451.ルフレッテの飲食店取材①
ロックシトラスの試作会で、イサの要望も叶えただろう。
今日は出版部門に顔を出している。
早朝にルフレッテがライル商会通信のために、セフィーナさんにインタビューをすると言っていたが寝坊してしまった。
「ごめんね。付いて行けなくて」
「大丈夫なんですが、なんか私がセフィーナ様の良さを引き出せてない気がして」
「え?どういうこと?」
俺は質問と返答をまとめた物を見せてもらった。
「あーなるほどね。ルフレッテがセフィーナさんとあまり面識がない時の印象になってるってことでしょ?」
「はい!そうなんです!お話も数回しかないですが、私の中の印象とインタビューの返答にずれがあって」
「なるほど。これはあれだ。ラドニークさんへのインタビューを見せたせいだ!」
「どういうことですか?」
「真面目モードだ。これはもう1回インタビューしても同じ結果になるな」
セフィーナさんは真面目な領主代行としての受け答えだった。
必要な情報は話してくれてるから問題ないんだが、ルフレッテが感じる違和感は理解できた。
「これはセフィーナさんのインタビューはこのままで、ライル商会の従業員にセフィーナさんってどんな人?っていうインタビューを一緒に載せよう」
「なるほど」
「うーん。人選は重要だな」
悩んでいるとゴーレが口を開いた。
「良い案をくださる人を呼びました」
「誰?ポーラさんとカレンさんです」
「さすが!」
メイドの2人なら俺達の意図を理解して人選をしてくれる。
少しするとポーラさんとカレンさんがやってきた。
「ライルさんに呼ばれていると聞いたのですが…」
「呼びました!中に入って座ってください」
2人はマジック複合機を見て驚きながらも座った。
「出版部門の話は聞いてます?」
「はい。セフィーナ様から聞いてます。今日の午前中にルフレッテさんがいらしたのもそのお仕事ですよね?」
「そうなんですが、これを見てもらえます?」
俺はインタビュー内容を2人に見せた。
「素晴らしいですね。これがどうしましたか?」
「俺とルフレッテはこの内容だけだと、セフィーナさんの良さが伝わらない気がしていて」
「なるほど。セフィーナ様の可愛らしさや人間味を見せたいということですね」
「はい」
ポーラさんは理解度の早さは凄い。
「そこでセフィーナさんについてのインタビューを従業員にしようと思うのですが、人選を相談したくて」
「なるほど。カレンはセフィーナ様が街に行くときは付いて行っていますね」
ポーラさんはカレンさんをみた。
「えーっと、セフィーナ様の可愛いところですよね。ブライズさんやアヤノさん、あと裁縫部門の人が服をたくさん持ってきてくれる時は喜んでますね。あと孤児院に行った時も子供達に人気ですので、シスター達ですかね」
「凄く良い情報です」
「あと…ペティちゃんと遊んでるときのセフィーナ様はすごくかわいいです!」
「それは絵にしないとね」
「お願いします!」
カレンさんは本当にセフィーナさんが好きみたいだ。
「どう?インタビューいけそう?」
「はい!」
ルフレッテも何となくイメージが出来たようだ。
ルフレッテは授業があるので王都に戻った。
▽ ▽ ▽
夜になり、授業を終えたルフレッテにマヌセラの店を紹介する。
ゴトフとイタロも一緒だ。
イタロはマヌセラには来たことないから丁度いいだろう。
「最初は[鬼乃屋]。静かにお酒を呑む人が多い店かな」
俺はそう言いながら中に入る。
店の中にはモズドと食品部門の男性が1人いた。
「ライルさん。いらっしゃい」
「モズド、ブレイズさんからライル商会通信のことは聞いてる?」
「はい。ざっくりですが」
「それを作るのがこの子。ルフレッテ。こっちのイタロはサオラルのサリルハムで農業を担当してる。ゴトフは前に来たよね?」
「はい。ゴトフさんは知っています。モズドです。好きなもの注文してください」
モズドは頭を軽く下げた。
