第一話 八五三年前
第一話 八五三年前
猛吹雪の中、スノーモービルを爆走させているのでゴーグルで覆えない口元に雪が張り付き、呼吸の妨げとなっていた。俺は運転手と自分の間に座る妹の芽衣を腕で守りながら、もう片方の手で口元を拭った。
「運転手さん! 東京ドーム、ほんとにこっちであってます!? 何も見えないっスよ!」
「大丈夫だ、コンパスがあるし土地勘もある! それより、ええっと……そうだ、あんちゃんらの名前聞いてなかったな! なんていうんだい!」
「俺は伴里仁、んでこっちは妹の芽衣です! 同伴させてもらって、本当にありがとうございます! おっちゃんが傍を通りかからなかったら、身動きできなくなって氷像になってたとこでしたよ!」
「奇跡ってぇのはあるもんだなぁ! しかし子ども二人でこの吹雪の中に飛び出すなんて危ねえだろう! スマホかラジオで緊急避難警報聞いて驚いちまった、てぇところだろうが、まず歩行ができる天候か十分に確認しろって教わらなかったのか!?」
「芽衣はまだ十歳ですけど、俺はもう十八っす! 言うほど子どもじゃないっスよ! それに支援物資を受け取るために吹雪の中を何度も歩いてきたから、こんなの慣れっこです!」
「と言っておいて遭難してんじゃねえか、馬鹿タレ! 親はどうした!」
「六年前に支援物資を受け取りに学校行ったきり戻ってきませんでした! まあ、間違いなく遭難して、どこかに埋まってしまってるんじゃないかと……!」
俺はそのように諦めており、今は俺が親だという自覚を持って妹を育ててきた。
芽衣もきっと理解していることだろうと思っていたが、
「生きてるもん! パパもママもどこかでわたしたちのこと待ってるもん! きっとシェルターに避難して、わたしたちが来るのを待ってるんだもん!」
俺の胸元で聞こえてくる芽衣の声は強い拒絶混じりの悲鳴だった。よく考えてみりゃ、そうか。俺も両親が死んだと受け入れるのに三年はかかった。俺はかろうじて学校生活を体験したが、芽衣が生まれた時には小学校は全部雪に埋まり、この子にとっては家族が世界の全てだった。親の死を受け入れるには幼過ぎるし、世界を知らなさ過ぎるのかもしれない。
「この調子なら今日中に十階ビルは埋まっちゃいそうっスね! 吹雪、吹雪でたまらないっスよ! いつ晴れるのやら!」
「ああ!? お前さん、知らんのか! もう吹雪が止むことはねえぞ! 断光粒子が世界を覆い切っちまったからな!」
「ええっと、断光粒子って、確か何十年前だかに戦争で使われた兵器っスよね!?」
「ああ、今から二十年前だから、二〇二八年のことだ! 二六年頃にあちこちで戦争が起こって、激化した結果がこれだ! 相手国を弱体化させる策として、空に断光粒子をばら撒いて太陽光を遮断する作戦を実行した国があってなあ!」
「あっ、授業で聞いた覚えありますよ! 相手国は断光粒子を爆弾で吹き飛ばそうとして、結果粒子が宇宙に散っちまったっていう!」
「そうだ! そしてその粒子がすっかり地球を覆っちまった! もう二度と太陽は拝めねえ! 人工太陽も欠陥品みたいだしなぁ!」
空を見上げればかすかに丸い光が見える。太陽の代わりになるはずの人工太陽は打ち上げの衝撃のせいか、他に原因があるのか、とにかく加熱が想定よりずっと遅く、俺たちはこうして雪の世界で生きることを強いられている。
「予定では六年前には光を放って雪を溶かしてたんすよねぇ!? はぁ……もし実現してたら両親ともども生きてたのかなぁ……」
