458.カイゼの訓練
水の日。
授業の前にヤイダラール先生と学園長と打ち合わせだ。
「ライル。今日で5回目の授業だ。入れ替え戦は大丈夫か?」
「たぶん大丈夫です。あとは生徒が頑張るだけなので」
学園長は心配そうに聞いてきた。
「リゴベルト、希望者は何人いる?」
「……3人です」
ヤイダラール先生は何か言いたそうだ。
「何かあるのか?」
「ライル商会に取り入ろうと親から指示が出ているようで…」
「なるほど」
学園長もヤイダラール先生も申し訳なさそうに俺を見る。
「大丈夫ですよ。その3人は武術と魔法学の授業を受けてるんですよね?」
「ああ。そうだね」
「ヤイダラール先生が教えてるってことですよね。うちの弟子の半分くらいの実力はありますか?」
「いや、残念ながらない」
「俺の生徒は弟子の半分くらいの実力はついてます」
「本当なのか?」
「はい」
ヤイダラール先生は信じられないという表情をしつつ、俺の指導法に興味がありそうだ。
「じゃあ次の天の日に全生徒を集めて闘技場でやりましょう。それで挑戦者が戦う相手を9人の中から選ぶことにしましょう」
「闘技場がそんな簡単に借りれないだろ」
「え?この間オステオさんに頼んで貸してもらえましたよ」
「はぁー。それはライルだからだ」
「じゃあ俺がお願いしておきますよ」
俺はそういうと2人は呆れた顔をした。
▽ ▽ ▽
俺は第3演習場にやってきた。
「えー次に天の日に入れ替え戦をします」
「「「「「おお」」」」」
「闘技場でお客も入ります。挑戦者は3人。親に俺との繋がりを作るように言われた子達らしい。まあ本気で強くなりたがってない奴らには負けないと思う」
英雄とのダンジョンに行ったり身体をボロボロにされながらも模擬戦をやっていた生徒達の顔つきが違った。
「挑戦者が対戦相手を指名する。選ばれた人は弱そうだと思われてるってことだから見返してやれ」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
誰が選ばれて負けないだろう。
「今日は入れ替え戦を想定して、鬼骨騎士団と模擬戦を時間いっぱいまでやるよ!」
俺がそういうとみんなは散らばっていった。
俺はカイゼを重点的に見る。
「カイゼ、とりあえず『獣化』して」
「はい!獣化!」
カイゼの身体は2回りくらい大きくなり、毛深くなった。
俺は森帝のロッドを手に取る。
「じゃあ防いでね。ワープ!」
カイゼの背後に回って、森帝のロッドを振り降ろす。
カイゼは一瞬にして目の前から消え、俺から距離をとっていた。
「いいね。チェスターとの模擬戦が効いたのかな?ワープ!」
再び背後を取るが、カイゼは攻撃を防ぐことはできないが避けれるようになっていた。
「次は攻撃を防いでから移動」
「はい」
「ワープ!」
俺は何度もワープをして同じ訓練を繰り返した。
▽ ▽ ▽
そこまで疲れない訓練を休憩なしで何時間も続けている。
カイゼの動きもかなり鈍くなってきた。
『獣化』も何度も途切れて倒れるが、すぐにライムが回復させてやり続けた。
「ワープ!」
「くっ!」
カイゼは俺の攻撃を腕で防ぎ、すぐに距離を取る。
「じゃあ次は魔法の攻撃を移動で避けて」
「は、はい」
「ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!ウィンドアロー!」
俺は魔力操作で風の矢を放ち続ける。
カイゼはヘロヘロになりながら、攻撃を避け続ける。
カイゼはブリギッタと似ていて根性がある。
良い仕事があればライル商会で2人共囲いたい。
スピードが遅くなったカイゼに風の矢が当たる。
「ぐっ!」
「カイゼ!もう無理か?鋭牙はカイゼよりも小さい時からこれくらいの訓練してたぞ」
「ま、まだやれます!」
「いいね。続けよう」
「はい!」
カイゼは再び俺の風の矢を避け続けた。
「入れ替え戦でカイゼに攻撃を当てられる奴いないだろ」
▽ ▽ ▽
訓練が終わり、家でルフレッテの仮原稿を読んでいる。
[鬼将軍の調理場]でお客さんをインタビューした記事が面白い。
冒険者ギルドの順位が4位のEランクパーティ【蒼玉姫】のサフィオラ。
女性だけの冒険者パーティだけど[鬼将軍の調理場]では変な絡まれ方をしないから、安心して食事ができる。
好きな料理はチーズとベーコンのサンドウィッチ。
5位のDランクパーティ【大獅子の牙】のリーダーのハダイ。
馬鹿なことをした俺らが家をもらえるくらいに成長したのはライル商会のおかげ。デスヘルに骨をうずめるつもりだ。
稼いだお金はできるだけライル商会で落とすつもりで毎日来ている。
好きな料理はコッコの唐揚げカレー味。
ハダイのインタビューは悪くないが、ライル商会通信にはカロリーが高い。
なのでカットだ。
俺はこの記事に丸を付けて削除と書き込む。
6位のEランクパーティ【鉄棘乙女】のレオニー。
アルゴットさんとお話ができるので毎日通っています。本当に男性冒険者と違って優しくてかっこいい。
いつもお誘いをするんだけど、仕事があるからと断られちゃいます。アルゴットさんにお休みをあげてください。
好きな料理はアルゴットセット。
この記事は面白いしアルゴットが恥ずかしがるので採用だ。
ダンジョンの仮原稿とライル商会の出来上がっている仮原稿をすべてチェックした。
概ね問題なかった。
「はー疲れた」
「お疲れ様です」
ゴーレがミルクティーを用意してくれた。
「そういえばサーカスの招待客は来てるの?」
「はい。希望者が多かったようで、サーカスも2公演行うことになったとセフィーナさんから聞いております」
「ほー、いいね」
サーカスの方も問題無さそうでよかった。
「当日は警備でもしようかな」
「お供します」
「ゴーレもいてくれると心強いよ」
俺はミルクティーを飲み干し、寝室に向かった。




