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三蔵島  作者: たま


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18/25

アートディレクター

稲葉義景は、東京の巨大タワマンの天空美術館で長年アートディレクターをしていたらしい。

だが画商との癒着が噂になり職を追われた。

妻の郷里である三蔵島に早期リタイアを決め込み来たらしい。

が、宗教的な事情で都の管理が行き届かない事情に目を付けた。

妻の父親は役場の出納長だったツテで当時の村長に取り入り「三蔵島開発計画」を立ち上げた。

外部責任者として若い無名の画家を集めて絵描き村を作ったのが3年前。

そのうち役場で発言権をつけ、村の祭事にまで口出しするようになった。

その頃から御神神社の巫女のおばあちゃんと信仰の(おさ)である民宿のおじさんと対立するようになった。

そのうち東京から昔の仕事仲間を呼び、村の女性と結婚させ村長選挙に出させた。役場を牛耳っていた稲葉義景はとうとう村長補佐の立場となった。

ところが、今まで名前も伏せ動いていたのに、アートモニュメントが完成した今年頭の式典からインフルエンサーの動画にノコノコ顔と名前を出してきた。

不倫ちゃんや犯罪に手を染める人間は、こういう詰めが甘い(やから)が多い。

そこをVチューバーの優に見つかってしまった。

有名アーティストと握手写真やインフルエンサーの取材に得意満面に、「この島のために!私ができる事をやらしていただきました。

これからは東京一強ではなく地方創生、地方が主導するアートシーンを…」とか鼻の下伸ばして語ってる動画を見つけたのだ。

「昔っから芸術業界って、こういう謎の人達がいるんですよね。

でも絵も描けないし学芸員でも無いし、毎度不思議なんですよね。」淳がおじさんや駐在さん、おばあちゃんに優のノートパソコンで動画を見ながら語った。

「今年は春祭りも予算削られて出来なかった。

モニュメントのお披露目に金掛けたんだろな。

こんな事してたら、絶対御神さまの怒りを買うぞ!」

おじさんは腕組みして怒り、駐在さんは頭をひねる。

「やっぱり警視庁みたいに都庁から出向職員入れないとヤバい奴らが巣食うだよなあ〜

ワシだってこの島来る前に島の有力者との会食・贈答品を受けた場合は失職する恐れをある事うるさく言われたからなあ〜」溜め息をつく。


部屋に戻りながら優が「ありがとな。友達の話するかどうか悩んでてん。」と言った。

自殺の話はしづらいものだ。誰かがそれで傷付くかもしれない。

誰だって加害者扱いされたくない。

「あまり関係者じゃない人間が言うのがマシなのよ。

デリケートな話は。

それにもう相手は人の命なんて何とも思ってないよ。

ただの犯罪集団だし。

早くあの画家の卵達も解放しないと友達みたいになる…」淳が言う。

「そやな。あいつの願いやと思うし。」優もうなづいた。



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