「あんちゃん、正面見てみろ! 明りだ! ようやくドームに到着だぜ!」
顔を下ろすと人工太陽なんかよりもはるかに明るいものが見える。あれは国の重要拠点に設置された灯台の明りだ。
「ふう、話してたおかげで何とか意識保てた……おっちゃん、改めて感謝します! おかげで生きられました! ほら、芽衣もお礼言いな」
「おじちゃん、ありがとう! 今度しえんぶっしにお菓子入ってたらごちそうするね!」
「おう、そりゃありがたい! が……なんか様子がおかしい! 二人とも、降りても俺の傍にいろ!」
ドームの目の前でスノーモービルを止めた途端、エンジン音の代わりにたくさんの人間の怒号が響いて聞こえてきた。除雪された入口に大勢が集まっており、その人たちを自衛隊の隊員が牽制していた。
「みなさん話を聞いてください! 東京ドームは五年前に接収されています! ここは国の重要施設で避難場所ではありません!」
何度も繰り返しているのか、メガホンから聞こえる音声はがらがらと枯れていた。「おい、どういうこっちゃ! わしらは生活が不可能になったら東京ドームに避難しろと聞いてるぞ⁉」とおっちゃんが声を張り上げるが、ライフルなんていう物騒なものを携えている自衛隊員たちは同じことを繰り返すばかりだ。
「おにいちゃん、シェルターには動物たちもひなんしてるんでしょ? 羊触れるかな? あとお肉食べたい」
「はは、人間らしいド直球な欲求だな。確かに各地の避難シェルターで家畜を育ててるはずだから、レーションだけじゃなく色んなものを食べれる……はずだったんだけど」
「みんな何さわいでるの? 今日からここで暮らすんだよね?」
「そうしたいんだけどな。住んでたビルはもう埋まっちまっただろうし。でも、雲行きがどうも怪しい。接収って何のこっちゃって話だ」
一、二、三……と自衛隊員を数えてみれば、四十人近く立ち塞がっている。警備にしては厳重過ぎるし、分厚いチョッキにヘルメット、腰にはハンドガンが両脇に二丁と重武装だ。一体何をそんなに警戒しているんだか。
「おーい、隊員さん! せめてうちの妹だけでも入れてもらえませんか! まだ十歳で体力ぎりぎりなんス! あ、できれば肉食わせてもらえないっスかねぇ!」
「ん? スノーモービルで来た子らだな? 今すぐ西へ向かいなさい! ここは五年前に避難所ではなくなった! 山梨第三シェルターはぎりぎり余裕があるという話だから、そこへ向かえ!」
「や、山梨!? いやいやこんな天候じゃあ無茶ってもんでしょう! 途中で凍えて死んじゃいますって! それに接収ってどういう意味っスか?」
「国の所有物となった、という意味だ! ここは人類存続を賭けた研究施設! 将来的には避難所に戻す予定だが、現在は一般人の立ち入りは禁止されている! それに今、とある事情で我々も含めた全員の安全が脅かされているのだ! だから今すぐ! 全員この場から逃げろ!」
逃げる? 何から? 分からないが応答してくれた自衛隊員さんの声は非常に緊迫したものだった。
「おっちゃん、言われた通り西へ向かいませんか? 何か嫌な予感するんですけど」
「そりゃ無理だ、燃料がねえ! ガソリンを分けてもらえたとしても、到着までもつかどうか――」
その時だった。犬? の遠吠えが近くから聞こえてきた。
その遠吠えは幾重にも重なっており、耳の奥がぎゅっと苦しくなる。
「なんじゃあ? オオカミ、なわけないよなぁ?」
「おにいちゃん、わんちゃんがいるの? なんか……すごいいっぱいいるみたい」
