446.初取材
木の日。
俺とセフィーナさん、それにアリソンとゴトフとルフレッテはカラッカの街に来ていた。
昨日の夜中まで打ち合わせをし、アリソンはポスターとチラシのラフを作り、ルフレッテはインタビュー案や取材する内容をまとめた。
「なんか緊張します」
「今回はテルマリアさんとジェラルドンさんに質問するんだよね?」
「はい。サーカスの団長さんと副団長さんにお話を聞いて、カラッカ領主様にもお話を聞きます」
「俺も一応付いて行くから心配しないで」
「ありがとうございます。あ、あとモンスター達の紹介も入れますのでお時間かかると思います」
「うん。大丈夫」
そのために早朝から動いている。
ルフレッテは記事も書かないといけないし、絵も描かないといけない。
初仕事なので頑張ってもらわないと。
カラッカの街の門を出て、サーカス用に開拓した土地に向かう。
道もしっかり舗装されていた。
歩いているとサーカスのテントが見えてきた。
テルマリアさんのエクストラスキルはやはりすごい。
「わああ!」
ルフレッテはサーカスのテントを見て感動している。
「王都の公演は見に行かなかったの?」
「そうなんです。魔物学を取っていなかったので、サーカスをやるという話は知ってたんですが詳細などが全く把握してなくて」
「チラシとかも配ってたはずだけど、やっぱりそういう人もいるんだな。今回はそういう人がいないようにしよう」
「はい!」
ルフレッテのやる気はいい感じだ。
「お!ライルさん、セフィーナさん、ゴトフさん」
俺達に声をかけてきたのは、モンスターサーカスの副団長ジェラルドンさんだった。
「興行できる場所を提供していただいてありがとうございます」
「いえいえ。頑張ったのは2人なので」
俺がそういうとジェラルドンさんはセフィーナさんとゴトフに頭を下げた。
「公演はいつ予定してます?」
「16日後の土の日です」
「じゃあ早急に動かないと」
「え?」
ジェラルドンさんは俺達が宣伝に力を入れようとしていることを知らない。
「とりあえずライル商会としてどう動くかを話したいので、テルマリアさんも交えて話しましょう」
「わかりました!」
俺達はジェラルドンさんに案内されて仮設の小屋に向かった。
▽ ▽ ▽
「カラッカの街で行うモンスターサーカスの見どころを教えてもらえますか?」
「見どころですか……。まずはうちのモンスター達の頑張りを見てほしいですね。今回は初公演のユニコーンが2体います。その2体の演目は力が入ってますので是非見てください」
「ありがとうございました」
インタビューする側もされる側も初めてだったのに、中々良いやり取りだった。
心配そうな顔をしたルフレッテが俺の元に来る。
「ど、どうでしたか?」
「うん。良さそうだね。ジェラルドンさんは真面目な質問が多かったから、テルマリアさんへの質問は幻想的というか非現実みたいな雰囲気が欲しいな」
「非現実…」
「うーん。なんだろ。サーカスは日常では味わえない体験ができる場所ってのが伝わるようにしたいな」
「なるほど。参考になります」
ルフレッテは俺の話をしっかりメモしていた。
「じゃあテルマリアさんの質問よろしく。俺はアリソンの様子見てくる」
「はい」
俺は小屋を出て、アリソンの元に向かう。
アリソンは厩舎の庭で走り回るモンスター達を見ながら絵を描いていた。
「どう?」
「順調です」
俺は描いてる途中のポスターを見せてもらう。
サーカスのテントを背景に、ペガサスとユニコーンとフラワーベアが迫力のある姿で描かれていた。
「かなりいいね」
「ありがとうございます!」
うちの絵描き2人のタイプが違うのはかなり良かった。
ルフレッテは模写タイプ。
アリソンはあり得ない構図でも書けるタイプ。
宣伝に力を入れるのも初の試みだから、2人の自信に繋がる結果になってほしい。
▽ ▽ ▽
インタビューも終わり、ルフレッテとアリソンの絵が描き終わるのを待った。
「おーい。ライル、ここでいいのか?」
「ラドニークさん。わざわざすみません」
やってきたのは正装をしたラドニークさんだ。
ちゃんと後ろに家兵を連れてきている。
部下を従えて歩く姿は中々珍しい。
「それで何をするんだ?」
「実はこういうことをしようと思ってて」
俺は記事の事を伝えた。
「おお。それはいいな」
「はい。そこで新たな門出を迎えたモンスターサーカスに興行場所を貸したカラッカの領主に話を聞きたいんです」
「それが他領や領民に配られるのか?」
「その予定です」
「さすがだな…」
ラドニークさんは異世界人に感心しているような目になっていた。
「なので話を盛ってもいいけど嘘は駄目です。文章で残るので」
「わかっている。私は領民への娯楽を提供したかったとかモンスターサーカスには期待をしているとか言えばいいんだろ?」
「さすがですね」
「ライル商会と提携してることが大きいとかも必要か?」
「うーん。削除するかもしれないですけど、一応言っておいてください」
「はは。わかった」
ラドニークさんは話が早くて助かる。
「お、お待たせしました。ラ、ライル商会のき、記者のルフレッテです。本日はよろしくお願いします」
領主相手だと平民のルフレッテも緊張するみたいだ。
「よし。なんでも聞いてくれ、ルフレッテはそんなに緊張するな」
「は、はい」
「ライルに認められて、記者?という仕事をしているのだろ?もっと自信を持ちなさい」
「あ、ありがとうございます」
ラドニークさんは良い事を言ってくれるが、逆に緊張が増した気がした。
俺はラドニークさんのインタビューが終わるまで付き添った。
▽ ▽ ▽
ヤルクに戻るとすぐに工場エリアに移動する。
「えーっと次は…」
「屋台の食事だな。どんな商品があってどんな味がするかを文章に」
「わかりました」
ルフレッテが2授業分の戦闘学と経営学を選択していて助かった。
授業が月の日と火の日と水の日に固まっているおかげで、これだけ予定を詰め込んでも問題がない。
「ライル先生、この記事で気にする点はありますか?」
「うーん。ここはルフレッテらしさがほしいかな」
「私らしさ?」
「この記事を書いてるルフレッテってこういう人って伝わればいいと思う。ルフレッテの記事が読みたいって思われたくない?」
「なるほど。私らしさか…。やってみます」
ルフレッテはまた何かをメモしだした。
俺とルフレッテの前にはワカチの従業員達が作った料理がどんどん置かれていく。
「ゴトフ」
「ん?」
「ルフレッテを任せてもいい?」
「うん。いいけど」
「俺は魔石を集めに行ってくる」
「今から?」
「うん」
俺はそう言って工場エリアを離れた。
ガルスタン達にマジックアイテムを作れないか聞いたが難しそうだ。
九神教の本部と連絡するときに使ったマジックアイテムもあったし、冒険者ギルドにも連絡ツールがある感じだったから作れると思っていたが、あれは俺のガチャで出たマジックアイテムと同じくらいの代物らしい。
なので絶対に魔石が必要になった。
カタログがどうしても必要だ。
俺はゴーレとフリードとライムを連れて、深夜の危険地域に向かってノコ達と合流しに行った。




