457.ルフレッテの飲食店取材②
夜になって、ルフレッテと共に[海鬼の調理場]へ行く。
「はーい。いらっしゃいませ!」
「ライル商会通信の記事用で来たよ」
「モズドから聞きました!おすすめの品ですよね?」
「うん。お願いできる」
俺の言葉に合わせてルフレッテが頭を下げた。
「ここはポレットが店主で、娘のピエナと息子のポーソンも働いてるんだ」
「家族でやられてるんですね」
ルフレッテはメモし始めた。
まず最初にテーブルに運ばれてきたのはファットカラパウのフライとバナナエビのフライだ。
マヌセラで獲れるファットカラパウは本当に身がふっくらとしていてジューシーなアジ。
ルフレッテはすぐに絵を描き始める。
「ソースとアヤノさんが教えてくれたタルタルソースで召し上がってください」
「え!タルタルソース?」
「はい。フライには合うって教えてもらったんです」
本当にアヤノには感謝だ。
小皿に盛られたタルタルソース。
細かくされた茹で卵とタマネギがたくさん入っていて、液体じゃなくほぼ固形だ。
「これがタルタルソースですか?」
「うん。説明するより食べた方が良い」
「わかりました」
ルフレッテはカラパウフライにソースとタルタルをかけて食べる。
「え!美味しい!卵とタマネギ?」
俺も一口食べてみる。
「刻んだキュウリのピクルスが入ってるね」
「ピクルス?」
「酢漬けかな」
「酢漬けですか…」
ルフレッテはメモを書きだした。
屋台用のチーズバーガーを食べた時にも刻んだキュウリの酢漬けが入っていた。
チーズバーガーにピクルスが入ってるのが普通だと思っていたせいで気付かなかったが、アヤノが作ってくれたのだろう。
少しピクルスとは違うけど、全然問題ない。
2品目はジャギドシビーとグリーンサーモンとレッドスナッパーのカルパッチョ。
ルフレッテはすぐに絵を描きだした。
「これは刺身とは違うんですか?」
「カルパッチョはオリーブオイルと塩と胡椒が掛かってるから、醤油とか付けずに食べれるんだよ」
「こういう風に[鬼乃屋]と差別化をしてるんですね」
「みたいだね」
ルフレッテはカルパッチョを食べる。
「同じ生の魚なのに全然違います。切り方もカルパッチョの方は薄くて断面が広いです」
「そうだね」
俺は切り方の違いまでは気付いていなかった。
3品目はスナッパーのアクアパッツァだ。
具材はスナッパー・トマト・ツクリタケ・ニンニクが入っている。
「コンブの出汁を使ってます」
「へー」
多分貝とかの旨みの代わりなのだろう。
「お酒もですよね?うちはビールかスパークリングワインが良く出ます。買って帰る人もいますね」
「そっか。マヌセラだとこっちでしかビールが飲めないもんね」
「はい。そうなんです」
ポレットは頷く。
ルフレッテはポレットが用意したビールが入った金属のジョッキとワインのボトルの絵を描いた。
絵が描き終わり、ポレットへのインタビューが始まる。
俺はその様子を見ながらゆっくり食事をした。
▽ ▽ ▽
翌日。
今夜もルフレッテを連れて、デスヘルの[鬼将軍の調理場]に来た。
[鬼乃屋]や[海鬼の調理場]よりもお客さんが多い。
冒険者が多いせいかにぎやかだった。
店に入るとアルゴットが気付いたみたいだが、俺は邪魔をしないように静かにテーブルに座る。
ゴーレムのトレスが注文を取りに来た。
「マスター。ゴチュウモンハ?」
「アルゴットとフィアダのおすすめを2品ずつもらおうかな」
「ワカリマシタ!」
そう言ってトレスは厨房に戻って行った。
シェフが2人いるので、ここは4品でいいだろう。
料理を待っている間、ルフレッテと話をする。
「ここはレストランライルに一番似ている店だね。だけどデスヘルはヤルクよりも冒険者が多いから提供している料理もそれに合わせた物になっているはず」
「冒険者がいるとどういう風に変わるんですか?」
「うーん。たぶんだけど味が濃くなったりするのかな?依頼で汗をかいた後だと塩味が欲しくなるでしょ?」
「そういうことですか」
「常連っぽいお客さんも多いから話聞いてみたら?ライル商会って名前出していいから」
「いいんですか?」
「うん。デスヘルにはここしか飲食店がないからほぼ毎日来てる人ばっかりだと思うよ」
「ちょっとお話聞いてきます!」
ルフレッテは店に来ているお客に声を掛けに行った。
ライル商会と聞いて邪険にするやつはいないだろう。
ルフレッテの様子を眺めているとジェイクとパーティメンバーがやってきた。
「お?飯か?」
「ああ。ライルが1人でここにいるの珍しいな」
「いや取材の付き合い」
「取材?」
俺は広めのテーブルに移動して、ジェイク達と相席する。