「いや犬は家畜じゃないから育ててるわけない。愛玩動物のほとんどが絶滅したはずだ」
首筋が粟立つ鳴き声をかき分けて、自衛隊隊員の一人が叫んだ。「来るぞッ‼」と。
そしてあろうことか俺たち民衆に向けてライフルの銃口を向けてきた。
「は!? ちょっと待て、俺たち何も悪いことしてな――」
俺の言葉は、入口を囲うようにそびえている雪壁が爆散した音でかき消された。
驚愕する俺たちの視界に現れたのは無数の獣。
犬、でもオオカミでもない。まるでフィクションから飛び出してきたような、三つ首の怪物――
「ってぇ! 撃てぇ‼」
自衛隊員たちはまるで襲来を予測していたかのように迅速に弾丸を放った。
当然、俺たちはパニックだ。顔の横を弾丸という死が横切り、驚いて避ければ三つ首の獣が血を吐きながら、牙を剥き出しているのが見える。
「がっ! やめ、いた、助け……‼」
「ああああああっ⁉ 痛い痛い、い、い……‼」
「やめろ、やめろ! 何だよこれ、何が起こってんだよぉ⁉」
混乱を極めた民衆が悲鳴を上げながら逃げ惑い、雪の中から現れた怪物に食いちぎられている。また、流れ弾に倒れる人も大勢見えた。
「おい、あんちゃんら! スノーモービルへ走れ‼」
「あ……あっ、はい!」
おっちゃんの声に我に返った俺は芽衣の手を取って急ぎ反転、後を追うように駆けだした。
――が、ずるりと手袋が抜け、妹の手の感触が消えた。
振り返れば雪に足を取られた妹の姿。そしてそれを素早く見つけた三つ首の怪物――
「芽衣ッ‼」
獣と同時に走り出し、俺が先に妹へと辿り着いた。
覆いかぶさり、起き上がらせ、半ば投げるように前へと走らせ――
「いっ!? が、ぁぁぁあっ‼」
残虐な唸り声が耳元で聞こえ、右胸が牙で貫かれてしまい、左腕が引きちぎられるのが見えた。
口から血が溢れ、芽衣の「おにいちゃん‼」という声が水中にいるかのようにくぐもって聞こえる。途端、夢心地のように意識がぼやけた。
自衛隊員たちのライフルの音が聞こえると、牙がずるりと抜けた。彼らは俺を囲んで
「負傷者一名‼ 救護班、急げ‼」と叫んでいる。
改めて見てみると、やっぱり胸にぽっかり穴が開いていた。それに牙で裂かれた首から血が吹きだし周りを赤く染めている。
「おにいちゃん‼ やだ、死なないで‼ 目を閉じないで‼」
駆け寄ってきた芽衣の顔がぐにゃりと歪む。今にも意識が消えそうだが、妹を押しのけて白衣姿の人たちが現われたのはぎりぎり認識できた。
「これは……絶望的だねぇ」
俺を覗き込んでくる初老の男が何てことのないトーンでそう言った。
「しかし、良い被検体になりそう……こんな若者の肉体をいじれる機会……そうない。ほら、聞こえてるかね? 少年……死にたくなければ頷くんだ!」
俺は必死に空気を吸おうとして血を吐き出した。まずい、本当にまずい。これ、ガチで死んじまうやつだ。脳内麻薬が分泌されているのか痛みは意識から遠ざかっていたが、死のカウントダウンが物凄い早さで進んでいるのを感じた。
「ほら、どうする? 妹を一人にしたくなければ……け。署名は妹に代筆……で良いな? さあ、人類存亡、ひいては日本のため頷……んだ」
俺は必死に意識を繋ぎ留めながら何とか頷いた。
初老の男はにやりと笑うと「担架をここへ! 他の民衆たちは捨て置け、こちらが最優先だ!」と叫んだ。
俺は担架に乗せられドームの中に大急ぎといった様子で運び込まれた。追いかけてくる芽衣に大丈夫だ、大丈夫、と視線を向けるが声は血のあぶくとなってしまった。
俺ここで死ぬの? やっぱダメっぽいよなこれ?
