452.英雄達の反乱
今日は水の日。
いつものように鬼骨騎士団と英雄の皆様にお手伝いしてもらって授業を行う。
「おい。これ無賃っておかしくないか?」
「そうよね」
「そうだー!」
「酒とかあってもいい」
英雄の皆様から協力的な意見をいただけて、俺はとてもうれしい。
「おい!聞いてんのか?」
「ライルくん。所属の冒険者を蔑ろにしちゃダメよ」
「英雄だぞー!」
「そうだ!英雄をこんな雑な使い方をすんな!」
こいつらうるせえ。
「ダンジョン禁止?酒禁止?甘い物禁止?もうすでに色々与えてるので、禁止にすることしか思いつかないんですが」
いつもはこれで引き下がるが、今日は違った。
「いや俺達もお前の指示で動いてるだろ!」
「そうよー。昔はあんなにかわいく頼ってきたのに!」
「そうだーそうだー」
「魔装が出来るように付き合ってやったろ?」
言われてみれば、飴が足りなかった気がしてきた。
「じゃあ何が欲しいんですか?」
「「「「うーん」」」」
こいつら不満を俺にぶつけたいだけだ。
「何も求めてないのに文句を言いたいだけですか?俺から感謝が感じたかっただけですか?」
「あーあれだ!次の遠出に付いて行かせろ!」
「は?」
想像していた要望とは全く違った。
「ガトに行くだろ?それに付いて行かせろ」
「いいですけど、他の3人もそれでいいんですね?」
「面白そうね」
「あーそれでいいやー」
「楽しそうだな」
何なんだよ。この英雄達。
暴れたいだけだ。
そんなことを話していると、ゴトフ達がやってきた。
授業開始だ。
▽ ▽ ▽
今日はアルヴィンを個人的に見る。
「アルヴィン、魔力操作は?」
「かなり出来るようになったと思います」
「じゃあこういう風に何個かやってみて」
俺は風の球でお手玉をしてみせた。
「はい」
アルヴィンは5個の風の球でお手玉を始めた。
「うん。基本は出来てるね。さすがリリアンさん」
俺は風の矢を出して、魔力操作で動かす。
「アルヴィンも真似して。どこかにぶつけて消しちゃダメだよ」
「はい」
さすがに1本なら問題なくできそうだ。
「それじゃ杖を構えて」
「は、はい」
「俺の攻撃を避け続けて。風の矢の動きを止めても消してもダメ」
「え、え?」
「じゃあ開始!」
俺が森帝のロッドで腹を殴って吹き飛ばす。
風の矢はその瞬間まっすぐ飛んで行って消えた。
「ダメじゃん。もうやめる?」
「や、やめないです」
「癒しの風」
アルヴィンは立ち上がって、再び風の矢を出す。
「じゃあ続けるよ」
「はい!」
「ワープ」
背後に周り、地面に叩きつける。
「うーん。無理?」
「やれます」
俺はアルヴィンの心が折れないかを見ながらこの訓練を続けた。
▽ ▽ ▽
アルヴィンは攻撃を防げることはなかったが、風の矢は消えなくなった。
「次は攻撃を食らったら俺に風の矢を当てろ」
「わかりました」
「じゃあ開始」
俺はすぐにアルヴィンに向かって行く。
アルヴィンは構えて俺の攻撃を防御しようとする。
俺は杖ごと攻撃をし、アルヴィンは体勢を崩す。
風の矢は俺の5mほど横を通過した。
「もっと集中しないと。一旦休憩したら、この訓練続けるよ」
「はい。わかりました」
アルヴィンはフラフラしながら、休憩をしに行く。
「うーん。アルヴィンにあった良い戦い方はないかな」
俺はアルヴィンに話をしに行く。
「アルヴィン、大丈夫か?」
「すみません。大丈夫です」
「アルヴィンがやれることを改めて聞きたくて」
「やれることですか…。杖が増えればスキルを上手く使えるはずなんですが」
「でも1つしか作り方がわからないんだよね」
「そうなんです」
アルヴィンはわかりやすく落ち込んだ。
「ちなみに何の素材に触れて覚えたの?」
「スライムの核を触れた時に知った杖なんですけど、スライムの核以外がなかなかで」
「何?
