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2-2(表紙あり)

挿絵(By みてみん)

もしも時間を戻せたらって考えたこと、誰でも一度はありますよね。

もっと早く寝ておけば寝坊しなかったのに______。

あの時好きな子に告白しておけば______。

後悔先に立たずなんて言葉もあるくらいですからね。

え?わたし?

そりゃあわたしにだってありますよ。

なんなら現在進行形で後悔してます。

なぜならせっかく執行猶予の付いていた(かもしれない)不敬罪を

「当人の前で」「カッとなって」「自ら」掘り起こしたんですから。

もし一度だけ時間を戻せるって言われたら

迷うことなくわたしは「1時間前」って答えますね!

アッハッハッハッハ・・・!

ハァァァァーーーーーー・・・・(クソデカため息)。

カツン、カツン・・・。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

どうしよう、めちゃくちゃ空気が重い。

いっそのこと思い切り怒ってくれた方が少しは気が楽なのに、何も言わずただ黙々と先輩の後ろを歩かされるのは普通にしんどい。

普段滅多なことでしょげないヒバリも流石にやりすぎたと感じているのか、

バツの悪そうな顔をしながらわたしの横を歩いている。

かくいうわたしも他人事ではない。

先輩の後ろをトボトボ歩く姿は側から見れば刑が執行される前の

罪人にでも見えてるのだろう。

ていうかわたし達は今どこに向かわされてるんだ?

いや、どこであろうとそこがわたしの不敬罪の執行場所に違いはない。

そう考えたら逆に清々しい気持ちになってきたな。

もう開き直って先輩に聞いてみようか。

うん!そうしよう!

もしかしたらこれが会話の糸口になるかもしれないしね!

コミュニケーション大事!

「あの〜・・・先輩」

「・・・・・・・・」

「わたし達、今どこに連れてかれてるのでしょうか?」

「・・・・・・・・・」

「あのぉ~~~・・・」

「・・・・・・・・・」


ねぇ!!!キツいですって!!!

心なしか空気もさっきより重くなった!

隣を歩くヒバリが「余計なことを・・・」とでも言いたげな視線で

わたしを睨んでいる。

なんだぁ?仲間にでもしてほしいのか?

しないけど!

「2人とも」

「「・・・・!!」」

「さっきの件なのだけれど」

「「はい・・・・」」

今までずっと無言だった先輩がようやく口を開き、一気に緊張が走る。

「その・・・公共の場でああいう話はどうかと思うわ」

ぐうの音も出ない・・・。

冷静になって思い返したらなんでわたしあんなこと言ったんだろ。

ホント1時間でいいから時間戻せないかなぁ!