一人孤独に雪の世界で泣き続ける妹の姿に、嫌だ、ダメだ、生きろ、生きなければ、と俺は必死に意識を手繰り寄せるが、しかし次第に遠ざかっていき――
消える瞬間、俺は水の中にぶち込まれた。
口から吐き出される血で視界がいっぱいになり訳が分からなかったが、すぐに水が体内に入っていき、俺は腹いっぱいメシを食ったかのような感覚に陥った。
体は動かない。しかし瞼を少しだけ開くことができた。
どうも俺はでかい試験管みたいなものに入れられたらしい。芽衣は二人を遮るガラスを叩いて俺を呼んでいるのが見える。そしてせわしなく動く白衣の人たちも視界に入った。
「所長! 本当に――――『D』をこの子に⁉」
「あれは廃棄予――! もしかしたら、外の脱走した試験体より――倍も、危険――!」
「喧しい、本人の許諾――署名も妹さんがしてくれ――人類が、いや日本国民の血を後世に残し、世界の覇権――ためにはやるしかないのだよ!」
ちくちくと体に何かを刺される感覚があった。何だ、これは……灼熱を帯びた何かが俺の中に入って来る。それは末端まで広がっていった。
苦しいし痛い……が、そのおかげで意識が保てる。俺は灼熱感に堪えながら、大丈夫だと芽衣に向けて瞬きしてみせた。
するとどうだろう、芽衣は泣いていたのが嘘かのような能面で俺を見上げていた。
えっ? と驚いて思わず瞬きをすると、芽衣の体が少しだけ大きくなっていた。瞬けば瞬くほど芽衣の体が急速に成長していく。
やがて彼女は眼鏡をかけ、白衣に身を通し、俺を救おうとしてくれている……はず、の研究者みたいな人たちと同じ格好となった。コード『D』がうんたらかんたらというワードが微かに聞こえ、「生命維持に問題なし」「亜人化にいたらず」「階級は最高に設定」「記憶学習、開始」と訳の分からない言葉が耳の中を通り過ぎていく。
芽衣? そこにいるのは芽衣なのか? 何が起こってる? お前は、俺は、どうなっちまったんだ?
重たすぎる瞼を必死に上げて見てみれば、大人? になってしまった妹が俺を見つめていた。
「お兄ちゃん――して。私たちは西へ避難する。人類の全てが、もう間もなくコールドスリープで眠りに就くの。だからどうか信頼できるパートナーを――今、手に握らせている『隷属機』は特別製。『亜人』だけでなく、お兄ちゃん自身も――だから、命を預けられる人を探して!」
何だって? もう一度言ってくれ。上手く聞こえないんだが――と、半ば閉じている瞼から視線を送るが、徐々にホワイトアウトして、妹なのか何だかよく分からない女性の姿が見えなくなってしまう。
今度は何だよ、ついに死んじまうのか?
死と孤独が恐怖となって襲いかかってくるが、真っ白な世界に何者かの輪郭が浮き上がってきた。
芽衣? と最初は思ったが、どうも様子がおかしい。
シルエットの大部分は人間だが……コスプレってやつか? 頭にネコっぽい耳がついており、その人影の後ろで尻尾のようなものが荒々しくブンブブンと揺れている。
「――願い、その『隷属機』で――治癒――を! 早く――!」
徐々に視界が晴れていき、ついに人影の顔が露わになる。
頭や腕から血を流し、必死に何かを訴えかけてくるその少女――夢の中でみた中学生ぐらいの芽衣にそっくりだ。
俺はその顔に触れようとして右腕を上げた。そして気づく。桜模様の溝が刻まれた、ハンドマイクみたいな機械を握っていた。そしてどういうわけか腕から水が滴り、仰向けになっていた体にぽたぽたと落ちてきた。
「あん? 何だこの状況――ってぇ! 俺、裸じゃねえか! 服! 服どこいった!?」
慌てて起き上がろうとして、しかし獣耳の少女に押し倒されてしまう。