「これだよ。今度からライル商会の商品を買うとこれが付いてくるようにする」
俺は昨日書き上げたというルフレッテの仮原稿を渡す。
「それを書いた子も来るから、感想を聞かせてやってくれ」
「ああ」
ジェイク達は仮原稿に目を通す。
「はぁ?ヤルクダンジョンの様子が変わった?」
「そうだな。数日前に変わって、疾風の斧とガッツさんとうちの生徒で挑戦した」
「こんな詳細に書いていいのか?地下40階層までの情報だぞ?」
「まだ仮の原稿だからな。削除する部分も出てくる。今の状態を読めるのは今だけだから、頭に叩き込んでおけよ」
「おい。無理だろそんな。みんな、覚えられるだけ覚えるぞ」
「「うん」」
「わかった」
ジェイク達はヤルクダンジョンの記事を真剣に呼んだ。
「そういえばいつヤルクに来るの?」
「そろそろ行こうとは思ってる。今運よく1位になれてるから、出来るだけ維持したいんだ」
「1位なの?ドルビダ一家は?」
「『体術』の取得のために素手で戦ってるから討伐数が減った」
「なるほどね」
その話をドヤ顔で話すジェイク。
「その顔してるってことは?」
「ああ。全員『体術』を取得した」
「いいねー」
【光剣の輝き】もかなり成長したみたいだ。
ジェイクと話をしているとルフレッテが帰ってきた。
「あのー」
「こいつらはデスヘルの冒険者をまとめてて、冒険者ギルドに掲載されてる貢献度順位で1位のパーティだ」
「え!そんなすごい方が!」
ジェイク達にも取材をさせるために大袈裟な紹介をしておいた。
「さっき見せた原稿の作者だ。話を聞かせてやってくれよ」
「お、おう。なんでも聞いてくれ」
俺の大袈裟な紹介に動揺しながらも平然を保とうとしながら返答した。
ルフレッテは尊敬の眼差しで【光剣の輝き】にインタビューを始めた。
▽ ▽ ▽
ルフレッテは【光剣の輝き】へのインタビューを終えた。
俺がいるからか、クソ冒険者だった過去もしっかり話したせいで尊敬の眼差しは消えていた。
さすがに気まずいから、俺もフォローを入れるくらいちゃんと話していた。
気まずい空気の中、アルゴットが1品目を持ってきた。
小鉢の中にはツナが入っていた。
「ツナとショウガの和え物です。マヨネーズと醤油とゴマ油で味付けしてます」
「おー人気なの?」
「はい。店内でも人気ですが、持ち帰って宿屋でお酒のおつまみにする人もいます」
「へー」
ショウガ好きが前面に押し出されたアルゴットの料理だった。
ルフレッテはいつものように絵を描き始めた。
2品目をフィアダが持ってきた。
「6種類のチーズおつまみ盛り合わせです」
木のお盆の上には小鉢が6つも置かれていた。
「モッツァレラチーズの生ハム巻き・クリームチーズの醤油漬け・カッテージチーズのサラダ・カマンベールチーズとジャムを合わせた物・ゴーダチーズの海苔挟み・チェダーチーズとナッツです」
「おお!凄いな」
「これは女性冒険者に人気です。カマンベールチーズとジャムはバケットにつけて食べてください」
クトムがこの料理用に作ったと思われる食器がとてもいい。
ルフレッテも目を輝かせていた。
「これはお酒と一緒に注文されるの?」
「そうですね。赤と白の小さなワインボトルを注文される方が多いです」
「へーそうなんだ」
お酒は飲めないので俺とルフレッテは赤ブドウのジュースと一緒に味わった。
3品目は再びアルゴットが持ってくる。
「こちらアルゴットセットです」
「アルゴットセット?」
皿には2種類の肉が盛られていた。
「ニンニクオークキムチとオークのショウガ焼きです」
「なるほど。だからアルゴットセットなのか」
「はい」
ニンニクとショウガが好きなアルゴットオリジナルメニューだろう。
パンも一緒について来たので、おつまみ以外でも頼まれるみたいだ。
「これは注文する人は限られそうだな」
「意外といるんですよ。討伐前に食べる人が」
「へー」
完全に男飯のようだが、味はちゃんと美味しい。
最後の品はフィアダが持ってきた。
皿の上にはショートケーキとチョコレートケーキが乗っていた。
「女性冒険者に大人気のケーキセットです」
「おお!前にアヤノに相談してたもんね」
「はい。プリンと持ち帰り用のアーモンドチョコも人気です。持ち帰りのスイーツは【戦場の毒花】へのお土産で買う人もいます」
冒険者ギルドの順位表にも女性のパーティの名前が書いてあったし【戦場の毒花】もいる。
デスヘルは比較的女性冒険者が多いのだろう。
ルフレッテはケーキセットを食べるのを我慢して絵を描いていた。
意外とお客が減らなかったので、閉店まで待ってインタビューを行った。




