475.隠れ家開店の準備
昨晩はアヤノと色んなドレッシングを作った。
ライル商会のサラダはマヨネーズかゴマドレ、[鬼火亭]はチョレギしかなかったので新たに作った。
梅酢を使った梅ドレッシング、ゴマと醤油のゴマ醤油ドレッシング、パルメザンチーズとマヨネーズを使ったチーズドレッシング、すりおろしたタマネギを使ったタマネギドレッシングを作った。
昼過ぎに起きたので昼食兼朝食を食べにレストランライルに行くとヒューズさんに出会った。
「ライル。もう疲れは取れたぞ」
「そうですか」
「だからマヌセラのダンジョンに行こう」
「あー忘れてました」
俺はマヌセラのダンジョンを忘れていた。
「一旦、【海獣の高波】と【疾風の斧】で行ってもらえますか?」
「ガッツは?」
「ガッツさんには来週も魔装の授業があるので」
ヒューズさんはにやりと笑みを浮かべた。
「コアは壊していいのか?」
「うーん。出来れば俺も少し見たいんですよね。海のダンジョンで食べれるモンスターがいるかもしれないから」
「あー」
「今まで食べた海のモンスターはクソまずでしたけど。もしかしたら良いモンスターがいるかもしれない」
「なるほどな。じゃあ行ける所まで行く。最下層まで行ったとしてもライルが探索するまではコアは壊さないようにしよう」
「お願いします」
俺とヒューズさんは食事を済ませて解散した。
▽ ▽ ▽
ゴーレからセフィーナさんが呼んでいると聞き、領主代行館へ。
「ライル様。お父様が会いたいと」
「え?なんだろう」
「文字勉強本のことだと」
「え!問題あった?」
「いえ。多分製作数を増やしてほしいというお話だと思います」
「え?」
想定外のことで驚いた。
「とりあえず行ってきます」
「すみません。お願いします!」
「あ!ラドニークさんにも伝えるんですけど、国王が作れと言った飲食店が出来たら招待しますね」
「ライル様!お父様にはちゃんと伝えてください。私達と違ってお父様は王都に行くまで時間が掛かりますから」
「あーそうか」
俺は急いでカラッカの街へ向かった。
▽ ▽ ▽
ラドニークさんの館に到着した。
いつものようにメイドに案内されて、部屋で待つ。
少しするとラドニークさんがやってきた。
「ライル。来てもらってすまんな」
「なんですか?」
「文字勉強本というライル商会の商品が素晴らしい。カラッカ領で購入して領民に配りたいんだが可能か?」
「いいですよ。問題ないと思います」
「注文数が決まったらまた連絡する」
「はい」
ラドニークさんは満足そうにしていた。
「そういえば国王に呼び出されて」
「国王様な」
「国王様に呼ばれて、王都に飲食店を作ることになりました」
「は?」
ラドニークさんは驚いていた。
「国王様がお忍びで来るということなので、少人数しか入れないし、俺の気まぐれで開店する店にするつもりです」
「それでも国王様が来るとなると…」
ラドニークさんは何か考えだした。
多分警備や護衛関係の事だろう。
あんまりそっちのことは考えていなかったが、考えてた風にしておこう。
「怪しい客は来ないようにするつもりです」
「どうするつもりだ?」
「国王様とラドニークさん。それにお世話になっているオステオさんには鍵を渡します。鍵を持ってるか、鍵を持っている人と一緒じゃないと来店できないようにします」
「なるほど。でもそれだと客が増えないんじゃないか?」
ラドニークさんは疑問をぶつけてきた。
「最初の3人には本人用の鍵とは別に3本の鍵を渡します。それを信頼できる人に譲渡していき、譲渡している人も俺が信用できると判断したら3本の鍵を渡して紹介する権利を渡します。そもそもそんなにたくさん店を開けるつもりもないですし、儲けるつもりもないのでこれくらいがちょうどいいんです」
「なるほど」
ラドニークさんは納得してくれたみたいだ。
「本題に戻します。その店を開けるにあたって開店日に国王様とラドニークさんを招待するのでよかったら来てください」
