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2-3(表紙あり)

挿絵(By みてみん)

さ〜て♡

余裕でモアち倒せちゃったし2戦目もこのまま〜・・・って思ってたのに。

モアちの動きが読めなくなった。

まさか逃げた?

いや、あのモアちが易々と負けを認めるとは思えない。

だってモアちは・・・。

いやいや!それは今関係なしなし!


タ・・・タン・・・


ん?


タン・・・タン、タタタタ


なに?この音・・・近づいて来る

まさかモアち!?


タタタタタタタタタタタタタタ


わざわざ音立てて近づくとか捜査官失格___

・・・って!

「なんじゃこりゃーーーーーー!!!?」

悲鳴が聞こえる直前、観覧席にいた私が目撃したのは数えただけでも数十個はある無数のBB弾・・・

に酷似した何かが飛び交う光景だった。

「あれって確か・・・」

「はい、研究部の倉庫にまだ余っていたので、検査が始まる前に予めエリア内に撒いておきました」

普通のBB弾に見えたそれは、障害物のない密室で使えばほぼ無限に跳ね返り続けるほどの弾性を持つ

ゴム弾だった。

以前研究部が敵の撹乱目的で開発したが、空間把握と弾道計算が同時にできなければまともに扱えないという理由であえなくお蔵入りとなっていた。

突然の奇襲に戸惑うヒバリくんの不意を突き、ゴム弾に混ぜたペイント弾をモアくんが命中させて

第2ラウンドが終了した。


最終ラウンド開始から10分経過。

「・・・・・・・・」

「腑に落ちない、という顔ですね」

「そりゃあね、2個や3個ならともかくあの数を計算して撃つのは私でも無理だ。

モアくんの実力は何度も君から聞いてるが、いくらなんでもあの量のゴム弾を扱えているとは

到底思えな・・・」

そう結論づけようとした私を見て彼女は自慢げに笑みをこぼす。

「まさか・・・」

「ヒバリはともかく、モアは全部計算して撃てるでしょうね」

「なっ・・・!」

「ありえない!」と言いかけたが、冗談を言っているようには見えなかった。

確かにモアくんが所属するサイバー課には機械や数字分野が得意な捜査官が多く、

彼女も例外ではないだろう。

機械計算有りならばゴム弾を扱える人間も何人かはいるはずだ。

だがそれが禁止されてるこの勝負では全て頭で計算するしかないのだが・・・。

想像以上の実力に唖然とする私を横目に彼女は説明を続ける。


「これこそ身体能力で誰よりも劣っているモアが他の捜査官に引けを取っていない理由です」

「人並外れた計算能力か・・・」

もしこれが事実なのだとしたら、ゴム弾がエリアを一周するように撃つだけで

相手に位置を悟られることなく牽制と弾の回収が可能。

その上玉が戻ってこなければ弾道を逆算して敵の位置を特定、という芸当もできる。

1戦目で無闇に動き回ったのは2戦目以降の情報収集のため、と考えれば納得がいった。

「普段のサイバー課の任務では目立ちませんが、モアは本来ああいったことの方が得意なんですよ」

それにしても、普段私にはしかめっ面しか見せないクロナくんが

誇らしげにべた褒めする姿も中々に貴重だ。

まあそんなこと言ったらまた怒られるだろうから直接言わないけどね。

「だがこうなると、逆にモアくんに有利過ぎるんじゃないか?」

「・・・モアは計算『も』できるだけであって撹乱自体はヒバリでもできます。

もしヒバリが先にゴム弾の存在に気付いていればさっきのモアのように奇襲を仕掛けるということもできたはずです」

そんなに早口で反論しなくても・・・。

「そうか、じゃあヒバリくんの敗因は・・・」

「ええ、あの子の敗因は・・・」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ヤバい・・・どんどん追い詰められてる!

こんなのありえない!

最初は絶対ウチが有利だったのに!

モアちがあのゴム弾を使い始めてからまともに動けない!

でも今更ウチがゴム弾を使ってもモアちに居場所を特定されるのが積の山

これ以上隠れられる場所も____。

グイッ!

何?

何か引っかか・・・って!

