461.入れ替え戦の祝勝会
翌日、学園長に呼ばれた。
「何か御用ですか?」
「ライル。もっと生徒を増やしてくれないか?」
「は?」
「あの子達、かなり強くなってるじゃないか!」
昨日の入れ替え戦の事だろう。
「学園って冒険者を目指す子供が通うところじゃないですよね?そこまで鍛える必要あります?てかまずは武術と魔法学の授業を改善すべきでは」
「それはそうなんだが……」
学園長は言葉が出ていなかった。
「貴族の子供や、次期領主。それに平民が一般常識を身に着けるための学園ですよね?急にモンスターに襲われたときに対抗できる力は必要ですけど、ダンジョンを攻略する力は要りませんよね?まあ今の授業だとモンスターに襲われたら殺されちゃいますけど」
「なら武術と魔法学の授業に助言をくれないか?」
「魔法学はともかく、武術のヤイダラール先生は優秀です。生徒のやる気の問題です」
「そうか……」
学園長はここ半年で俺や弟子達を見て、感覚がおかしくなっているように感じる。
「うーん。学園への助言はありますよ」
「なんだ?」
「授業の種類が少ない。授業料が高い。貴族との付き合いがあるとは思いますが、一部の教師選びが悪い」
「……」
ペパイドのことがあったから反論はできないようだ。
「ライルならどんな授業を作る?」
「うーん。なんでしょうね。カラッカ領のヤルクの街の学び舎では任せっぱなしだけど、うちの従業員は全員文字の読み書きできます。平民と元奴隷ばっかりですが」
「そうなのか?」
「はい。大人になっても学びたい従業員が多かったらしいので、夜に文字の読み書きとかを教えてたらしいです」
「年齢の幅が狭いのか……」
学園長はぼそぼそ呟いている。
「特に実技以外の授業の種類がひどい」
「そんなにか?」
「平民の退学率を考えると分かりますよ。武術と魔法が苦手な平民の子は魔物学を選択する。そこまではいいです。卒業するためにはあと2つの授業を選択しなくちゃいけない。経営学はまだいい、薬学は先生がゴミ、帝王学は平民が選択する理由がない」
「……」
「この世界にはいろんな種類のエクストラスキルがある。それなのに学べるのは6科目。あまりにも少ないと思いませんか?俺は帝王学の授業内容を知りませんが、学んでる生徒は授業から何を学んでいるんですかね?選択してそうな奴らには絡まれ続けましたけどね」
学園長は黙ってしまった。
「戦闘が得意な人を増やすんじゃなくて、授業の種類を見直してみればいいんじゃないですか?俺の給料は平民の入学費に変わってるんですよね?やれることはあると思いますよ」
俺はそう言って学園長室から出て行った。
▽ ▽ ▽
夜になり、祝勝会になった。
当然開催場所はうちだ。
俺はヨーに手伝ってもらって、みんなの分の料理を作った。
俺も自分の料理をつまみながら、みんなとの会話を楽しんでいる。
「ゴトフ、サーカスはどうだったの?」
「大成功だよ。売り上げも以前の何倍にもなったって。そのおかげで公演が増やせるって」
「よかった。今回はチケット代の大半をライル商会とカラッカ領で買ったからな。それに場所代も屋台代もないから売り上げが上がってくれないと困るんだけどね」
「そうだね。次の公演予定のチバラス領ではチラシの効果で商人ギルドとかにモンスターサーカスがいつあるのか聞いてくる人もいたらしいよ」
「おーそれは良かった」
サーカスは次が勝負だ。
そんな話をしていると、ルフレッテがやってきた。
「ライル先生。仮原稿の確認をお願いします」
「本当に書くのが早いね」
俺は渡された仮原稿に目を通す。
モンスターサーカスのカラッカ公演の内容とお客さんの感想インタビューだ。
「前回の団長と副団長のインタビューの一部と屋台情報を上手く追加できる?チバラス領に配る用だからそれを意識して見て」
「わかりました!」
ルフレッテは俺の話をメモしていた。
「あとは入れ替え戦の記事ね」
「はい。昨日は興奮していたので一気に書き上げちゃいました」
「無理しないように。うーん。これはライル商会通信に入れよう。その方向で修正して」
「はい。でもライル商会なのはライル先生とアルヴィンだけでは?」
「商会長と従業員の晴れ舞台だからってことで。でもとても良く書けてるよ」
「ありがとうございます!」
「近々、文字勉強の冊子の話もしよう」
「わかりました!」
ルフレッテは笑顔で席に戻って行った。
次にやってきたのはカイゼとブリギッタだ。
「お!いろんなところから声が掛かった?」
「はい。貴族と商会と冒険者パーティから1度話をしたいと連絡が来てるとヤイダラール先生に言われました」
「俺もです」
「おーすごいな」
生徒しか観客がいなかったはずだけど、情報は回っているようだ。
「どうするか決めたの?」
「私はライル商会に入れてほしいです」
「俺も入りたいです」
俺としては嬉しいが、将来的に安泰な所から声が掛かっているかもしれないのに話を聞かなくてもいいのだろうか。
「いいけどいいの?」
「「はい!」」
2人の目は真剣だった。
「じゃあライル商会に所属ということで。2人の仕事は何となく考えておいたから」
「「ありがとうございます!」」
そんな2人を見て羨ましそうな目線を送ってくるルサンナ。
「いいなー」
「ルサンナはやりたいことみつけた?」
「まだ見つけてないです」
「焦るような話じゃないから」
「そうですね」
ルサンナは意外と聞き分けが良かった。
「カイゼとブリギッタ。両親がヤルクに引っ越すなら、ライル商会に所属させるから。いつでも言って」
「わかりました。ありがとうございます」
2人は小さく頭を下げた。