「まあ私もヒバリのお尻がってところからしか聞いてないのだけれど」

「あ、ほぼ全部・・・」

「違いますから!!」

「私としてはとんだ辱めを受けました」

「すみません・・・」

「反省してます・・・」

「どっちにも罰を与えたいところだけれど」

そう言いかけて先輩が足を止めたのは「訓練室A」と書かれた扉の前。

「せっかくだから、これより行う抜き打ちの実技検査で評価が低かった方に

処罰を与えます」

・・・・・・・

「「へ?」」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

非特では人事異動や昇級・降級の判断材料として不定期で抜き打ちの実技検査が行われることがある。

検査官はランダムで選ばれ、内容は検査官の裁量で自由に決められる。

今回は先輩が選ばれたらしく提示してきたのは1対1の模擬銃撃戦。

①使用できる武器は訓練用のエアガンと白のペイント弾

②時間制限はなく、先に2回相手に着弾させた方が勝利

③指定エリア内のものや道具以外の使用は禁止

今まで何度かこういうことはあったけど、今回みたいな対人形式は初めてだ。

先輩に鍛えられてるとはいえフィジカル勝負でヒバリに勝てるのかと聞かれたら

正直怪しい。

ナオヤの件、先輩への罪悪感、ヒバリとの勝負

ただでさえ頭の中ごっちゃになってるのに加えて抜き打ち検査。

しかも負けたら先輩からのお仕置き(完全に自業自得だけど)。

こんなんでわたし、ヒバリに勝てるのかな・・・。


スーツに着替え、モヤモヤした状態で訓練スタジオへと向かうと

先輩が一人黙々と検査の準備を進めていた。

「あらモア、準備は終わったの?」

「はい、えと、ヒバリは・・・」

「まだ来てないみたいね」

「そう・・・ですか」

どうしよう、いつものように会話が続かない。

色々聞きたいことはあるけど、どれもこの空気で聞くのはなんか違う気がするし。

「モア」

「は・・・はい!」

「その・・・この間の更衣室の件なのだけれど」

そうこう悩んでいると、先輩から話を切り出してきた。

「あれに関してはモアが変に気負いする必要はないわ」

「え・・・?」

「あれは私もやりすぎたと感じてるし、それにモアがわざとあんなことする子だとは思ってないわ」

「先輩・・・」

「というかそもそも私は最初から気にしていなかったのだけれど」

いや、それは嘘だ。

先輩は誤魔化したり嘘をついてると肩に垂れた髪をいじる癖がある。

毛先をいじりながら気にしていないなどと言い張る先輩の言葉に説得力は

なかったが、その前に言ってくれたことは本心なのだろう。

「それでも、あなたの気持ちがスッキリしないと言うのなら」

続けて先輩はこう言い放つ。

「今回の検査でヒバリに勝てたら食堂での失言も含めて全部不問にしてあげる」

ああ、そうだ。

わたしは先輩のこういうところに惚れたんだった。

誰よりも人のことを見ていて、その人が今一番欲しい言葉を投げかけてくれるところ。

かといって、普通に恥ずかしがったり負けず嫌いな人間臭いところ。

全部ひっくるめてわたしは好きになったんだ。

抱いていたモヤモヤが少しだけ晴れ、空いた隙間に気合いを埋め込むかのように

自分の両頬を勢いよく挟む。

「少しは元気出た?」

「ええ、おかげさまで!」

「すいませ~ん!お待たせしま~~・・・ってモアち何その顔」

「別に」

「はぁ?」

赤くなった頬のわたしを見てヒバリは頭に疑問符を浮かべていたが、

そんなヒバリを気にも止めずわたしはスタート位置に立った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

第一ラウンド

先輩からの始めの合図と同時にスタジオ内へ侵入。

中はひらけた迷路のような構造で、人1人隠れられるくらいの大きさの木箱やドラム缶が雑多に置かれている。

先輩のおかげである程度頭は冷えたけど、依然としてヒバリに勝てるプランは浮かんでこない。

我慢比べや気配を消すことが得意なヒバリ相手となると時間無制限のこの勝負は長引くほど不利だ。

他に使えそうなものは立てかけられた木の棒、規制線のテープ、三角コーン、回収され忘れたBB弾。

あれ?でもこのBB弾なんか・・・。


「見〜っけ♡」

「!?」

声が聞こえると同時に振り返るがもう遅かった。

ヒバリが撃ったペイント弾が不覚にも頭と腰に命中する。

「あっはは!まず一本目〜!」

「くっ・・・!この・・・!」

「すぐ楽にしてあげるからね、モアち♡」

「お〜!やってるやってる」

ヒバリとモアの検査が始まり5分ほど経った頃、

あたかも偶然を装ったかのような顔をしながら本部長ミヤビが顔を見せる。

「暇なんですか?」

「いやいや、優秀な部下達の成長を見に来たんだ。

仕事のうちだよ」

相変わらず中身の無さそうな答え方に嫌悪を通り越してもはや呆れる。

「検査内容は予め聞いてるけど、今はどんな感じだい?」

「ヒバリが一歩リードしてます」

「おや、なら少し来るのが遅かったかな」

「・・・さあ、どうでしょう」

ここまでの流れは概ね予想通り。

実際今回の検査内容はヒバリが前半有利になるように設定したからだ。

ありきたりな本部長の回答に私は思わず笑みを浮かべる。

「勝負はこれから、と私は考えます」

「・・・そうか、それなら来た甲斐があったよ」

追い詰められた時のモアの実力は私でも計り知れない。

そんな2人が真剣勝負をしたらどんな結果になるのか、そんな興味とも言える期待を抱きながら第二ラウンドの合図をする。

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