「おすすめ3品お願いできる?あとはおすすめのお酒を見せて」
「わかりました」
モズドはそういうと厨房に戻って行く。
「2人は生の魚は食べたことある?」
「え!生ですか」
「ないと思う」
やはり刺身を食べる文化が根づいていない。
「刺身を食べてみな。取材だからさ!」
「はい!食べてみます」
少しするとモズドが大きな皿を持ってきた。
「ジャギドシビーの盛り合わせです。右から大トロ・中トロ・赤身・カマトロ・ツノトロ・中落ちです」
「おおお!いいね」
元の世界だとかなりお値段が張りそうな皿だ。
俺が聞いたこともない部位もあった。
「ライル先生。簡単に絵を描いておいてもいいですか?」
「うん、いいよ」
ルフレッテはシビーの刺身盛り合わせの絵を描き始めた。
「すみません。お待たせしました」
「簡単な絵だとしても描くの早いよね?」
「『速写』を取得してるからかもしれませんね」
「そんなスキルがあるんだ」
そんなことを話していると、イタロの限界が来た。
「ライル、食べていいかな?」
「ごめんごめん。醤油とわさびをつけて食べて」
「うん」
「食べてみます!」
ゴトフは慣れたように刺身を食べる。
ルフレッテとイタロも食べる。
「え!美味しい」
「なんか溶けてるみたい」
2人はどんどん刺身を食べていく。
モズドはまた1品持ってきた
「灰味噌の殻焼きです」
「俺が好きなやつだ」
「酒のつまみにかなり注文されますね」
「だよね」
ルフレッテはまた絵を描き始めた。
「これとバナナエビとナッツウニは植物なんだよ」
「え!」
「海で育つ植物。たまたま網に引っかかってたんだよね」
「すごい!」
話ながらでもルフレッテはすぐに絵を描いた。
「じゃあ食べてみて」
「はい!」
「うん」
2人はスプーンで灰味噌を掬う。
「なんかなめらかで美味しい」
「これが植物なの?」
「うん」
2人は驚いていた。
俺も見つけた時は感動した。
続いての品をモズドが持ってくる。
「ワカメと海苔の味噌汁です。白味噌と淡色味噌の2種類使ってます。帰る直前に注文する人が多いですね」
「締めだね。酔うとこういうのを飲みたくなるんだよね。吞んだことはないけど」
「そうなんですね」
ルフレッテはまた絵を描き始めた。
その間にモズドが焼酎の一升瓶を持ってきた。
アリソンが作ったと思われるラベルもしっかりついている。
アヤノが手配して、蒸留酒酒造がやってくれたのだろう。
「これはライル商会で作っているイモ焼酎です。白銀・紅玉・紫苑という品種で作っています」
「モズド、簡単な味の説明もしてもらえる?」
「はい。白銀は強いコクとイモの風味香りを楽しめます。紅玉は白銀より甘さを感じられて果物のような香りがして口当たりがトロっとしてます。そして紫苑は紅玉よりも甘いですが、すっきりとした甘さを感じられると思います」
「なるほど。わかりやすくありがとうございます」
ルフレッテはモズドに頭を下げた。
「ヤルク酒も紹介したいんですがいいですか?」
「そうだね。[鬼乃屋]か[レストランライル]でしか飲めないしね」
モズドはヤルク酒を説明し、そのままルフレッテにインタビューをされた。
ライル商会との出会い。
俺の話は少なくしてと頼んだが、今までの話をすると俺がどうしても出てくると断られた。
[鬼乃屋]の売りと[海鬼の調理場]との違い。
刺身や煮物や塩焼きを食べるなら[鬼乃屋]、他の海鮮やライル商会の定番を食べたいなら[海鬼の調理場]。
そういう違いをお互いが考えながらやっていることを話した。
ルフレッテのインタビューに力が入ってしまい、結構時間が経ったので今日は鬼乃屋で終わりにすることにした。
なので追加で注文をした。
ツッオの煮付け、グリーンサーモンとスナッパーの塩焼きなどを注文した。
2人はあまり魚料理を食べてなかったのか、目を輝かせた。
本当に[鬼乃屋]の料理は酒と白米が合う、すぐに提供させてあげたい。
絶対白米を見つけよう。




