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第5章  第1話  法で地獄を回す、最高にブラックで、最高にスリリングな日常(ビジネス)が、今日も幕を開ける。

地獄の魔王を論破し、そのシステムを「調停者」として掌握してから、季節が一つ巡った。

俺の目の前には、相変わらず無骨で、血の匂いのする連中が並んでいる。だが、以前のような殺気はない。

あるのは「明日の取り分」を巡る、ぎこちない交渉の気配だ。


「……第12条。集落間の狩場境界に関する修正案、以上だ」


俺が読み上げると、大男のオークが鼻を鳴らした。


「おい、法務の調停者。その修正案、俺たちに不利な展開。これじゃ狩場の権利が不鮮明。俺たちの食い扶持、どこへ点在?」


俺は眼鏡を外し、奴の目を見据える。地獄仕込みのリリックで、論理の網を張り直す。


「不利だと? それは主観の偏見。境界の曖昧さが生むのは、殺戮の連鎖という危険。権利を確定させれば、争いは皆無。お前らに約束するのは、安定した獲物の分配という法務の恩恵だ」


オークは眉をひそめ、唸る。俺の言葉は、奴らの荒っぽい脳にも論理の楔を打ち込む。


「だが、獲物が増えなきゃ、分配も限界。冬の備えに、俺たち沈没の事態。あんたの言う法じゃ、腹は満たされぬ展開」


「だからこそ、協力の増強。狩り場の管理を共同で運営する方向。一人じゃ無理な獲物も、群れれば倒せる強大な存在。分業と共同、それが俺の最強の経済政策マーケティングだ」


オークの仲間たちがざわめく。暴力以外の「解決策」という選択肢に、彼らの野蛮な知性が揺れている。


「共同運営……。獲物を共有し、リスクを分散? 暴力のコストを、利益に転換? あんた、魔界の常識を本気で変転アップデートする気か?」


「魔界の常識? そんなものはただの古い遺物。俺が作る地獄は、奪い合いなんて低俗な演出。知恵を絞り、効率を最大化。この荒野を、俺が富の源泉へと再設計リデザインしてやる」


俺は地図を広げる。そこには、ただ殺し合うだけの荒野が、緻密な物流拠点と共同採掘場として記されている。

かつては「死の行軍」だったものが、今は「労働と対価の循環」へと姿を変えつつある。


「さあ、ハンコを押せ。……いや、ここは牙の刻印でいい。同意の証拠、この地獄の新たな契約書。拒否すれば飢えるが、乗れば繁栄という未来を享受できる」


オークが、指先を血に染め、羊皮紙に刻印を押した。

交渉成立。また一つ、地獄のピースが嵌まった。


「ふん。法務の亡霊、あんたの舌先一つで、地獄が色を変える。……まあいい。食えるなら、その契約、乗ってやる」


「賢い判断だ。地獄の住人よ、お前たちのその強欲、生産性へと変換してやる。さあ、次は南の死霊使い(ネクロマンサー)との遺骨管理を巡る、権利の交渉だ」


俺は立ち上がり、地獄の風に外套をなびかせる。

かつての法廷では味わえなかった、この震えるほどの生の実感。

法で地獄を回す、最高にブラックで、最高にスリリングな日常ビジネスが、今日も幕を開ける。


「ビジネスの開幕、地獄の再生。俺の法務リリックが、この混沌を支配する、究極の経営学マネジメントだ」


さあ、次はどこの不条理を、論理で書き換えてやろうか。


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