「にょわああああぁぁぁーーーーーーー・・・!!!」


気づいた頃にはもう遅く、全身を何かに縛られ宙吊りになっていた。

視界が反転して焦点が定まらない中、聞き覚えのある声が近づいてくる。

「やー・・・っと引っかかってくれた・・・」

「モアち、何・・・これぇ・・・!」

「規制線テープで作った簡易トラップ、牽制しながら作んの大変だったんだから」

息切れしながら近づいてくるモアちをよく見ると、

ウチを釣り上げてる規制線テープが全身に巻かれている。

「ウチを追い回しながらこんなものを・・・」

「ま、あんたが引っ掛かってくれるかは運だったけどね

このまま長引いてたら体力切れでわたしの負けだったかもだし」

「なんでそんな博打みたいなことを・・・」

「ヒバリなら2戦目の奇襲を受けたら、警戒してわたしから距離を置くはず。

それなら逆に時間稼ぎながらトラップ仕掛けて誘導した方が、

下手に接近するよりも勝率が上がるって思っただけ」

「・・・・・・っ!」

そうか・・・。

2戦目にモアちに撃たれた時点でウチの負けは決まってたのか。

釣り上げられた拍子で銃も落っことした。

打つ手なし、完全に詰みだ・・・。

「あんたの敗因は『視野の狭さ』、治ってなくて良かったよ」

悔しさを悟られないよううつむき歯を食いしばりながら、黙って白いインクを頭から被った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、勝負もついたし後は先輩との合流待ち。

・・・なんだけど、その前にどうしてもヒバリに確認したいことがあった。

身動きが取れず大人しくなったヒバリと二人きりのこの状況、こんな機会が次いつ来るかは分からない。

勝負に負けた後だからか、ヒバリは不機嫌そうな顔をしている。

だとしてもわたしはどうしてもヒバリに聞きたかった、それは____。

「ねえ」

「・・・・・・」

「聞きたいことがあるんだけど・・・」

「・・・・・・」

返事はない、構わず続ける。

「わたし、あんたに何かした?」

「は・・・?」

なぜヒバリがわたしをここまで毛嫌いするようになったのか、わたしはずっと気になっていた。

「だってあんた、昔はそんな感じじゃなかったじゃん。

かといってわたしに思い当たる節なんてないし」

「・・・・・」

「もし無意識にわたしがヒバリを傷つけてたんだとしたら、わたしは_____」

「違っ・・・!これはウチの・・・!」

ずっと黙っていたヒバリが突然話を遮る。

「ウチの?」

「う、ウチの問題で、モアちが悪いわけじゃ・・・」

なんだか煮え切らない返事だ。

しばらく返答を待つもヒバリは再び口を紡ぐ。

言いたくない、ということなのだろうか。

どちらにせよ、わたしに非があるわけではなかったらしい。

だとしたら・・・。

「じゃあいいや、あえて聞かない」

「・・・・・」

「けど、納得もしてあげない」

「・・・・・!」

「また煽ってきた今まで通り容赦なく返り討ちにするから、そのつもりで」

「モアち・・・」

この回答がベストなのかは分からない。

けどこのまま無理に聞き出すのもなんか違う気がする。

ヒバリが本音を言いたくなるその日までわたしは待つ、そう決めた。


「さて、先輩が来る前にさっさとあんたを降ろして_____」

「んにゃっ・・・!」

ん?

「モアち、ダメ・・・、強く引っ張ったら、うにゃあっ!!」

「・・・・・・?」

巻きついたテープを引っ張ると同時に聞こえてきたのは喘ぎ声。

「なんか・・・、変なとこに食い込んで・・・くすぐった・・・うひゃあ!!?」

「ほう」

ヒバリの件でわたしに非はなかった。

だがこれまでヒバリにされてきたちょっかいやからかいは多岐に渡る。

その本人は今拘束され、煮るのも焼くのもわたし次第というこの状況。

やることは一つだった。

「ヒバリぃ・・・」

「ヒィッ!」

「そういえばあんた、今までいろーんなことわたしにしてくれたよね?」

「な、何を・・・」

「散々雑魚呼ばわりしてくれたり、潜入捜査中に変なASMR送ってきたり、

任務の手柄横取りしたり・・・!」

「そ、それは・・・」

「前に仕事が終わってから食べようと思って楽しみに取ってたプリン!

あんたに食べられたの忘れてないんだから!!」

「あれはホントにごめんって・・・んにゃあああっ♡」

「問答無用!!」

「やめっ・・・!モアち、ダメェッ♡これ以上はおかしく、

おかしくなっちゃうかりゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ♡♡」

ヒバリの叫び虚しく、先輩が到着するまでの間わたしの仕返しが止まることはなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全く・・・」

