471.九神教のシンボルと英雄の帰還
次の日。
俺は教会でシスターユーアに『肉体修繕』をしてもらっていた。
「ライル様、来られるのが遅いですよ。ゴーレムさん達にもお伝えしてたのに!」
「すいません。行こう行こうとは思ってたんですけどバタバタで」
「お忙しいのは知っていますが、お気を付けください」
「すみません」
俺はシスターユーアから優しめの催促を受けていたが普通にスルーしていた。
最後に来たのはヤルクダンジョンを改造した日以来だ。
さすがにサボりすぎた。
「教会と孤児院はどうですか?」
「そうですね。屋台も順調ですしポーション作りも順調ですよ。私達がベースラニア様とお話をしたことを知っている従業員の方が頻繁にお祈りをしてくれています」
シスターユーアは嬉しそうに言う。
「あーそういえば。最近の宗教騒動は聞いていますか?」
「宗教騒動?」
「聞いたこともない宗教が教会を建ててたり、持ってる人をおかしくするシンボルがあったり」
「シンボルですか?」
俺は昨日壊したシンボルを取り出す。
「これですね。解放のシンボルって物らしいんですがどんな効果があるかはわからなかったんです」
「私が首にかけてる九神教のシンボルと雰囲気が似ています」
シスターユーアが首にかけているのは円の中に九芒星があって中心に縦の線が入っていた。
「あー見たことある。あれ?ここの教会にもあるよね」
「はい。入り口にあります」
『小屋作成』で建てた時から九神教仕様になっていてよかった。
「聖職者は必ず持ってます。熱心な信者はシンボルを持っていることがあります。教会でお祈りをしたら聖具化すると言われています」
「教会側からシンボルを配ったりは?」
「ないこともないですね。九神教ではあまり聞いたことないですが」
やっぱり盲信のシンボルと解放のシンボルを配った宗教が必ずあるはずだ。
「またなんかあったら伝えに来るね」
「はい。今度は早めに来てくださいよ」
「あ。わかりました」
俺は『肉体修繕』を終えて教会を出た。
▽ ▽ ▽
家に帰ってる途中でヒューズさん達と出会った。
「帰ってきたんですね」
「ああ!それよりも…」
俺はヒューズさんの拳骨を食らった。
「なんですかいきなり!」
「地下56階層から攻略させる気ないだろ!」
「あーなるほど」
俺は拳骨を食らった理由がわかった。
地下56階層から59階層は荒野エリアでへイルバーストアントが1000体いる設定だ。
地下60階層に行っても変わらずへイルバーストアントが1000体いて、上位種のへイルバーストアントクイーンがいる。
「結局何階層まで?」
「あ?地下57階層が全く同じだったから帰ってきた」
「地下60階層までほとんど同じです」
「ふざけんなよー。馬鹿疲れたぞ」
ヒューズさんは文句を言っていた。
「でも楽しかったでしょ」
「まあな」
他の3人も満足そうな顔をしていた。
「あ!デスヘルとマヌセラでダンジョンが見つかりました」
「お!じゃあ行くか!」
「デスヘルはゴーレとヴァイオレットに頼んでます。行くならマヌセラですが、海の中のダンジョンなんです」
「うわー!リリアンがきつくなるぞ」
ヒューズさんは嬉しそうに言った。
「リリアンさんがきつくなる?」
「私が風魔法で水の中で呼吸が出来るようにずっと魔力操作をするってことよ」
「え?そんなことが?」
「うん。ライルくんもそれが出来たら風魔法で空も飛べるわ」
魔力操作を極める意味を見つけてしまった。
「とりあえず最近の出来事を伝えるので[レストランライル]か[鬼火亭]に行きましょう」
「ライルくんのおごりー?」
「おごりでいいですよ」
「よっしゃー!じゃあ[鬼火亭]だ!」
クララさんとガッツさんが喜びだした。
俺は4人を連れて、[鬼火亭]に向かった。
▽ ▽ ▽
「んーおいしー」
リリアンさんが嬉しそうにビールを飲む。
「地下62階層まで行ってたら、セイリューのエリアに行けたかもって言われると悔しくなるな」
「その階層から最上位種のモンスターが出るんですけど、まだ全然レベルが上がってないので4人なら倒す可能性がありましたね」
「くそー」
ガッツさんにダンジョンの詳細を伝えると悔しそうにしていた。
「それにしても数日で色々ありすぎだろ」
「本当ですよ。ダンジョンコアでみなさんの様子は見れたので、本当に急用ができたら『秘密の通路』で呼びに行くつもりでした」
「ん?コアで見れるのか?」
「はい。ヒューズさん達の奮闘はセイリューが良く見てます」
「今度俺にも見せてくれ!」
「うーん。多分見れると思うんでいいですよ」
ガッツさんは嬉しそうにビールを飲む。
「ライル。俺達がやらなきゃいけないことは、マヌセラのダンジョンか?」
「はい。あと宗教関係に警戒してほしいです」
「わかった。極上ホルモン追加していいか?」
「はい。どうぞ」
ヒューズさんはヨウラを呼んで追加注文をした。
「ヒューズさんとガッツさんってどっちが魔装上手いですか?」
「「俺だ」」
「え?」
2人は同時に主張してきた。
最初は言い合うと思ったが、ヒューズさんは俺を見て意見を変えた。
「いやガッツだな」
「お!やっと俺の強さを認めたか」
ガッツさんは嬉しそうに笑う。
ヒューズさんはニヤニヤしている。
「じゃあガッツさん。明日午前から学園で魔装を教えてあげてください」
「え?」
「ははは!ばーか」
口を開けたまま固まったガッツさんを見てヒューズさんは笑っていた。
「鬼骨騎士団も全員参加させますんでよろしくお願いします」
「ははは。強いかどうかの前に、ライルの言動を予想しないとダメだろー」
ヒューズさんは相当嬉しいのか、固まっているガッツさんを煽りながらビールを飲んだ。
「ライルくん。甘い物も欲しいな。魔力操作で大変になる予定なんだけどなー」
このタイミングでリリアンさんの機嫌は損ねたらだめだ。
「すぐにアヤノの店に行ってきます」
「ありがとー」
俺は急いでケーキを取りに向かった。