少女は荒く息を吐いて口元の血を拭うと、何かを覚悟するように深呼吸してから鋭い視線を向けてきた。
「さあ、私の言葉を繰り返して! 【今この時をもってミコナを隷属下に置く】!」
「はい? あのぉ、どちらさんで? 芽衣、じゃないのか?」
「状況は後で説明するから、早くして! 【今この時をもってミコナを隷属下に置く】!」
「あ、あぁ、今この時をもってミコナを……」
「【隷属下に置く】!」
「レイゾクカに置く……?」
何のこっちゃ分からないが、とにかく求められたことを言い切った。
これが何を意味するのか、と困惑していると、目を疑う変化が少女に起きた。
まるで電子回路――彼女の体表を光が駆け巡り幾何学模様を描いたのだ。
「っ……これで、私は奴隷、か……」
「えっと、これで良いのか? てか怪我大丈夫? めちゃ痛そうだけど」
「それについては、今、解決したわ。もう一つ唱えて。【指令:自動修復】、起動!」
「オーダー、オートリカバー起動。ほら言ったぞ。早く誰か助けを呼んで怪我を見てもら―」
言いかけたところで俺は驚愕で言葉を失ってしまった。少女の体が突然淡い緑色に輝きだし、流れ出ている血が止まって傷がみるみるうちに治っていくのだ。
俺、やっぱ死んじまって、どこか違う世界に生まれ変わりでもしたのか?
そんな疑問は、突然の爆音にかき消された。少女の背後の壁や何かの機械の残骸やらまとめて吹き飛ばし、例の三つ首の怪物が現れた。
いや、俺が見たのとは違う。何倍……いや、何十倍も大きい。
仰天して目ん玉をひん剥いて俺は固まってしまう。そんな俺と怪物の間に少女が立った。やはり頭からは動物の耳が生えており、質素な短パンからは髪色と同じ黄金色の尻尾が生えている。見ているものが虚構か現実か分からなくなり、開いた口を閉じることができない。
「お前への恐怖と恨み……そして悲しみは、このミコナが全て晴らす! 私の家族に手を出した報いを受けろ‼」
例えるならば、それは黄金の砲弾――
ミコナという名前らしい少女は『人智を超えた』脚力で遥か頭上へと飛び上がった。
そして天井や壁を電光石火で駆けまわり、追いつけていない怪物の頭一つに蹴りを入れた。
怪物の頭はその衝撃に耐えられず爆散し、残り二つの頭が苦しみもがいた。だがその頭たちもたちまち黄金の少女による一撃で粉砕――
俺の常識から外れた存在同士の戦いは、少女の圧倒的な力で終わった。
すたっ、と地面に下りてきた少女の横顔を、俺の周りでビカビカ光ってる機械が照らし出す。やはり芽衣にそっくりだった。
「なあ、あんた。俺、妹がいるんだけど、君とそっくりでさ。二人は何か関係が――うっ⁉」
てっきり少女と二人きりだと思っていたのだが、どうやら彼女は大所帯でここを訪れていたらしい。目の前に大勢が現われ、西洋の両刃剣、刀、槍、鎌などが俺の喉元に突きつけてきた。
「人間! それ以上、言葉を発するな!」
「くそっ! ミコナちゃんが奴隷だなんて……」
「もしミコナちゃんの身に何かしたら、タダじゃ済まねえからな!」
俺は無意識に両手を上げ、凶器から遠ざかるように顎を引いた。
俺の前に立ち塞がる全員が人間であって人間ではない――ミコナという少女と同じように獣耳が生えているものもいれば、背中から大きな翼を生やしている人もおり、爬虫類を思わせる鱗を身に纏う者たちもいた。
「ま、マジであんたら何なんだ? 俺、あの後どうなって――」
「だから喋るなって言ってんだろ!」
一番近くにいたクマみたいな男が槍の柄を顎にぶち込んできた。
それはもう鮮やかに頭の中身を揺らされてしまった。抗うことも叶わず、意識がどこか遠くへ……吹っ飛んで……消え――




