449.ライル商会代表会議②
代表会議はまだ続いていた。
「次は私達が話しますね」
そう言いながらアヤノとブライズさんが立ち上がる。
「何を話しましょうか」
「そうだね。アヤノちゃんや他のみなさんのおかげで屋台料理は完成しました。ありがとう。料理に関してはさっきのイサのように要望を言ってもらえると嬉しいかな。食品部門では試作会を定期的にやっているから、伝えてくれると試しやすくなる」
「人員はどうです?」
「缶詰工場も動き出した時は少し大変だったけど、イザッドくんと協力しながら管理してるから大丈夫かな」
「わかりました」
2人は座り、イザッドが立ち上がる。
「漁業は順調です。節も使い方が浸透したので売れ行きもいいです。わざわざライル商会の海鮮料理を食べに街に来る冒険者が増えました」
「うん。いいね」
「気になることは、直接被害は受けてないのですが、前よりも海のモンスターが増えた気がします」
「ノヴァはその件で動いてる?」
「はい。動いてます」
「ならその結果次第で動こう」
「はい」
イザッドは頭を下げて座る。
「えーっと私がお話しても良いんでしょうか」
「お願いします。シスターユーア。教会と孤児院について話してもらえれば大丈夫ですよ」
「はい。教会の訪れてくれる方はかなり多いと思います。孤児院の子供達は生活に不安がなくなったおかげで、どんな職業に就きたいか話す子も増えました」
「うん。学び舎で職業体験みたいなのしてるんだっけ?」
俺が教師のフォーリアに問いかける。
「はい。文字や計算などがある程度できる子は各部門のお手伝いをさせてもらっています」
「うん。いいね。これからもよろしくね」
孤児院も問題なさそうだ。
「じゃあそのままフォーリアに話してもらおうかな」
「はい。今生徒は孤児院の子供達と従業員のお子さんです」
「あれ?従業員で文字を覚えたい人とかも通ってなかった?」
「いまはほとんどいません。ライル商会で文字を読めない人はいないと考えてもらって平気です」
「おー」
国の識字率と比べるとかなり優秀だ。
「ヤルクに新たにやってきた方から学び舎に入る方法などを度々聞かれました。孤児院とライル商会の従業員の子供しか入れないと答えていますがどうしますか?」
「うーん。ちょっとこれはセフィーナさんも交えて後で相談しましょう」
「わかりました」
セフィーナさんを見ると小さく頷いた。
「ウラクグです。製薬部門でシスターミアナとポーションや丸薬の開発をしています。現在は5種類のポーションと1種類の丸薬を商人ギルドに卸しています」
「孤児院の子供達も手伝ってるよね?」
「はい。容器に入れる作業をしてもらって、何とか生産が追い付いてる感じですね」
「薬やポーションを作る人員ではなく、販売できる形にする人員が少ないってことです?」
「そうですね。孤児院の子供達もいずれやりたいことのために動き出します。そうなると少しずつ人が減ってしまうので」
「わかりました。そこは考えます」
ウラクグさんは頭を下げて着席した。
「あーヴァイオレットっす。デスヘルは冒険者が頑張ってるので問題ないっすね。うちの客もかなり増えてます。気になるのは客の中にライル商会について聞いてくる奴が時々いることぐらいっすかね」
「冒険者ギルドと顧客の管理してなかったっけ?」
「してますしてます。うちらが話すことは絶対ないので、マリーナさんと相談して泳がせてます」
「業種が業種だから、めんどくさくなる前に言ってくれよ」
「了解っす!あと不審者は見てないっす」
ヴァイオレットが言う不審者はサンタの事だろう。
俺だけがわかるように言葉を濁して伝えてくれたみたいだ。
「ゴトフ、なんかある?」
「え?そうか僕も話すのか」
ゴトフはゆっくり立ち上がった。
「グリフォン運輸は僕が卒業するまでは、サーカスの補助が主になりそうかな」
「そうだね。学園にいる間に顧客を増やしてもらって」
「頑張るよ。サーカスの屋台や招待客を連れて来る方法などはカラッカ辺境伯とセフィーナさんとやりとりをしてるので任せてくれて大丈夫」
「うん。助かる」
「それくらいかな?」
「ありがとう」
本当にうちの従業員は優秀だ。
「最後に出版部門については俺が話すんだけど、ヒューズさん達も何か話すことあります?」
