨たちがガラガラと崩れ落ちる。奴の権能の根源――「管理の専横」を、俺の契約条項が論理的に無効化したのだ。


「俺の、俺の軍団が……お前の理屈一つで、霧散だと……?」


「軍団じゃない、ただの粗大ゴミの山。片付けるのが俺の仕事、地獄の環境改善サニテーションの提案。さあ選べ、協力して公衆衛生の向上の共犯になるか。それとも、法的に裁かれ、魔界から完全に排除(追放)されるか」


リッチ公は震える手で杖を落とした。俺は静かに、最後のトドメを刺す。


「死者の権利、生者の利益。これらを両立させるのが、俺の真の法務の真髄。リッチ公、お前の死霊術は、これより公共の福祉のための、インフラ建設の主力として再編する」


俺は地面に、新しい「死体利用の適正化法」を書き刻んだ。

暴力で解決するんじゃねえ、地獄の歪みを論理で正す。


「法務の亡霊、地獄の管理者。お前の魔法を、俺が経済の力学へ転換トランスレート。さて、次のお仕事は、地獄の河川の水質汚染の法的解決……だ」


リッチ公は無言で同意の印を刻む。

地獄がまた一つ、俺の「論理」で回り始める。

カチリ、カチリと、地獄という巨大な時計の歯車が、法という名のオイルで滑らかに動き出す音がした。


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