怒り
民宿に戻ったが、2人が凄く怒ってるのが分かる。
御神宿のおじさんとおばあちゃんだ。
「忌み日になんて事をしてくれるんだ!あいつらは!」おじさんが吐き捨てるように言う。
「シッ…」おばあちゃんがおじさんに黙るようにゼスチャーする。
もうご飯もお風呂も早めに終わって、おじさんは忌み日なので泊まろうとしてた時に事件が起きたのだ。
「あの…カフェに役場の人達が来たのですが、民宿にも来たんですか?」淳が聞く。
「ゴメンね。変な人達がウロウロして。
何か裏の絵描き村に絵の専門家が来たらしくて、それが問題らしくて…」とおばあちゃんが濁す。
「役場の人達って、この村の人なんですよね?」優が聞く。
「元々はね、素朴な良い子達だったのに。
あのヨソ者が来てから…」またおばあちゃんが濁す。
「もしかして稲葉義景さんですか?」優がカフェで動画を漁って調べた元アートディレクターの名前を言った。
2人が驚いた顔をした。
「あっ、すみません!優は先日絵描き村で亡くなった友人の自殺の死因を調べに来たんです。
すいません。何となく話しづらかったみたいで。」なぜか淳が説明に入った。
「そうだったのか…それは申し訳ない事をしたね。」
なぜかおばあちゃんが謝る。
「…いつか、こんな事になると思ったんだ!
アイツらがやってるのは、ただの犯罪だ!」おじさんが怒り出した。
「ダメです。今は騒がない方が良いです。
また台風が過ぎたら、ちゃんとしましょう。
いや、しますから。」淳が2人をなだめるように言う。
「…もしかして絵の専門家って?」おばあちゃんが驚く。
「そんな大したもんじゃないです。
でも、そのカップルさんが殺されたと言う事は、彼等もどこかの美術館の学芸員だったのかもしれませんね。今はとにかく静かにしましょう、嵐が過ぎるまで。」
結局駐在さんが御神宿に来たのは翌日だった。
さすがに台風が接近してきて、島なので風がスゴい。
雨ガッパを来て、やっとこさたどり着いた。
「本当にこんな時に殺人なんて、ヤメてもらいたいよ。」駐在さんは出されたお茶を飲み溜め息を深くつく。
「やっぱり殺人なんですか?」淳が聞く。
「栃木県立美術館の学芸員さんだったみたいだよ、2人共。
不倫旅行に来たのに、わざわざ勤め先も学芸員てのも全部書くかね?」駐在さんは頭をひねる。
「そんな頭だから不倫するんだろ。
頭がお花畑じゃないとしないよ、不倫なんか。」おじさんが吐き捨てるように言う。
「部屋に2人の首を絞めたヒモは無かった。ロープ状のものだね。
まだ予測だが、漁師の底引き漁のロープだとワシは思う。」言いながら駐在さんはお茶をまたすすった。
「ああ〜っ…」おばあちゃんが頭を抱えてうつ伏した。