俺はヒューズさんに問いかける。
「あ?俺達英雄だぞ?なんか情けなくなってくるわ」
「え?」
何故か3人共凹んでる。
「全員凄い仕事してるだろ。それに比べて最近の俺達は何かあったときに動けるようにしておくだけ……」
「ははは。それは英雄を腐らせてしまってる俺の責任ですね。でも弟子達が帰ってくるまでは我慢してください」
「わかってるんだけどな。こうやってみんなの成果を聞くとな…」
ヒューズさん達には本当に助けられてるんだけど、本人達はもっと仕事をしたいみたいだ。
「あーじゃあガッツさんも入れて4人でヤルクダンジョンに行ってください」
「いいのか?」
「はい。この後話す内容にも繋がってきますんで」
「ん?」
ヒューズさんは首を傾げた。
「出版部門では大きく別けて3つの物を作る予定です。まずは今見てもらっているサーカスなどの冊子。これはサーカスが行われる領を中心にグリフォン運輸に配ってもらいます。今回はカラッカで行うのでカラッカ領には配ってもらってます。それに次回の開催地にも配ってもらってます。開催後のお客さんの声を乗せた冊子も作る予定です」
みんなは冊子に目を通す。
「2つ目は文字が読めない平民に向けて、簡単に文字が学べるものを作ります。ルフレッテ、前に描いたやつある?」
「はい」
ルフレッテはパンとかスライムが書いてある紙を取り出した。
俺はそれを回し見するように渡す。
「これは凄い安く売る予定です。商人ギルドの店で売ることは可能ですか?」
「出来上がりを見てみないと確実ではないですが、問題ないと思います。かなりいい商品になる気がします」
アイザックさんは目を輝かせていた。
「内容の監修をフォーリアにお願いしたい」
「文字の勉強ですよね?」
「うん。先生がいなくても文字の基本が学べる本」
「なるほど。だから絵が書いてあるんですね」
「うん。文字を学べる環境にない人達が、冊子を呼んで少しずつ覚えられるようにしたい」
「わかりました。お手伝いします」
これで不安な部分は無くなった。
「3つ目は定期的にライル商会の商品に付属させるライル商会通信です。ロサキは文化の差問題がありそうなので導入するかはアースと相談します」
「わかりました」
アースは頷く。
「ライル商会通信は、ライル商会の商品や従業員など情報が乗っている雑誌です。内容を伝えたいんだけど…」
俺が悩んでいると、ヴァイオレットが口を開く。
「さっきマイアさんが言ってたみたいに、【戦場の毒花】がシモンキリーの服を着てる絵を描いてもらって、それを見た女性がこの服を買いたくなるような冊子ってことっすよね?」
「そう!男性冒険者もシモンキリーの服を着て魅力が上がった【戦場の毒花】を見て、直接会いたくなるような冊子。料理でも小物でも服でも武器でも何でもあり。各部門がこれがライル商会だと思う物を紹介する感じ」
みんなは何となく理解してきたみたいだ。
「第1弾は俺の中で決まってるんだ」
俺がそういうとルフレッテはすぐにメモをしようとする。
「まずはレストランライルの人気料理紹介。あと各店舗を簡単に紹介。ヤルクの街の領主代行セフィーナさんのインタビュー。そして英雄4人と記者が行くヤルクダンジョン!!」
「「え!」」
俺の言葉にルフレッテとセフィーナさんが声をあげた。
「インタビューってお父様がやっているこれですよね。私の必要ですか?」
「え?え?私が英雄の方々とダンジョンですか????」
混乱している2人を無視して話を進める。
「第1弾はヤルクの街とヤルクダンジョンとレストランライルについての記事だけど、それ以降は他の部門や店舗もしっかり紹介するから」
俺がそういうと母さんが口を開く。
「シモンキリーの服を【戦場の毒花】に着てもらうのはやれるの?」
「母さん。リリアンさんとクララさんとノヴァもつけるよ」
「本当に?これはやる気が出るわ!!」
リリアンさんとクララさんは母さんがこんなに喜ぶとは思っていなかったみたいで少し恥ずかしそうにしてる。
「商品だけじゃなく弟子達もテイムモンスター達も従業員も紹介するよ。だからルフレッテに話を聞きたいって言われたら協力してね」
「「「「「はい!」」」」」
これで俺が伝えるべきことは終わった。