大事な話をしているようだったから、少し様子を見てから合流しようと思ったのに・・・。

2人の幼稚な言い争いに頭を抱える一方で、ついてきた本部長は涙を流しながら腹を抱えて笑っている。

「まったく、君達は見ていて飽きないな」

「人の気も知らずに・・・」

考えていた処罰の件もこれではただの追い討ちになりかねない。

勝負に勝ったモアにあそこまでされては、食堂での件は大目に見るしかなさそうだ。

「ねえクロナくん、まだしばらく続きそうだし私からも君に聞いてみたいことがあるんだが」

「何です急に?」


「モアくんのこと、君はどう思ってるんだい?」


「はぁ?」

何の脈絡もなく投げかけられた質問に一瞬戸惑う。

「モアくんの過去は一通り把握してる、もちろん君のこともね」

「・・・・・」

「その上で聞くんだが、今日の検査は本当にモアくん贔屓ではなかったのか?」

「質問が変わってますよ」

「どっちも聞きたいんだ」

珍しく強引に押し通してきた。

少なくとも今日の検査の内容をモアよりに設定したわけではない、それだけは確かだ。

だがもう一つの質問、私に取ってモアは______。

答えに詰まる私を察して本部長が先に話を進める。

「ま、答えたくないのなら私もここで無理強いはしないさ。

だが忘れるなよ、『捜査官たるもの、」

「同情するべからず』、ですよね」

「任務に行った仲間が明日になって音信不通になっていた、なんてことがよくある世界だ。

君も何度も経験しているだろう?」

「ええ、まあ・・・」

「このルールがいつから非特にあるのかは分からないが、下手な同情は身を滅ぼすぞ。

ましてや恋愛沙汰ともなれば尚更だ」

いつになく真剣な面持ちの本部長に思わず気押される。

私にとってのモアの存在、それに対して今出せる最大限の答えは______。

「『繋がり』ですかね・・・」

「繋がり、か・・・」

過去のこととは言え、私は一度非特と敵対する立場にいた身だ。

本来非特にいてはいけないはずの私が今ここにいられるのはモアの存在が最も大きい。

身寄りのなかったモアを非特に招き入れたのは私。

そんなモアの成長をずっと見てきたし、これからも見届けたいとも思っている。

こんな義務感のような不純な気持ちを恋と片づけてしまうにはあまりにも不誠実だ。

「相変わらず真面目だね。

けど忘れるな、事情を知った上で君を信頼してくれてる人も大勢いるということを」

「・・・・・・」

「墓場まで持って行くと言っていたが、きっとモアくんも受け入れてくれるさ。

ま、根拠はないけどね」

そう言うと本部長は、普段の口調と態度に戻して2人の元へと向かっていった。

モアにはこの事実は知られたくない、けどいつかは話さなければならない。

複雑な気持ちを抱きながら私も本部長の後を追った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「・・・先輩」

「ん?」

「わたし、勝ったはずですよね」

「そうね」

「じゃあなんですかこの状況」

「よ、予想よりゴム弾の散らばりがひどくて・・・」

「それもですけど違くて!」

検査後の後片付け。

先輩はこれを敗者への罰にするつもりだったらしいが、力尽きたヒバリの代わりにわたしが罰を受け持つことになってしまったのだ。

確かにやり過ぎたけど何でわたしが_____。

「それとも、私と一緒じゃ不満?」

「そ・・・!」

「そ?」

「いえ・・・ナンデモ」

その言い方、ずるくないですかねぇ?

寧ろご褒美ですけど!

ともあれ無事検査は終了。

先輩への罪悪感もヒバリとの勝負も無事「解消」もとい「快勝」、これで綺麗さっぱり・・・

あれ?でもなんか忘れてるような。


「おーい、ゴム弾の回収に来たぞー」

「あら『ナオヤ』、もう来たの?」

そうだナオヤ!!先輩の彼氏(仮)!!

色々あって完全に忘れてた!

「予定の時間になっても来なかったからな。

こっちから出向いてやった」

「ごめんなさい、ちょっと色々あって・・・」

突然の展開で思わず物陰に隠れてしまった。

どうしよう見たいけど見れない・・・。

「ていうか呼び方まだそれなのか。

周りはとっくに僕のこと『ナオちゃん』とか『ナオ』って呼んでるぞ」

「あら、私はギャップがあって良いと思うのだけれど」

「あっそ・・・ん?誰かそこにいるのか?」

やばっ・・・!気づかれた!

「ああ、前に話したあの子よ」

「ふーん・・・」

先輩言わなくていいですから!

ほらぁ!足音近づいてきたし!

でも・・・、何だろう、さっきから聞いてるけどこの声。

「お前か、クロナが言ってた相棒は」

男性にしては声が高いような_____。

「初めましてだな。

僕は研究部所属の職員No.708「ナオヤ」だ、半年前からこかで世話になっている」

ブカブカの白衣を着て話しかけてきたその人の姿は、

わたしが想像していたナオヤとはかけ離れた姿だった。

・・・ていうかそれよりも。

「ちっさ・・・」

「ちっさくないわい!!!」

こうしてわたしは初対面で地雷を踏み抜くという最悪な形で「彼女」との出会いを果たすのであった。

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