478.鍋試作会
翌日。
俺はダラダラしながら、王都の店の準備をしていた。
製造部門から食器類が渡された。
どれも素晴らしい。
店を作るのは大変だったが、かなりこだわったから早くお披露目したくなっていた。
店の入り口に暖簾とお洒落な照明を設置できるようにした。
暖簾には大きく[鬼の隠れ家]と書かれていた。
俺が指示したんだっけ?
店名については諦めた。
店が隠れ家っぽいのは事実だし。
食器の中でもコップが素晴らしい。
ビール用のガラスのジョッキとグラス。
炭酸割り用の金属製のコップ。
それにおちょこセットとワイングラス。
もう完璧すぎる。
製造部門には他の店舗でもすぐ使いたいと伝えたので、今頃大忙しだ。
ゴーレがやってきた
「マスター」
「ん?」
「今夜、鍋の料理の試作会をやりたいそうです」
「わかった。ルフレッテは明日授業だからレシピは書いて渡すことにしてってアヤノに伝えて」
「承知いたしました」
ゴーレはすぐに共有を使った。
▽ ▽ ▽
夜になり、工場エリアの食品部門の部屋に集まった。
「えーっと3種類でしたっけ。俺も作ったので4種類か」
「アヤノちゃんも作ってるみたいだから、5種類かな」
「1人前ずつにしましょうか」
「そうだね」
俺がそういうとみんなは調理を始めた。
俺のセリオラしゃぶは出汁を温めるだけだから準備は要らない。
30分ほど待つと、モズドさんとポレットさんが鍋を持ってきた。
「アヤノちゃんから案をもらって作ったサーモンの味噌バター鍋です」
「わーいいね。匂いも美味しそうだ」
鍋の中にはグリーンサーモンの切り身・ジャガイモ・ネギ・ニンジンが入っていた。
「コンブで出汁を取って、ショウガとヤルク酒とバターを入れてます」
「うん。見た目もいいし。味が濃いからおつまみにもなりそうだね。これは採用かな」
「「ありがとうございます」」
2人は喜んでいた。
俺はマヌセラで出すようにセリオラしゃぶを見せた。
2人は驚いていたがすぐに話し合って、サーモン味噌鍋は[海鬼の調理場]でセリオラしゃぶは[鬼乃屋]で出すことになった。
次に鍋を持ってきたのはアヤノだ。
「何を作ったんだ?」
「これです。トマトチーズ鍋です」
俺が思いつかない鍋をアヤノは作ってきてくれるから助かる。
絶対女性人気が出る。
「ちゃんと家庭で作れるようにホールトマト缶と粉末の鶏がらスープを使ってますよ」
「うん。かなりいいよ」
鍋を見ると真ん中にはカマンベールチーズが入っていて、周りにはモッツアレラチーズが散りばめられていた。
「肉は?」
「コッコのもも肉にしました。あとホワ、ちがう、ツクリタケも入れました。それと野菜はレタスとネギとニンジンにしました」
「いいね」
「余ったらパスタを入れても食べれますし」
さすがだ。
目線がしっかり販売目線。
何も考えずにセリオラしゃぶを作った俺は恥ずかしくなった。
次はアルゴットだ。
もう匂いでニンニクをたくさん使ったのがわかる。
「オークの塩ニンニク鍋です」
「ははは。やっぱりニンニクだ」
俺がそういうとアルゴットは恥ずかしそうに笑った。
「店ではオークのバラ肉を使うつもりです。レシピには普通のオーク肉と記載するのでいいかなと思ってます」
「そうだね。ただのオーク肉の方がみんな買いやすいもんね」
「はい。それにライル様が作った粉末のコンブ出汁にしてます」
アルゴットもしっかり販売目線だ。
鍋を見るとエノキとキャベツとニンジンが入っている。
これもかなり美味しそうだ。
最後にブライズさんとフィアダが作った鍋だ。
「凄い素朴な鍋にしたよ。コッコの醤油鍋かな」
「いいですね」
「焼コッコの時に作ったツクネを入れても美味しいとアヤノちゃんに聞いたから入れてみたよ。具材はコッコのモモ肉とツクネとキャベツとエノキとニンジンとネギかな。出汁はコンブでとったよ」
「かなりいい。素朴さが万人に人気になるんですよ」
俺がそういうとブライズさんとフィアダは満足そうだった。
「汁が余ったらうどんがいいかな」
「そうですね。卵とかも入れてあげたらいいかもですね」
「店舗ではそうするよ」
無事に鍋試作会は終わった。
レストランライルでは醤油鍋とチーズトマト鍋、鬼将軍の調理場では塩ニンニク鍋とチーズトマト鍋を提供することになった。
▽ ▽ ▽
「サフィオラ、セイル様から手紙届いた」
「ミケーラ様の影獣が来たの?」
「うん」
ヴェリナスは手紙を持っていた。
私は手紙を受け取って目を通す。
「チバラス領のヴィラーズの街の怪しい宗教が何かしてるみたい」
「えー。セイル様達とデスヘルで合流する話は無しー?」
「無しね。セイル様達はそちらの対応をするみたい」
「うーん。まあデスヘルには変な宗教絡みの奴はもういないっぽいからいっか!」
「うん。いない」
ティセラは静かに呟く。
「あっちは町長が既に洗脳されてる可能性があるみたい」
「なるほどね。じゃあ私達は引き続きデスヘルの冒険者として、ライル商会の監視?」
「そうね。昨日上手く接触できたし」
こういう形で接触するとは思っていなかったが、【戦場の毒花】と[鬼将軍の調理場]だけでは限界だと思ってたところだった。
「ヤルクにはムグルトン男爵がいるんでしょ?」
「うん。冒険者のグレンザールとして活動しているはずよ」
「でもあの人サボるからなー」
「やめなさい!そういうこと言うのは」
「だってー」
ヴェリナスは頬を膨らませた。
「ムグルトン男爵はサボる」
「ティセラまでそんなこと言わないの!サボってると思うなら、ライルさんと接触できたことを有効活用しなくちゃ」
「うん。サフィオラの手伝いする」
「はぁ。なんで手伝いなのよ」
私は仲が良いが癖のある仲間達に悩まされていた。




