484.鬼の隠れ家②
俺は『クリーン』で鉄板を綺麗にする。
次はごま油を広げる。
ワーが皮を剥いて1口サイズ切ったアスパラガスと薄切りにしたニンニクを持ってきてくれる。
俺は受け取ってニンニクを炒める。
国王達もほろよいで話が盛り上がっていたが、ニンニクの香りには勝てずに鉄板に注目しだした。
アスパラガスを炒める。
国王が痺れを切らして口を開く。
「次は何を作ってくれるんだ?」
「次はバナナエビとアスパラガスのソテーです」
「バナナエビってあの辛いのかい?」
「辛い?」
カヴァーグさんの質問に俺は頭を働かせる。
「あー![鬼火亭]で食べたのは辛く調理されているもので、本当はプリプリで甘味があって美味しいんですよ」
「へーそうなのか」
カヴァーグさんはバナナエビのキムチしか食べたことがなかった。
バナナエビを鉄板に置き、アスパラと一緒に塩コショウをかける。
バナナエビに火が通ったら白の陶器の平皿に盛って提供する。
皿の端っこにはマヨネーズに一味をかけたものを添えておく。
カヴァーグさんは興味津々でバナナエビを口に運ぶ。
「本当だ。甘味を感じる」
「んー。美味い」
オステオさんは再び目を閉じながら堪能している。
食べている途中でブライズさんが木のスープ皿を運んでくる。
「ナッツウニの濃厚スープです。バナナエビとナッツウニは海の植物なんです」
「ほー。これが植物」
「漁師の人達もあんまり詳しくなかったので、元々食べられてなかった食材なのかもしれません」
ナッツ系だと俺は大ハズレを引いたことがある。
先人達が俺と同じように大ハズレを引いていたら海の植物には手を出そうとは思わないだろう。
「次は魚料理です。レッドスナッパーの鉄板焼きです。魚なので白ワインが合うと思うのですがいかがですか?」
「もらおうかな」
「私も」
「僕もいただくよ」
国王とオステオさんとカヴァーグさんの前にワイングラスが運ばれ、ブライズさんが白ワインを注ぐ。
「ラドニークさん、どうしますか?」
「私ももらおう。アイザックも呑むよな?」
「いただきます」
「ナターシャはどうする?」
ラドニークさんはナターシャさんを見て聞いた。
「私は少し酔ってきてしまいました」
「そうか。ライル。一旦酒ではない飲み物をもらえるか?」
「ではセフィーナさんも呑んでるヤルク茶にしますか」
「お母様。大丈夫ですか?」
セフィーナさんとアイザックさんが心配そうにナターシャさんを見つめる。
「大丈夫よ。楽しくて少し飲みすぎちゃったみたい」
ナターシャさんの顔はほんのり赤くなっていた。
病弱だったらしいから、お酒を呑む機会も少ないのだろう。
ブライズさんがガラスのグラスに氷とヤルク茶を淹れて持ってきた。
ナターシャさんはヤルク茶を飲んで少し火照りも覚めた様子だ。
鉄板が温まってきた。
オリーブオイルを広げ、レッドスナッパーの切り身を焼く。
ワーがボウルをかき混ぜながらやってきた。
シトラス胡椒のソースを作ってくれていた。
「そのソースは何を使っているんだ?」
「これはサオラルの砂漠で栽培されているロックシトラスと赤くなる前に収穫した唐辛子を混ぜた調味料でソースを作っています」
「ロックシトラスにそんな使い方があったのか」
国王はロックシトラスを知っていた。
さすがに隣国で第1王女の嫁ぎ先だから、文化に触れることも多いのだろう。
火が通って皮がパリパリになったレッドスナッパーを陶器の白い丸皿に盛る。
そして皿の端におしゃれ風にソース垂らして提供する。
カヴァーグさんが1口食べて、スナッパーの美味しさに感動している
「これは…困った。こんなに美味しい食事ができる権利を誰に渡せばいいのか」
「そうだな。私もこの鍵を誰にも渡せずに終わってしまいそうだ」
オステオさんは苦笑いをしていた。
「カヴァーグさん。うちの弟子達は元気にやってますか」
「ああ。5人共、うちの騎士団で上位に食い込む実力だ。年内までと話を聞いたので、5人は王都勤務にしているよ」
「特に成長した人とかいました?」
「うーん。成長したかはわからないけど、模擬戦で一番戦いにくいのはオリバーかな」
「ほーそうなんだ」
オリバーは元奴隷でどちらかというと大人組。
他の弟子達ほど主張が多くないが、時々模擬戦をやると俺も負けそうになる。
剛角の攻撃の柱なだけはあった。
スナッパーの鉄板焼きもそろそろ食べ終わる。
俺はメインディッシュを作り始めることにした。
「メインの肉料理を作っていきます」
「「「「「「おおお」」」」」」
セフィーナさんとナターシャさん以外は、いい感じに酔っていた。
「極上ミノタ肉のステーキです。味は塩コショウしかしていないので、ワサビと醤油をお好みで使ってください」
国王は頷いて俺の話を聞いていた。
「ワサビは肉の脂っこさを和らげて、後味をスッキリさせます。まあ塩コショウだけでも美味しいので好みで食べてください」
鉄板が温まったので、極上ミノタのサーロインを焼き始めた。
さすがドロップアイテム増加Lv2で出たサーロインだ。
焼き始めただけで旨そうな匂いがしてくる。
7枚の焼き加減を管理し、最高のタイミングで1口サイズに切って皿に盛る。
「これはすごいですよ」
「ライル様がそこまで言うお肉…」
セフィーナさんはよだれが出るのを耐えていた。
みんなの前に皿を置いて行く。
ブライズさんは赤ワインをみんなに注ぐ。
みんなはステーキを食べ始めると黙って味わいだした。
俺はその間にデザートの準備だ。
アヤノに教えてもらったレアチーズケーキのブルベーリーソースがけ。
これを提供したらコースは終了だ。
緊張していたが、なかなかいいコースだったんじゃないか。
俺は奥で既に出来上がっているレアチーズケーキを盛りつけながら、大成功を喜んだ。