「スライム以外のスライム型の核を3種類。エルダートレントの木材。スライム型の最上位種の粘液です」
「ん?」
これは作れそうだ。
「多分あるぞ」
「え?」
「うちのライムはエンペラースライム。確かスライムの最上位種の1つだったはず。あとエルダートレントの木材もある。スライム3種類かー。マグマスライムとグラススライムならすぐに手に入るはず」
「え?え?」
アルヴィンは動揺してる。
「うーん。とりあえず俺が帰ってくるまで走ってて?体力なさすぎるから」
「え?は、はい」
俺は急いでヤルクに戻った。
▽ ▽ ▽
ヤルクに帰って、すぐに冒険者ギルドに行く。
マリーナさんはいないみたいだ。
解体場で作業しているカシムの母のマールさんがいた。
「マールさん」
「あらこんなところに珍しい。どうしたの?」
「スライムの核ありません?スライム型の」
「うーん。スライムの核って魔石ってことよね?多分あるわよ。マグマスライムとか」
「3種類ほしいです」
「3種類?ちょっと待ってね」
そういうとマールさんは奥へ行った。
「はい。マグマスライムとポイズンスライムとサンドスライムの魔石よ」
「ありがとうございます!請求はライル商会に」
「はーい。気を付けてね!」
元から村にいた人達はちゃんと子供扱いしてくれる。
俺はエルダートレントの木材とライムを連れて、学園に戻った。
▽ ▽ ▽
学園に戻ると、アルヴィンがヘロヘロになりながら走っていた。
「アルヴィン!」
「あ、ライル先生…」
「そういえば俺が走っておけって言ってたんだ。休憩していいよ」
「わ、わかりました」
倒れ込んで休憩しているアルヴィンの元に行く。
「これがエルダートレントの木材。あとはマグマスライムとポイズンスライムとサンドスライムの核というか魔石」
「え?え?」
「ライム、この瓶に粘液出せる?ポーションじゃないよ」
ポニョ!
ライムが触手のように身体を伸ばして瓶に粘液を出した。
「これで作れる?」
「は、はい。やってみます」
「やってみる?」
俺が首を傾げてると、アルヴィンはエルダートレントの木材に触れた。
アルヴィンの触れたところがどんどん変形していく。
杖の根本には魔石が4つ入るような形に変わっていく。
俺が渡した魔石とアルヴィンが持っていた魔石が木材に絡まりながら、杖の根元に設置された。
「で、出来ました」
「魔法の杖ってそうやって作るの?」
「こんな作り方は知らないです。何となくできる気がして」
「エクストラスキルの恩恵なのかな」
「だと思います」
アルヴィンもちゃんと理解していないようだ。
「それを使って模擬戦してみるか?」
「え?いいんですか?」
「使い方はわかるか?」
「はい!」
「じゃあやろう」
アルヴィンは新しく作った杖を構えた。
「じゃあまずはその杖の力を見せてくれ」
「はい!」
アルヴィンが杖を地面に付ける。
すると俺の視界がぐっと下がった。
「は?」
足元を見ると地面の広範囲がスライム状になっていた。
隣で訓練をしていたクララさんとクラリもスライムに身体を半分呑み込まれている。
「なにこれー」
「え?え?」
アルヴィンもこんなことになるとは思ってなくて焦っている。
「アルヴィン!このスライム化した地面は操れるのか?」
「あ、操れそうです!」
「俺達を押し上げて、スライム化をやめてくれ」
「わ、わかりました」
俺達はスライムに押し上げられ、地面が通常に戻った。
アルヴィンは走って俺達の元にやってくる。
「す、すみません」
「いや!凄いぞこれは」
俺がアルヴィンの杖に興奮しているとクララさんが口を開いた。
「ライルくんー。これは凄すぎだから、扱いは気を付けないとー」
「あっ!そうか…」
テンションが上がってて気にならなかったが、木や城壁もスライム化してた。
これは兵器に近い。
「アルヴィン。これは会議案件だ」
「そうみたいですね……」
アルヴィンも自分の杖の危険性に気付いたみたいだ。




