466.新たな魔杖
打ち合わせを終えて、ヤルクダンジョンの最下層に来た。
セイリューは暇そうにダンジョンコアでヒューズさん達の様子を見ていた。
「ヒューズさん達は何階層?」
「地下50階層で、ゴブリンを倒しておる」
「はは。12時間しないと階段が現れない階層か」
いつからダンジョンに入ってるかわかんないけど、ルフレッテ達がいないからかペースが速い気がする。
「まだ出て来るまで時間が掛かりそうだなー」
「ヒューズ達は常に楽しそうに進んでいたぞ。あの様子だとここまで来るんじゃないか?」
「いやー無理だと思うんだけどな」
地下62階層からは高レベルで最上位種だと思われるモンスターばっかり用意している。
さすがのヒューズさん達でも攻略は無理なはず。
「あ!セイリューの素材ってもらえる?」
「ん?鱗とか爪とかか?」
「うん。多分。ドラゴンの身体の大半はいい素材になるらしい」
「構わんが、鱗と爪か。あとこれもいけるか?」
そう言いながらセイリューは牙を抜く。
「ええええ!大丈夫なの?」
「問題ないぞ」
そう言いながら爪をビリビリ剥がす。
「えええ。痛いって。見てるだけで痛いって。回復魔法使う?」
「待て待て!血とか使えないか?」
「え?」
指から血が垂れてる。
「一応もらうけど、すぐ回復魔法使うからね」
俺は殻の瓶に血を入れ、癒しの風とポーションでセイリューを治す。
「俺が素材欲しいって言ったけど、無理はしないでね」
「大丈夫だ。これくらい」
「これで俺の生徒が新しい杖を使えるかもしれない。ありがとう」
「構わんぞ!」
俺はセイリューにお礼を言い、ヤルクダンジョンを出た。
▽ ▽ ▽
セイリューの素材を持って、アルヴィンの家に向かう。
アルヴィンの家は従業員のアパートにあるはず。
久々に従業員の居住エリアを歩いていると、アルヴィンがやってきた。
「あれ?」
「ゴーレムのアカに言われて来ました」
ゴーレム達の共有は本当に素晴らしい。
「ちょっとライルダンジョンに行こうか」
「は、はい」
俺はアルヴィンとライルダンジョンに向かう。
「さっきまでライル先生の家の庭にいたんです」
「え?なんで?」
「よく行くんです。弟子のみなさんのテイムモンスターがいるので仲良くなって素材をもらおうと」
「なるほどね。それでどうだった?」
「マシューからもらった素材で作り方が1つわかりました」
「え!まじ?」
アルヴィンは嬉しそうにしていた。
「俺はセイリューから素材をもらったから、それも試そう」
「セイリューってあのヤルクダンジョンのですか!?」
「うん」
アルヴィンは前回の攻略から帰るときに最下層を通過したので、セイリューのことは見ていた。
「これで新しい杖が出来るといいな」
「はい!」
ライルダンジョン地下2階層。
ここは廃村エリアになっている。
「まずはマシューからもらったもので必要な素材は?」
「えーマイコニドの分体と粘液と胞子。これはもらってます。あとはエルダートレントの木材と葉と蔓、それとヒール草です」
「確かエルダートレントの葉と蔓はドロップアイテムにあったはずだから素材は大丈夫そうだ」
俺がそういうとショーグンがエルダートレントの葉と蔓を持ってきてくれた。
後ろを見ると部下ゴーレムがいる。
本当に助かる。
アルヴィンはエルダートレントの木材を持ち、蔓を巻く。
そしてマシューの粘液の胞子とヒール草とエルダートレントの葉を合わせて混ぜる。
混ぜた物を蔓がまかれた木材にかけて、アルヴィンは木材に触れてどんどん変形していく。
杖の根本にマシューの分体を合わせると木材がキノコの傘のように変形した。
「すごいな」
「はい。幻茸の杖と言います。キノコを生やすみたいです」
アルヴィンは幻茸の杖を持ちながら言った。
「じゃあこれに触れてみよう。セイリューの鱗と爪と牙と血」
「え!すごい」
「これを剥がす時かなり痛そうだった。セイリューは平気そうにしてたけど」
「この大きさですもんね」
アルヴィンがセイリューの牙に触れる。
「あ!作り方が2つわかりました」
「え?1つはセイリューの素材と氷を使う最上位種モンスターの魔石が必要です」
「アイスウルフキングがヤルクダンジョンにいるからどうにかなりそうだな」
アイスウルフキングの魔石を4人の目標にしても良いだろう。
「もう1つが鱗と爪と牙と血なんですけど、セイリューさんとそれ以外のドラゴンの分も必要みたいです」
「は?何種類?」
「ブレイズドラゴン・アクアドラゴン・ロックドラゴン・ライトニングドラゴン・ストームドラゴンです」
「ライトニングドラゴンはライドンがいるからどうにかなるけど、他のドラゴンは聞いたことないな。これは後回しだね」
「そうですね…。今のままだと集めてる途中で僕が死んじゃいますんで。焦らず行きます」
「うん」
アルヴィンが冷静で安心した。
「幻茸の杖を使える?」
「使ってみます」
俺とアルヴィンは立ち上がって向かい合う。
アルヴィンは構えた。
しかしなかなか動き出さない。
「ライル先生。僕の魔力が足りないみたいです」
「え?」
「粘王の杖みたいに魔力量で範囲が変わるのではなく、使うのに規定量の魔力がないとダメそうです」
「なるほど。じゃあ今日から寝る直前まで、魔力が空になるまで魔法を使い続けよう」
「わ、わかりました。吐き気がしても続けるんですよね?」
「うん。これは必須だね」
「…はい」
少し落ち込んでいるアルヴィンと共にライルダンジョンを出た。
▽ ▽ ▽
夜になり、家でくつろいでいるとアオがやってきた。
「マスター。チバラスニサーカスガトウチャクシタソウデス」
「お!次の公演は早いのかな?」
「ダイタイ30ニチゴヲメドニウゴイテルソウデス」
「なるほどね」
チバラス領には1回くらいは顔を出した方が良いだろう。
ゴトフの父さんの圧さえなければ頻繁に行くんだけどな。
「ゴーレとヴァイオレットは?」
「ダンジョンノチカ5カイソウノコウリャクヲオエタトコロデス」
「案外遅いね?」
「デスヘルノマチカラ1ニチホドノキョリニダンジョンガアルミタイデス」
「結構危険地域の奥にあるのか。深さはわからないけどまだかかりそうだな」
「ハイ。コウリャクジタイハモンダイナサソウデス」
「うん。了解」
アオは報告を終えると部屋から出て行った。
「ヒューズさん達もまだかかる。ゴーレもまだかかる。これはかなり暇になってきたな」
俺は明日何をやろうか悩みながら眠りについた。




