防音室
鉄筋の建物は、この島には村役場と殺された学芸員が泊まってた大きな民宿だけだ。
後は木造の建物しかない。
「防音室の代わりになるような場所ね〜
戦時中は防空壕があったけどすぐ埋めてしまったし…」おばあちゃんが頭をひねる。
機材は簡易だが持ち運べるものは全部持ってきたらしい。
ただこの台風の中、音が漏れない部屋が、この島の中に存在するのかどうか…
「…御神さまの胎内洞なら…いやいや不謹慎か!」おじさんが言い掛けてやめる。
「それだ!息子デカした!」おばあちゃんが飛びつく。
「御神さまもあやつらに一矢報いたいじゃろ。
いや、依代としてワシが許す。
御神さまの胎内を使って、あいつらを懲らしめてくれ!」普通は優しい言葉遣いのおばあちゃんも巫女となるとシャーマンとしての貫禄を感じる。
強面のおじさんにつべこべ言わさない迫力がある。
「でも電波があ〜」地下と聞くと優が難色を示す。
WIFIが飛んでない場所では無理なのだ。
「それは大丈夫だ。俺は若い時アソコで無線やってたし。」おじさんがバツが悪そうに言う。
「なんじゃと!このバチあたりもんがあ〜っ!」おばあちゃんが怒った。
「アソコはこの島でよその島に電波飛ばすのに最適なんだ。地下じゃないから。
御神神社の下に昔の人が作った人工洞窟なんだ。
京都の清水寺も山の中腹なのに胎内堂あるのと同じ。」寡黙だと思ってたが、好きな事を話すと饒舌になるタイプのようだ。
「電源は境内にあるか〜明かりは…持ってきてないなあ〜」優が具体的に考えていく。
「それはウチのサーチライト使え。非常用にある。」
淳は少し不安な事がある。
音だ…
洞窟は反響する。お風呂とかも。
この天然の島に吸音材は無いのだ…
それて無くても特殊な素材だ。
そんなもの売ってる店も無い!
そして、それが出来ないと絶対失敗する。
東京だと誤解させる事が出来ない!
「吸音材があ…」淳がつぶやくとおばあちゃんが何かひらめいたようだ。
「それ、ウチの息子が悩んでたんじゃ!
2階の客がうるさい人とか居てなあ〜たまに。
ワシが眠れん!言うて。
そしたら、なんか取り寄せてくれたんじゃ!
アレ?何だったかなぁ〜?」もうおばあちゃんには遠い記憶らしい。
「ああ〜、あれ去年だよ!なんで忘れるの?
ばーさんが上の客がうるさいと言うから、床にカーペット敷こうとしたんだよ。
で、せっかくなら防音効果のすごいヤツが良いなあ〜と探したんだよ。
それも吸音材で良く使われるグラスウールとか吸ったら怖いし、天然物をわざわざ探して!大量に買ったんだよ!」おじさんがだんだん思い出して怒り出す。
「せっかく船便で大量に2階全部敷き詰めようとしたら!」おじさんが頭をかきむしり出した。
「ワシは掃除機が嫌いなんじゃ。畳じゃないと新聞紙湿らせてちぎってほうきで掃く掃除が出来んと聞かされてな。
カーペットは無しになった。」おばあちゃんはのほほ〜んとお茶をすする。
「だから屋根裏に大量の羊毛のニードルフェルトがあるよ。
良かったら使ってくれ。」おじさんが忌々しそうに言う。
「助かります。即席の防音室作れるかもしれない。」優の顔が明るくなる。
「ニードルフェルトって何?」順が聞く。
「天然の羊毛の圧縮吸音材だよ。大きなスピーカーとか裏に布貼ってあるだろ?あれだよ。」
聞いていくとVチューバーは道具や機械に強くないとなれない気がする。
「とにかくその胎内洞窟へ行ってみるか。」おじさんが2人を促した。