「は?いつだ?」
「わかんないです。まだ決めてないですけど近々」
「はぁー。王都にすぐに向かう」
「すみませんなんか」
「お前やセフィーナは簡単に移動できていいな。私もそろそろ選ばれたりしていないか?」
「うーん。それはないと思います」
ラドニークさんは家と家を移動するスキルを使用できるのはスキルに選ばれた者だけだと思っている。
「あ!よかったら何だが、妻をその日連れて行ってもいいか」
「え!奥さんいたんですか!!」
「当たり前だ。妻は数年前まで身体が弱くてずっと王都の家で暮らしている。最近はかなり元気になっているから、ライル商会の料理を食べさせたい」
「全然いいですよ。セフィーナさんとアイザックさんも呼ぶつもりなので」
「ああ」
俺の言葉にラドニークさんの顔が曇った。
「クライドはどうしてるんですか?」
「あれから塞ぎこんでいて部屋から出ない。食事は食べてるみたいだから生きてはいるんだろうが……」
「うーん。話も聞けてないんですか?」
「ああ。申し訳ない」
ラドニークさんとの初対面の時にセフィーナさんとアイザックさんを試すようなことをした。
自分の子供にも厳しいタイプだと思っていたが、信頼してた後継者のあの姿はかなり効いてるみたいだ。
「どうしようもない時は言ってください。ライル商会のやり方でどうにかするんで」
「その時は申し訳ないがよろしく頼む」
ラドニークさんは頭を下げた。
▽ ▽ ▽
俺は王都に移動し、黄盾騎士団の訓練所に来ている。
顔見知りの騎士に案内され、オステオさんの執務室へ。
「ライル。なにかあったか?」
「えーっと3つ話があって」
「多いな」
オステオさんは苦笑いをした。
「まずは変な宗教の件です」
「報告は聞いている。カラッカ家の長男が洗脳のような状態にあったと」
「はい。盲信のシンボルというマジックアイテムを持っていました。それと先日、デスヘルの冒険者が他種族を差別するようなことを言いながら暴れて、捕縛してみると解放のシンボルというマジックアイテムを持ってました。クライドと同様で記憶が曖昧でした」
「どこの宗教でどうやってシンボルをもらったかは」
「わかってないです」
オステオさんは苦い顔をした。
「デスヘルの冒険者はダラーガ出身で他種族を差別するような環境で育っていました。本人達は差別をするべきではないと思っているみたいですが、幼い頃に染みついた価値観のせいで身体が拒否反応を起こしたりしていたみたいです。それが解放のシンボルによって解放された感じがします」
「なるほど」
「クライドのバカは盲信のシンボルだったので、誰かから聞いたことを心から信じて他種族を差別すべきという考えになって行動をしていた感じです。2つは似ていますが少しだけ違うようです」
「ライルの推測はためになるな。怪しい宗教関連はこちらでも気を付けておこう」
「お願いします」
オステオさんは俺の話をしっかりメモしていた。
これなら王都で変なことは起こらないはずだ。
「2つ目。弟子達は年内に返してください」
「ライル。あと1年くらいは騎士団にいた方が良いと思うんだが」
「えー即刻か年内か選んでください」
「年内には返すようにと他の騎士団にも伝えておく」
「お願いします」
本当にチャールズ兄達が部下としてほしいのだろう。
だがガト王国に行く前には弟子達をヤルクに集めておきたい。
「3つ目。国王様に飲食店を作れと言われたので、近日開店します」
「おお!それはいいな」
「国王様がお忍びで来るための店です」
「は?」
オステオさんは頭を抱えた。
「開店する日にオステオさんも招待するので、ぜひ来てください」
「あーわかった。一度見に行った方が良いだろう」
俺に飲食店を作れと言ったことも知らなかったみたいだ。
国王はまじでお忍びで来るつもりだったのだろう。
俺の要件は終わったのでオステオさんと別れ、ヤルクへと帰った。




